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決戦当日

〜翌日〜

「莉音、大丈夫?」

 朝起きて早々母さんの心配そうな顔。

「へ?⋯⋯なにが⋯⋯」

「うっわ。姉ちゃんその顔やば」

 そういって笑い出したのは風雅。

 風雅のその態度にいらつきながらも洗面台に向かう。



「うわ⋯⋯」

 これは緊急事態ではないだろうか。

 告白されるときに相手の女の子がくまができた青白いやつれた顔をしていたられん兄だって嫌だろう。

 それに加えれん兄に普段からアプローチしているのは美人なお姉さん方ばかり。

「うっ⋯⋯」

 思わずその場で崩れかける。

 今日はいうのをやめようか⋯⋯。

 いや、今日いうって決めて昨日あんなに悩んだんだ!絶対いう!

 そう思うと自分に喝を入れるように頬をパシンとたたく。

 気合OK!あとは⋯⋯







「うわ⋯⋯」

 リビングに戻ると母さんはいなくて風雅だけがいる。テレビを見ていたらしい。

「なによ」

 若干ひいてる様子の風雅にたずねる。

「女って怖いな⋯⋯」

「は?」

 そういいつつ、人の目からみても先ほどの醜態から脱出できたことを知り満足する私。

 ピンポーンピンポーン

 立て続けに二回なるチャイム。

 れん兄は三回だし⋯⋯。誰だろう⋯⋯。

 そう思いつつれん兄かもしれないので慌てて玄関に向かう。

「ちょっ、いくな!」

「え?」

 気づくと私を制止させ玄関にかけていく風雅。

 なんであんなに焦ってるの?⋯⋯

思わず固まってしまっていた私だがすぐに玄関にかけていく。

 ガチャッ

 戸の開く音。

「ふうくん、おはよう」

 ふ、ふうくん?しかも今の可愛いらしい女の子の声だったけど⋯⋯

 物陰からこそりと玄関のほうを見やればなんということか⋯⋯。モデルのようなスタイルで顔もよく性格も良さそうな女の子がいる。

 しまいにはあの風雅に天使のような微笑みだ。

 ⋯⋯どういうことだ⋯⋯

「お、おはよう。ごめん、今支度するから待ってて」

「うん」

 そういってふわりと微笑んだ女の子に動揺したのかこちらにかけてくるときに足をもつらせ、物陰に隠れていた私の前で派手にこける風雅。

「⋯⋯」

「やあやあ、風雅くん。あの子は彼女かな?」

 そう尋ねる私はきっとゲスい顔をしているだろう。

 風雅は表情筋をピクリとさせると「うるさい」と一言いって、起き上がりかけていく。

 図星、というとこだろうか。

 風雅に彼女とか⋯⋯。後からきちんと付き合うまでの経緯を聞かせてもらわなくては。


 そこでふと、ある考えに至る。

 付き合ったら毎朝一緒に登校するのが当たり前になるんだ。

 今までは互いに都合のあうときだけとかたまたま見かけて、とかで一緒に登校していたが⋯⋯。

 恋人のれん兄ってどんななんだろう。そんなことを想像していると頬があつくなってくる。

「おい姉ちゃん!そんなとこに座りこんでねえで準備しないと遅れるぞ」

 そういってドタバタとかけていく風雅。

 偉そうに⋯⋯。そう思って風雅の背中に舌をだしつつ私も準備にとりかかる。


 れん兄に想いを伝える⋯⋯よし!

 もう一度心の中で気合をいれると私は立ち上がった。










「ふう〜⋯⋯」

 陸上の練習を終えて一息つくとメールの着信音がする。

 みてみればそれはれん兄からのものだった。

〈僕は大丈夫だよ。六時半に校門前だね。了解〉

 頬が自然と熱くなっていくのが自分でもわかった。

 これは部活前に私がれん兄に送った

〈今日時間があったら六時半に校門前に来てください〉

というものの返事な訳だが。

 とりあえず告白の準備は整った。あとは⋯⋯






 私は今、夕日がさしてホコリがまうのがよくみえる第二校舎にきている。

 目的は現在使われていない音楽室を使うため。勝手につかって怒られたらその時はその時である。

 歌で告白⋯⋯我ながら恥ずかしくなるその行為を成功させるためにも予行練習が必要だ。


 音楽室にはいるとまっすぐにピアノに向かう。

 今日は走り込みしかしなかったから六時半まで三十分はある。

 よし!私は自分に喝を入れるとピアノをひきれん兄への大事な想いを歌った。






「うわああぁ時間があぁ」

 そんなことをいいながらリュックを背負い急いで音楽室をでる私。

 歌詞を一部変えたりメロディーを変えたりしはじめたらもうこんな時間だ。

 五分で校門前までいけるだろうか、という不安をかきけすように走っていると⋯⋯

「え⋯⋯ナギ?⋯⋯」

 前方には窓の外を眺めているらしいナギがいる。

 多忙な彼が何故ここに⋯⋯。



 ふいに振り替えるナギ。夕日をあびて薄茶になった瞳から目が離せなくなる。

 なんでそんなに悲しそうなのに優しい笑顔で覆い隠そうとしてるの?⋯⋯

「ナギ、なんかあった」

「彼のこと、本気なんだね」

 私の声を遮るようにそういうナギにかたまる。

 彼ってれん兄のことだよね。

 勘づいてるっぽかったし。

「⋯⋯うん」

「そっか」

 そういって窓の方をみやるナギ。

 すごくキレイなその姿に思わず見入っていたのも数秒。

「うわっ!時間が!!」

 駆け出す私。

 ナギの後ろを駆け抜け階段に向け走っていく。




「ナギ!!」


 でも、やっぱり気になってしまう。


「辛いこととか悲しいこととかあったら私にいってよ!いつでも聞くから!」


 ぽかんとした顔のナギはすぐに笑顔になる。

「ありがとう」

 その笑顔に胸の奥がズキリと痛い。

 その理由なんてわからないけど。

「じゃあ!」

 私はそういうと次こそれん兄の元に向け駆け出した。








〜ナギ〜

 元気よくかけていった彼女をみて目を細める。

 本当は君があの人のところにいくのがすごく嫌だ。

 けど、これでもいいのかなとも思うんだ。

 想いを伝えることはおろか、結ばれることも不可能ならこれでもいいのかなって。

 君のそばにいられるならそれだけでいい気がして。



 それにしても⋯⋯よく気づいたな。想いを伝える唯一の方法、歌。

 こんなことになるならちゃんと教えてあげればよかったかな。

 そんなことを考えながら窓の外を眺めればすごい慌てようで校庭をかけていく彼女がみえて視線をずらしていけば校門前に彼女の好きな人。

 僕はなんとも言えない気持ちで微笑むと腹いっぱいに空気を吸い込んでちからのかぎり叫ぶ。

「がんばれっ!応援してる!!」

 力強くうなづく莉音。

 僕はそれをみると足の力がぬけてその場にへたりこんだ。ギュッと服を握る。


  何いってんだよ僕⋯⋯。















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