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重霊機モルスレプス(Gravity Ghost Gear MORS LEPUS)  作者: 高戸 賢二
クリューという少年

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8/31

クリューという少年(8)

 3G(Gravity Ghost Gear)はダイバーが機械的に幽体離脱して憑依するロボットだ。

 当然、ペダルやレバーなどの操縦桿は備わっていない。故に3Gの移動を担うGBUシステム(Gravity Controller and Black Hole Engine Unified System=重力コントローラとブラックホールエンジンの統合システム)は3Gの脳波で動かすことになる。重力子操作によるGトラクションは、任意の方向に任意のスピードを出すことができる。機体はGフィールドでGを固定しているため、慣性などの物理法則を無視して動くことが可能だ。

 だからといって脳で想像した通りに好き勝手に動けるというものでもない。

 ダイバーが憑依した3Gの感覚は生身に等しい。Gフィールドで肌に感じる風圧などはないものの、視界に飛び込む景色は生身と同じだ。足元に地面が存在しない状態で空中に浮かぶ感覚は、人類が本能的に持つ落下への恐怖を刺激する。高速で空を動けば、視界だけで酔うこともある。初心者であれば雲の無い空であっても、無意識で動きを制限してしまうものだ。

 しかしクリューは違う。

 彼は3Gの動きに恐怖を感じていない。少年ゆえの無鉄砲というだけでは説明できないほどの洗練された動き。

「・・・あなたは、化け物?」

 セーブルは思わずつぶやいてしまう。

「どいつもこいつも名前で呼べって、言ってんだろ!! 今度はこっちから行くぞ!!」

 クリューのクラフターがセーブルの遥か頭上の高空へと、急スピードで上がっていく。気を抜いていたら「消えた」と錯覚するほどの急加速。

 追うことも考えたセーブルだが、これは模擬戦だ。クリューが何をするのか見てみたい。

 セーブルはあえて、その場に留まる。

 クリューは真上から超高速でハイホークX目掛けて急降下した。

「うりゃあ!!」

 急降下しながら、クリューはパイルタッカーでペイント弾を連射した。

「考えたわね」

 ペイント弾の弾速の遅さを急降下で上乗せしたのだ。しかし照準はバラバラで、セーブルに当たるペイント弾は一つもない。

「カウンターを喰らいなさい。痛いじゃ済まないわよ」

 ハイホークXのGサイクロトロン銃がペイント弾を放つ。

 正確な射撃がクラフターに命中する直前、真っ黒な球形がクラフターを覆った。

「何!!アレ!!」

 ペイント弾は黒い球形に霧散され、そのまま真っ直ぐにセーブルに突っ込んでくる。

 避けようとしたセーブルの周囲に、クリューの放ったペイント弾がランダムに散らばっていた。

 一瞬だけ躊躇したセーブルは、黒い球形の直撃を受ける・・・かと思われた。

 ハイホークXに当たる直前に、黒い球形からクラフターが飛び出てくる。右手にペイント弾を握りしめて。

「喰らえ~っ!!」

 クラフターの右手が張り手のようにハイホークXの顔面を捉える。

 ハイホークXの顔面はペイント弾の赤に染まっていた。



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