クリューという少年(10)
「なあ、ポチ。アレ、どうやったんだ?」
ゼナがクリューの背中に覆いかぶさりながら、顔を寄せて聞いてきた。男女の3歳差は女子の方が成長が早いこともあり、頭一つ近くゼナの方が大きい。
「あ?・・・説明できねえよ」
赤くなった顔をゼナから背けるように、クリューはそっけなく言い放つ。
「意地悪すんなよ~。コツとかあんだろ?」
ゼナが頬をすり合わせると、クリューは首がねじ切れるのではないかと思われるほど顔を背けた。
「うるせえ、くっつくな、離れろ」
「お? 何だ? 照れてんのか? 顔が真っ赤だぞ?」
ぴったりとゼナが張り付いた背中からは、Tシャツ越しに胸の感触が伝わってくる。
「ブ・・・ブラとかしねえのかよ!!」
「あ? 3Gに乗るときは全裸になんだぞ。んな、邪魔なもん着けるわけねえだろ」
ゼナがクリューの背中に胸を押し付け、クリューの顔が「プシュ~」と音がなるほど赤くなった。
「お? アタシの胸に欲情してんのか?」
ニィ~っと悪い顔で、ゼナが息を吹きかけながらクリューの耳元でささやく。
「バ・・・バカ!!誰がペッタンコで欲情するか!!」
「・・・ヒトが気にしてることを~!!」
ゼナの細い腕がクリューの首に回り、スリーパーホールドを決める。
「わぁっ!!ギ・・・ギブ・・・」
「お前ら、何やってんだ?」
じゃれ合う二人の前に、いつの間にかローガンが立っていた。
「ちょうどいい。全員をテントに呼べ」
無表情のローガンが静かに言うと、そのままテントへと身を翻した。
「・・・なんだ? あの雰囲気」
「何か・・・変だな」
二人はキョトンとしたまま動きを止め、しばし見つめ合っていた。
46部隊の司令用テントに部隊員15人が集められた。デコイの映像を操作する通信員だけが座っていて、ローガンを含め残り全員は立っている。
「何が始まるんだ?」「・・・さあ?」「何かあったのか?」「さっきの模擬戦か?」「小僧の勝ちじゃねえのか?」
隊員たちがざわつく中、クリューとゼナも顔を見合わせている。
「オレの勝ちだよな?」
「だよな?」
ローガンは憤怒のこもった視線だけで隊員たちを黙らせると、通信員に声をかけた。
「キャロル、例の映像を出せ」
「はい」
眼鏡をかけたキャロルが機器を操作し、小さいモニターに模擬戦の様子が映し出される。隊員の中でもダイバーたちが最前列に出てきて、整備や衛生担当は興味ないとばかりに後ろに引っ込んだ。
「ここで止めろ」
「はい」
映像はクリューが黒い球体を出したところで停止した。
「・・・クリュー。これが何だか知っているな?」
クリューは名前で呼ばれたことに喜んだが、映像を見ると困惑した表情を見せる。
「知らねえ」
「知らずにやったのかよ・・・」「こいつバカなのか?天才なのか?」「アレは何なんだ?」
再びざわつく隊員の中、マロウはこめかみを抑え、セーブルは固い表情を崩さなかった。




