クリューという少年(3)
「ルールは?」
服を脱ぎパンツ1枚になったクリューが、ローガンとセーブルに尋ねた。12歳という年齢よりも小柄な体のクリューの肉体は、まだまだ子供ながらも引き締まった無駄のない筋肉が付いている。まるでネコ科の動物の俊敏さが備わっているようだ。
「どうした、小僧?! ストリップか?!」
ひげ面で太った男がヤジを飛ばした。
「初めてダイブする機体には、どんなフィードバックがあるかわからないだろ? 基本じゃないのか?」
ヤジを真顔で返すクリューに、マロウは軽い戦慄を覚える。
「・・・軍で教わることを、何であのチビは知っていやがる?」
マロウは先の独立戦争にて、テラクア正規軍として連合と戦った猛者だ。素人から叩き上げた他の部隊員とは違う。解放軍のほとんどの兵士は軍に所属した経験がないのだから、知らなくて当然なのだが。
「普通はコックピット内で脱ぐのよ。アンタみたいな子、初めてだわ」
セーブルが溜息交じりに首を振った。確かに女性は先に脱ぐわけにはいかないだろう。
「そうなのか?」
クリューがゼナに確認する。
「まあな。アタシは全裸になるけど」
「あ~!だから紐パンなのか!!」
バキッ!!
クリューの側頭部に回し蹴りが炸裂した。
「紐パン!!」「お嬢は紐パン・・・」「今、チラッと見えた・・・」
46部隊の野郎どもがざわつく。
「殴るぞ」
「蹴ってんじゃねえかよ!!」
「うるせえ!」
少しだけ顔を赤らめたゼナが、プイっとスカートを翻しながら後ろを向く。
「ハハハ。まあ、こんなとこまでダイブスーツなんか支給されないからな。お前、ガキのくせによく知ってるじゃねえか」
腕組みしたローガンがクリューを褒める。
「舐めんな。こんぐらい常識だろ?」
「常識? 経験で学ぶモンだぞ?」
ローガンは元々正規軍の兵士ではない。義勇兵からの叩き上げだ。軍人としてのまともな教育は受けていなかった。
「んなことより、ルールはどうすんだよ。模擬戦つっても壊すわけにはいかねえだろ?」
「あ・・・そうだな・・・セーブル、どうする?」
「私が決めんの?・・・呆れた」
「しょうがねえだろ?俺だって模擬戦なんてやったことねえし」
「それで模擬戦を提案してんの?・・・呆れた」
片手でこめかみを抑えたまま立ち尽くすセーブルに、マロウが横から口を出した。
「実戦向きじゃねえけど、ペイント弾でいいんじゃねえか?」
「・・・そうね。それで行きましょ。私のペイント弾、100発全て避けたらクリューの勝ちにしてあげる」
「舐めんな。勝負なんだろ? オレにもペイント弾、くれよ」
クリューの不敵な笑みが、セーブルの癪に障った。
「そっちこそ舐めないでほしいわ。クラフターごときで私に勝つ気?」
クリューは何も言わずに口角を上げた。




