クリューという少年(2)
「お?ようやく来たか」
大木が聳える森の一角で、角刈りで筋肉質の大男がニヤリと笑いながら腕組みをしている。
「遅っせ~ぞ!!ゼナ!!チビ!!」
「チビじゃねえ!!クリューだ!!舐めんな!!」
大男の隣に立つ痩せた出っ歯男の言葉に、クリューが言い返した。大男はクリューの悪態にニヤつきながら、クリューの頭をポンと軽くたたく。
「生意気なガキは嫌いじゃねえよ。これで全員揃ったな」
大男を中心に10人ほどが輪になった。クリューとゼナ以外は全員大人だ。輪の後ろには高さ15mほどの巨大なロボットが、大木に隠れるように5体ほど立っていた。
「喜べ。ようやく、俺たちにも3Gが1機支給された」
薄汚れたロボットの中で、1体だけがきれいな塗装のままだ。
「何でぇ!!『クラフター』じゃねえかよ!!しけてんな!!」
出っ歯の男は「期待外れ」とでも言うように吐き捨てた。
「クラフター」は作業用3Gであり、純粋な軍用3Gではないからだ。もっとも軍用3Gがゲリラ部隊に回ってくることなどほとんどなく、仮に軍用3Gが回ってきたときは「欠陥品」か「試作失敗品」を疑う必要があるのだが。
「文句を言うな、マロウ。クラフターでも重要な戦力には違いない。乗るか?マロウ」
「う・・・」
マロウという名の出っ歯の男は返事をためらう。クラフターは作業用3Gであるため、武装は皆無でダイバーの反応速度を上げる「マシナリードーピング」も装備されていない。戦場では真っ先に落とされる悪名高い機体なのだから。
「オレにくれ」
クリューが迷っているマロウを尻目に手を上げた。
「チビ~。お前、3Gに乗ったことがあんのか? 遊びじゃねえんだぞ?」
「うるせえ!!余裕だ!!」
「ほう・・・余裕か」
角刈りの大男の眼光が鋭くなる。マロウだけじゃなく周囲の部隊員も軽く引くが、クリューは威圧に動じない。
「オレにやらせてくれ、ローガン」
クリューにローガンと呼ばれた大男は、口元をニヤつかせながら目を閉じた。周囲の部隊員がざわつきだす。
「小僧のくせに」「ハッタリか?」「何、死に急いでやがる」
部隊員が嘲笑するなか、ゼナは表情を崩さなかった。
「クリュー、証明できるか?」
「いいぜ。どんと来い」
クリューに虚栄は一切見られない。こいつ、身の程知らずのバカなのか?と思わないでもないローガンだが、クリューの自信の根拠を垣間見たいとも思った。
「・・・模擬戦、やってみろ」
「おう、いいぜ」
ローガンの提案に、胸を張りながら二つ返事で返すクリュー。見栄やハッタリなど微塵にも感じない。
「私が相手するわ」
クリューの対戦相手に立候補したのは、褐色の肌に編み込んだ黒髪の妙齢の女性だ。
「セーブル、クリューをコテンパンに叩きのめせ。アイツに最前線はまだ早い」
ローガンがセーブルという名の褐色の女性に耳打ちする。
「わかってるわよ、ローガン。坊やを死なせたくないんでしょ?」
セーブルがローガンにウィンクした。




