クリューという少年(9)
「すげえぞ!ポチ!!」
「何だ、今のは・・・」「小僧、何しやがった?」「あのガキ、何なんだよ・・・」
デコイが撮影した映像を見ながら、ゼナがだけが大騒ぎで喜んでいる。しかし大人たちのほとんどは困惑していた。
作業用3Gが見せた黒い球体。武器を持たないクラフターが、軍事用3Gでも見たことがない防御バリア的な何かを展開させたからだ。
「あのバカ・・・」
と頭を抱えたマロウと、腕組みしたまま無表情のローガンだけが黒い球体の正体を知っていた。
46部隊の司令用テントのすぐ側に、全身ペイント弾まみれになったクラフターが静かに地表に降り立つ。ゼナが真っ先にテントを飛び出し、後から大人たちがぞろぞろと出てきた。
「勝ったぞ!!ゼナ!!どうだ、見たか!!」
勢いよくコックピットのハッチを開けたクリューが、眼下でスカートを翻しながら飛び跳ねているゼナに向けて叫ぶ。
「やったな!!ポチ!!」
「ポチじゃねえ!!」
嬉しそうに親指を立てるゼナとギャーギャーわめくクリューの隣に、遅れてハイホークXが着陸した。顔面を赤く染めたハイホークXのハッチはしばらく閉じたままだ。
「お前、何やったんだ~?早く降りて教えろよ~、ポチ~」
「おう、すぐ降りてやるよ・・・ってか、どうやって降りるんだ?」
コックピットのハッチを開けたまま、クリューは何かを探すようにキョロキョロとクラフターのコックピット周りで首を動かす。
「呆れた・・・そんなことも知らないのね・・・」
ようやくコックピットのハッチを開けたハイホークXから、セーブルが呟く。
「ここよ。このあたりにスイッチがあるわ」
セーブルが跳ね上がったハッチの裏の一部を押すと、コックピット脇からフック付きのワイヤーが1mほど伸びて止まった。
「これに掴まって下に降りるの。あなたのクラフターにもあるでしょ?」
「お?これか?」
クリューはスイッチを探し当て、フック付きのワイヤーに慣れない手つきでぶら下がりながら地上に降りた。すぐにゼナがまとわりつき、身振り手振りを交えながら二人並んで歩いていく。
「・・・あれで、何であんなことができるのよ」
セーブルもフックに足をかけて、ゆっくりと地上に降りる。すると背後からマロウが忍び寄り、セーブルに耳元でささやく。
「乗る前とパンツが違うな。さては・・・漏らしたな?」
「な・・・!!」
顔を赤らめながら、腰を抑えてマロウに振り向く。ゆったりとしたカーゴパンツの上から僅かにパンツが見えていたようだ。
「どこ見てんのよ!!」
「怒るなって。俺でもチビったかもしんねえし。初見ならなおさらだ」
3Gに憑依していても、元の肉体とは魂の緒が繋がっている。故に3G憑依時に受けた恐怖は、元の肉体も反応してしまうのだ。ダイバーが失禁するのは珍しくないし、ダイバースーツにはサニタリーの役目もある。3Gに乗るときに服を脱ぐのはそのためなのだから。
「マロウ・・・アレが何なのか、知ってるのね」
「ああ・・・チビがやったのは・・・Gシールドだ」




