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重霊機モルスレプス(Gravity Ghost Gear MORS LEPUS)  作者: 高戸 賢二
クリューという少年

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5/31

クリューという少年(5)

 クリューの突拍子もない行動に、セーブルは呆気にとられていたものの、すぐに戦士の顔になる。

 セーブル愛用の3G「ハイホークX」は100年も前に設計された傑作機であり、設計思想は旧式だが各国軍で未だに正規採用されている名機だ。どこかの軍の放出品が流れてきたものだが、解放軍にとっては宝物のような機体である。難点は初期ロットなので経年劣化が激しいことだ。

 3Gの素体は「ホムンクルス」と呼ばれる万能憑依型クローンなのだ。生体兵器でもある3Gには「老化」という経年劣化が付きまとう。

 セーブルのハイホークXは、素体がすでに100歳近い老人ということだ。反応速度をはじめとしたあらゆる感覚があまりにも鈍かった。時折わけのわからない震えに襲われることもある。そのためダイバーの誰からも見向きもされず、最前線のゲリラ部隊に流れてきたのだ。常に戦力不足のゲリラ部隊に使わないという選択肢はなかった。

 セーブルがダイバーとなってはじめて憑依するのが、この「ハイホークX」なのである。軍未経験で訓練機すら知らないセーブルにとっては「こんなものか」と違和感を感じることもなく愛機としていた。

 軍用機として開発されたハイホークXは、様々なダイバーへの補助機能が備わっている。十分なパワーを発揮するGBUシステムに、霊子レーダー、ダイバーの感覚を加速させるマシナリードーピング、味方機との感覚共感システムなど、軍用機にしか組み込まれないシステムだ。

 さらに標準装備の「Gサイクロトロン銃」がセーブルのお気に入りだ。両手用に2丁が左右の腰のホルダーに装着されている。銃が得意なセーブルは両手の2丁撃ちを得意としていた。

「何なの・・・あの子」

 上空へと舞い上がったクリューのクラフターをちらりと見た後、セーブルはハイホークXの踵にあるハッチを開けてスイッチを押す。するとコックピット脇からフック付きのワイヤーが伸びてきて地面のすぐ上で停止した。セーブルがしなやかな足をフックに賭けると、ワイヤーが巻きあがっていく。

「3Gはこうやって乗るものでしょ?」

 最新鋭の軍用3Gならともかく、セーブルの知っている3Gのほとんどは搭乗用ワイヤーが付いているはずだ。あの子のクラフターにだって装備されているはずなのに・・・

 コックピットに颯爽と乗り込んだセーブルは、ハッチを閉めて服を脱ぎ捨てる。

 STARシステムを起動させ、憑依して一体化したハイホークXの目線で自分の両手を見つめた。いつもより手の震えが少ないのは集中できている証拠か。

 程よい緊張感。コンディションは悪くない。

 両腰のGサイクロトロン銃を両手に持ち、マシナリードーピングを100倍に高める。

 負ける要素など一つもない。


 セーブルのハイホークXが、クリューの待つ空へと音もなく飛び立った。



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