乱戦(10)
「ターゲットを光学センサーで捉えました。リンクさせます」
アレン、ヨアキム、テレサの三人は脳波リンクでターゲットであるアッシュハウンドの位置を共有した。これで漠然とした指示でも齟齬は起きない。
アッシュハウンドは上下左右に激しく動いているものの、一定の空域からは逸脱しないようにも見えた。
「・・・誘っているのか?」
霊子レーダーにはアッシュハウンドの近くに白い3Gの姿が映っていたはずだが、光学センサーには引っかかってこない。罠の可能性も考えられるが・・・
「ヨアキムは標的の右へ、テレサは左へ散開しろ。三方向から挟み撃つ」
「「了解」」
例え白い3Gが何らかの策を講じたとしても、3機同時には対処できまい。1機が白い3Gの相手をしている間に、2機でアッシュハウンドを落とせば済む話だ。
「何!?」
気づけばアレンの視界に白い3Gが大写しになっている。光る拳を振り下ろすところだ。
「くっ・・・」
正規軍の中でも上位1%タイルに入るアレンの反射神経のおかげで、かろうじて避けることに成功した。
素の反射神経の違いはコンマ数秒にも満たないが、反応速度を大幅に強化するマシナリードーピングを使用している状態において、その差は大きい。
「・・・これでマイクとクリスは落とされたのか」
白い3Gは何らかの光学迷彩を施している。どんなに訓練を施しても3Gに憑依するという生身の感覚では、反射的に視覚から入る情報に頼ることが多くなる。霊子レーダーで捉えていても、生身の人間では該当する感覚がないのだ。強いてあげれば「第六感」か。しかし超心理学のESP能力でも身に着けていない限り、第六感に頼った戦闘などアレンでも容易ではない。
アレンは霊子レーダーと攻撃システムをリンクさせる。霊子レーダーで補足した敵を、攻撃システムにより自動で照準を合わせるのだ。ただし予測はできないため、GBUシステムによるハイスピード戦闘の中、実弾で命中させることは難しい。逆に言えばタイムラグのほとんどないレーザー銃でならば命中させることは可能だ。
宇宙戦では有効なレーザー銃も、大気圏内では大気に拡散され威力が激減してしまう。テラクア内戦にて好んで使うものは少ないが、アレンは数少ないうちの一人だった。
「こちらが見えないのなら、お前も見えなくしてやる!!」
方向転換のために一瞬だけ動きを止めたスノーバードに、エクリプスランサーのレーザー銃が瞬間だけヒットする。
レーザー銃は長時間照射することによって熱と破壊を促すが、短時間では傷一つ付けることはできない。
しかし当たった場所が目であるならば・・・
スノーバードの目は潰され、ゼナの視界は暗転した。




