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約束

 SUNNY'S楽屋

「ねえ、ナギ。最近莉音ちゃん元気ないよね?なんかあったのかな」

「さあ⋯⋯」

 そういって紅茶をすするナギ。

「失恋じゃない?」

 そういうのはヨウで先ほどからスマホをいじっている。

「女の子のあの症状は確実に失恋だと思うんだよね」

 ドヤ顔でそういうヨウ。

 この場に幼なじみのユータやネクがいたら確実にツッコミがはいっただろうが生憎今回の番組で司会を担当するふたりは打ち合わせでいない。

「やっぱりヨウはすごいねえ。女の子の専門家みたい」

 そういって爽やかな笑顔で訳の分からないことをいうソラとそれを気にせずに紅茶をまた口に運ぶナギ。

 穏やかな午後が流れていった⋯⋯。





〈 莉音ちゃん♡もしかして|ω・)

失恋した〜(*´-ω・)ン?

したよね?したよね( ・ㅂ・)و ̑̑そこで、1つ提案なんだけど僕の胸に飛び込んでおいでよ!いつでも大歓迎だよ♡♡〉

「ちょっと莉音、なに携帯壊そうとしてんのよ」

「壊したくて壊そうとしてるんじゃないから」

 そういって携帯の文面を睨みつける。

 これほどまで人の感情を揺さぶるとは、ある意味才能なんではないだろうか。

 こんなにイラつかされたら仕返しせずにはいられないわけだが。

「最近あんたの憧れの幼馴染先輩、よくない噂ばっかりよね」

 どんな返信をしてやろうかと悩んでいた私にともちゃんがため息まじりにそんなことをいう。

「そ、そうなんだ」

 よくない噂⋯⋯。私に告白されたのが嫌すぎてグレたとか?⋯⋯

 いやいや、そんなだったら悲しすぎる。でも⋯⋯

「その上あんたフラれたらしいじゃない。少しくらい相談しなさいよ」

「う、うん⋯⋯」

 フラれたということをなんのオブラートにも包まずハッキリといわれて胸のあたりがズキリと痛む。

 ともちゃんらしいといえばらしいのだが⋯⋯。








 放課後。

 失恋の痛手を抱える重い体をひきづりながら東校舎の音楽室に向かう。

 なんとなくピアノをひきたくなった。憂さ晴らし的な意味で⋯⋯

 東校舎のホコリがまってる廊下を歩いていると音楽室のほうからピアノの音色が響いてくる。

 誰かいるのかな⋯⋯ん?⋯⋯この流れてくるメロディーどこかで聞いた感じがする⋯⋯じゃなくて!これ私が作った曲じゃん!!

 そう思ったとたんに慌てて駆け出す私。

 私がれん兄のために作ったあの歌をひいてる張本人をみるため⋯⋯




「ナギっ!?」

 なんとそこにいたのは多忙であろう大人気アイドルのナギくんだった。

 ナギは私のほうをチラッと見ると立ち上がりスタスタとこちらに歩いてくる。

 無表情なので若干の恐怖を感じて私は身構える。

 が、ナギくんは何も言わず何もせず、私の横を通り過ぎていった。

「ちょっと!」

 慌てて呼び止めるとナギは立ち止まったもののこちらを見てはくれない。

「さっきの曲⋯⋯私がれん兄に向けて作ったやつ⋯⋯なんであんたが知ってるの?」

「聞いてたからね」

 そっけなくそういうナギ。

 一回聞いただけで覚えられることに驚きながら、あの日ナギが廊下にいたこと、応援してくれたことを思い出す。

「私、ダメだったよ⋯⋯。まあ、れん兄みたいな素敵な人に見合うわけも無いからね。最初からわかってたけど」

 自分の言葉でその事実を形にするとココ最近感じている虚無感が一層大きくなった気がした。

 でも、応援してくれた人にはちゃんと結果を伝えなきゃ行けない気がした

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ナギ?⋯⋯」

 そうたずねた直後ナギが鼻をすする音がする。泣いてるのか⋯⋯?⋯⋯

 そう思ってこそりとナギの顔をのぞきこもうとすると唐突に振り返るナギ。一歩間違えば顔面衝突事故が起こるとこだった⋯⋯危ない危ない⋯⋯

 そう思ってナギのことをあらためてみればやっぱり泣いていた。何故に⋯⋯私のせいかな⋯⋯

「ナギなんかごめ」

「花火大会一緒にいこう」

私の声を遮ってナギがそういう。

「あ、じゃあ、ともちゃんも誘って」

「二人で」

 ナギの涙目ながらも強いひとみに何故か胸のあたりがキュンとせまくなったような気がした。

「うん」

 私がそう返事をするとナギはにこりと微笑んだ。

 その笑顔が不覚にも可愛くて私の頬は若干朱に染まってしまったのだが夕日のせい、ということにしておきたい。

「じゃあね」

「うん!また」

 そういって去っていくナギの背に手をふる。

 初めて会ったあの日は眺めるだけだった背中。再会したあの日は涙で見えなくなった背中。今は、「またね」っていって手をふってる。

 その事実がなんだか嬉しくて私はルンルンで音楽室にはいった⋯⋯。



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