クリューという少年(11)
「その黒いのが、何だってんだよ! オレの勝ちだろ!?」
ギロッ!!
喚くクリューを、ローガンは一睨みで黙らせる。
「クリュー・・・お前の反則負けだ」
「な・・・」
「何でだよ、オヤジ!! 反則負けなんて、聞いたことねえよ!!」
絶句するクリューの代わりに、ゼナがローガンに抗議する。
「黙れ、ゼナ。軍では隊長って呼べ。お前が軍に入った時から、親子の縁は切ったはずだ」
「う・・・」
テント内を静寂が支配する。ローガンとゼナが親子だというのは公然の事実だったが、縁を切ったというのはほとんど知られていないからだ。
「いいか、クリュー。お前がやったのは『Gシールド』ってヤツだ。お前が知っていようが知っていまいが関係ねえ。やっちまったのは事実だ。証拠も残っちまったからな」
ローガンはデコイの映像を親指で指す。
「ここ、惑星テラクアでのGシールドの使用は、条約で禁止されている。だからお前の反則負けだ」
クリューは黙って下を向いている。拳が震えるほど強く握られているのは、悔しい証拠だろう。
するとひげ面で太った男が手を上げた。
「隊長さんよぉ、その禁止されてるGナントカって~のを、使ったから何だってんだ? 気にすんのはお偉いさんだけだろ?」
「ん? ゲラルドか。確かにお前の言う通り、気にすんのはお偉いさんだな」
ローガンが目を閉じ軽く微笑む。直後、目を見開いたローガンの眼光が一層強くなった。
「だがな~、そのお偉いさんって~のは、腐っても俺たちの上官でスポンサーなんだぜ? アイツらが見てるのは俺たち現場じゃねえ。世間とか国家なんだよ。わかるか?」
いわゆる政治の話だった。テントにいるほとんどが理解していない。
「アイツらが、どんな難癖付けてくるかわからねえ。俺たちを潰そうとするかもしれねえし、補給を打ち切るかもしれねえ。それどころか、クリューを戦犯者として逮捕、なんてのもあり得る」
ハッとするクリュー。
「す、済まねえ!! みんな!! オッサン、オレなんかの首でよけりゃあ、いつでも差し出してくれ!!」
クリューは頭を下げまくり、最後は大男のローガンの膝に縋りつく。
「ガキのくせに、変な覚悟決めんな」
ローガンの目が優しくなり、クリューの頭をポンと軽く撫でた。
「ガキを売ってまで生き長らえてえとは、ここにいる誰も思っちゃいねえよ。そうだろ?」
「おう、お偉いさんなんかクソくらえだ」「ガキがカッコつけてんじゃねえ!!」「補給なしだぁ? ハハッ、変わらねえじゃねえか!!」「潰せるもんなら潰してみろってんだ!!」
「みんな・・・」
隊員たちの励ましに思わず涙ぐむクリューと、それを穏やかな微笑みで見つめるゼナ。そしてローガンの満足そうな笑顔の裏にあるしたたかさを見抜くマロウが呟く。
「アレを士気に変えちまうとは・・・ダンナもやるねえ」




