乱戦(3)
「グングニルよ。ようやったのぅ」
ベネトはクラフターを駆使して、敵の3Gから必死に逃げ回りながらグングニルを労った。ゲラルドが逃げ切れたのは、グングニルの狙撃のおかげだったからだ。
「主よ。ずいぶんと余裕ができたのだな。先ほどまで話すらできなかったのに」
「慣れ・・・じゃな」
ベネトが憑依している作業用3Gクラフターと正規軍の3Gランサーストラトスとの大きな違いは、脳の反応速度を100倍にするマシナリードーピングがあるかないかである。亜光速が出せるGBUシステムを搭載した3G同士のハイスピードの戦いでは、反応速度と判断力が重要だ。
ベネトは豊富な経験に加え、元々は正規軍のダイバーである。正規軍の戦術を熟知しているうえに、敵がエリートでありマニュアルに乗っ取った戦法で追ってくるのが幸いした。相手のパターンを先読みした回避行動で、マシナリードーピングの差をある程度埋めていたのである。
さらに敵の3Gにとって厄介なのがグングニルであった。
見た目は明らかな狙撃用の銃身の長いロングライフルにもかかわらず、照準を合わせることなく無造作どころか適当に撃っているようにしか見えないからである。しかし銃口は何度も自分たちに向き、撃たれる前の回避行動を余儀なくされる。タイミングも何もなく不意に狙われるのである。常識外れの狙撃行動に、敵の3Gは深追いすることもできずに手を焼いていた。
「グングニルの牽制のおかげでもあるがの」
「それは何より」
グングニルがクラフターを追っている2機の3Gとはまったく別の方向へと光子弾を放つ。
「どこを狙った?」
「僚機が危なかったので牽制した」
続けざまに何発も光子弾を放つ。
「かなり劣勢だな。このままでは僚機は落とされるぞ」
クラフターには軍用の霊子レーダーも装備されていないため、ベネトには僚機が誰のことを言っているのかはわからない。苦戦しているのはローガンか、ゼナか。というよりベネトは2機の敵の追撃をかわすので精一杯だ。クラフターを護衛しているセーブルの動きすら、ベネトは把握できていない。敵の2機はセーブルのハイホークXには目もくれず、執拗にベネトのクラフターを追ってきている。それだけこのクラフター、いやクラフターの持つグングニルが脅威ということか。
「敵にモテるのはうれしくないがのぅ・・・グングニルはそれぞれの戦況がわかるのか?」
「高精度の霊子レーダーを装備している。最新のマシナリードーピングも搭載されているぞ」
「なんと・・・」
クラフターどころか敵のランサーストラトスよりも高性能なのでは?
「グングニルはこのまま味方のピンチを救っとくれ。ワシは逃げに徹するからのぅ」
「任せろ」
敵がこっちをただの作業機と侮ってくれるなら悪くない。グングニルを常識的な武器だと思ってくれるならなおさらだ。
ただし、それも敵の増援が来るまでの話なのだが。




