乱戦(11)
レーザー銃がスノーバードの顔面にヒットしたことを確認したアレンは、敵の視界を奪ったことを確信した。
一気に畳みかけるべく、接近戦用の特殊電撃警棒のマトラック(matraque)でスノーバードの動きを止めにかかる。一番避けにくい腹部への横殴り。盾を持たないため腕でガードしようとしても無駄だ。マトラックの高圧電流は触れさえすれば、3G内の生体部が麻痺痙攣を起こす。
「何っ!?」
アレンの振るったマトラックは、スノーバードの拳に纏わせたPPAによって迎撃粉砕されていた。
ゼナはそのままPPAを纏わせた両拳を、ボクシングさながらにエクリプスランサーへと叩きつけていく。
「くっ・・・」
マイクより格闘技術も反射神経も優れたアレンならば、素人ボクシングであるゼナのパンチを避けることは容易い。しかし精神的な動揺は隠しきれなかった。
少しだけ距離を取ったアレンは、脚部のミサイルポッドから追尾式ミサイルを発射させる。
あっさりと躱したスノーバード。しかし追尾式ミサイルは避けても再び戻ってくる。霊子レーダーでは捉えきれないミサイルならば・・・
「アンタ、甘くね?」
アレンの脳裏に少女のような甲高い声が響いてくる。霊子通信の混線か? いや軍用霊子通信で混線などあるはずがない・・・
「霊子レーダーってのは、ESP能力の『千里眼』ってヤツを機械化したものなんだぜ? 聞きかじりだけどな」
千里眼(Clairvoyance=クレヤボヤンス)は超感覚的知覚(ExtraSensory Perception)の一種であり、目を閉じていても視覚的に世界を把握する能力のことである。
「んで、霊子通信ってのはテレパシーを機械化したもんなんだってよ」
テレパシー(Telepathy)は念話とも呼ばれ、他人の心の内容が言語・表情・身振りなどによらずに直接に別の人の心に伝達されるESP能力のことだ。
「アタシ、どっちも使えんだよね~。普通じゃないんよ」
こ、これは敵の白い3Gからのテレパシー・・・? 混線ではなく、直接テレパシーで話しているのか・・・?
つまり敵はESP能力を自在に操る「ESPer」だと・・・?
「ご名答」
呆然としているアレンの足が爆発する。
スノーバードが足にPPAを纏い、ローキックでエクリプスランサーの脚部のミサイルポッドを破壊したのだ。
爆発の衝撃でエクリプスランサーは錐揉み回転しながら落下していく。
心を折られたアレンは、そのまま海にまで落下し海中へと沈んでいった。
「案外あっけなかったな・・・」
優れた軍人が想定外の事実を受け止められないこともある。特に実戦経験が少ないエリート軍人では、人知を超えた想定外過ぎる出来事に於いて「認知バイアス」を発生してしまうのだ。
アレンは若く実戦経験も豊富なエリートではあるが、人外の「バケモノ」に近い相手との戦闘経験は無かった。




