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重霊機モルスレプス(Gravity Ghost Gear MORS LEPUS)  作者: 高戸 賢二
クリューという少年

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4/31

クリューという少年(4)

「おい、チビ。クラフターの乗り方は知ってんのか?こいつはここを開けて・・・」

 マロウがクラフターの足元にしゃがみ、小さなハッチを開ける。

「ここにスイッチがあってな・・・」

「マロウ、ポチならいないよ」

「あん?」

 ゼナの言葉にマロウが振り向くと、ゼナは指を上に指している。

「上?」

 マロウが見上げた大木の枝の上で、クリューが縄に分銅を付けてグルグルと振り回していた。

「アイツ何する気だ?」

 クリューは分銅付きの縄を投げ、別の大木の枝に巻き付ける。グイグイと縄を引っ張り強度を確認すると、縄を掴みながら枝から飛んだ。

「あ~ああ~!」

 奇妙な叫び声を上げながら、クリューは振り子のように宙を舞う。縄を手放し、ひしっとカエルのようにクラフターの胸にしがみついた。

「アッハハハ~、何やってんだポチ!!」

 ゼナはゲラゲラと笑うが、マロウや他の部隊員は呆気にとられていた。

 全員の注目を浴びながら、クリューは胸の突起に隠れているスイッチを押し、ハッチを開けてコックピットへと潜り込む。

(ありゃあドックのデッキに着けている時のスイッチだ。あんなことも知ってるのかよ・・・いや、アレしか知らない?)

 マロウは敢えて口にしなかった。


 クリューはハッチを閉めて、コックピットのSTARシステムを立ち上げる。

 目を閉じて数秒。フッと意識が一瞬だけ飛び、全身の感覚が消える。

 そして目をゆっくりと開ける。

 大木の枝が視界を遮っているが、隙間からは青い空が見える。足下には小さくなった仲間たち。自分の両手を目の前に持っていき、手をニギニギと閉じたり開いたりさせてみた。

(悪くない)

 作業用3Gであるクラフター。このG77という機種は職人用にチューンアップされており、肌感覚や手指の動きが繊細かつ鋭敏化されていた。

 軍用の3Gは逆に鈍くなるように設定されている。これは痛覚に直接関わることだからだ。

 軍用機では手足が無くなることはザラにある。頭を吹き飛ばされて戦闘不能になることもある。この時に痛覚が人間と同じだと、魂にトラウマなど重大な悪影響を及ぼすことがある。場合によってはショック死することもあるのだ。軍人で3Gの感覚を鋭敏にする者はほとんどいなかった。マロウがクラフターを嫌ったのはこのためでもある。

 しかしクリューは鋭敏な感覚を「悪くない」と思った。理由は自分でもわからない。ただ、魂レベルで研ぎ澄まされた感覚を大切にするべきだと思ったのだ。

「さあ、行こう」

 クリューの思いにクラフターのGBUシステムが答えた。

 3Gの移動はダイバーの考えていることを脳波に変換し、GBUシステムの重力子操作による「Gトラクション」が担っている。

 クリューのダイブしたクラフターが、空高く舞い上がった。



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