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重霊機モルスレプス(Gravity Ghost Gear MORS LEPUS)  作者: 高戸 賢二
初陣

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乱戦(5)  

 ゼナは焦っていた。

「当たらない・・・!」

 ゼナが憑依するスノーバードが搭載するマシナリードーピングは感覚速度を500倍に高める。敵のランサーストラトスのマシナリードーピングは200倍なので、スノーバードの方が優位だ。なのにスノーバードの新兵器であるPPA(Photon Phase Array)が相手にかすりもしない。

 3Gの移動はGBUシステムの機能の一つ「Gトラクション」によって行われる。重力子を操作して任意の方向への自由落下を発生させて移動するのだ。Gトラクションで前方に300Gをかければ、980.7 m/s²の加速度により僅か0.1秒で1000km/hを突破する。そのためGBUシステムには周囲のGや慣性を完全に遮り、内部に一定のGを保持するGフィールドも同時展開させなければならない。これはGトラクションによる強烈なGから内部の人間と機体を守るための機能だ。

 一方でGトラクションは加速しかできない。Gフィールドの弊害により速度維持や減速は不可能であり、Gトラクションを0Gにすると急停止してしまうのである。従来のエンジンなどの移動システムとはかけ離れた挙動を引き起こすGトラクションは、長時間にわたる高度な訓練とセンスを必要とする移動システムであった。

 ゼナは高度な訓練経験はないが、Gトラクションを操るセンスに優れていた。他の移動システムの操縦経験のない少女だからこそ、先入観無しでGBUシステムを使いこなしているのだ。

 それでもゼナの攻撃は当たらなかった。

 ゼナの相手をしているマイクとクリスは正規軍のエリートダイバーだ。過酷な訓練内容を高レベルで習得してきたエリートであり、訓練には格闘も含まれている。

 プロボクサーが避けに徹すると素人のパンチもキックも全く当たらないという。これは鍛え上げられた反応速度に加えて、相手の肩・腰の動きから攻撃を予測して反応しているからである。

 マイクとクリスはゼナの足止めという命令を着実に遂行していた。

 銃をグングニルの狙撃により失ったマイクは、ゼナに接近戦を挑むもゼナの間合いに入るだけで避けに専念している。ゼナはGトラクションを操るセンスは優れていても、格闘は訓練を受けていない素人だ。いくら反応速度が速くてもテレフォンパンチなど掠らせもしない。

 クリスもアレンの命令を忠実に守り、射撃を牽制に使っていた。Gトラクションの移動の特性を利用して、ゼナが停止した瞬間だけ撃つのである。リスクを負ってまで、急いで落とす必要はない。


 ソード2、3が間もなく戦場に合流しようとしていた。



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