命令(3)
46部隊にグラミー島防衛の出撃命令が下された。出撃は30分後。
司令テントでのブリーフィングを終えた後、ダイバー以外の隊員たちは慌ただしくテントから散っていった。各々の役目を果たすために。5機の3Gを訓練仕様から実戦仕様に換装するのに、30分はギリギリの時間だ。1分1秒でも無駄にはできない。46部隊の野営地に緊張が走る。
一方で、出撃予定のダイバーたちは体調を万全にするために、出撃時間まで休息が与えられている。もっとも隊長のローガンと副長のゲラルドはフォーメーションの選択や、回避する際の動き方、攻撃の合図、敵の優先度など、部隊としての決まりごとの再確認を煮詰めていた。計算上は1機で敵6機を倒さなければ勝てないのだ。バラバラに動いたのでは各個撃破されてしまうため、連携が勝負のカギでもあった。
見習いダイバーであり出撃予定のないクリューは、管制役のマロウを手伝おうとするが「ここは専門分野だ。クリューにできることはねえ」と追い出される。クリューは他の忙しそうな仲間の手伝いに向かったが「いちいち教えてるヒマはねえ!!あっち行ってろ!!」「素人が邪魔すんな!!あっちを手伝っとけ!!」などとたらい回しをされた挙句にどこからも邪魔者扱いをされてしまう。仕方なくクリューは休息中のゼナ、セーブル、ベネトと一緒にいることにした。何もできない自分にフラストレーションをためながら。
クリューはゼナたちと居ながらも、他の隊員たちの動きが気になってしまいキョロキョロしてしまう。
「落ち着けよ、ポチ。お前が見ようが見まいが、みんなの仕事は変わらねえよ」
ゼナはゆったりと砂糖入りの甘いホットミルクを啜りながらクリューを窘めた。苦戦必至の戦闘前だというのに、ゼナは恐怖感を微塵も見せない。歴戦の勇士と言えるほどの貫禄さえ感じられた。
「フォッフォッフォ。クリューよ、お前さんは見習いだが、同時に予備ダイバーでもあるんじゃ。ワシらに何かあったら、お前さんの出番も来るやもしれん。キッチリ休んどけ」
「そうよ。休めるうちに休んどくのもダイバーの仕事。覚えときなさい」
「・・・わかった」
クリューはそう言うと、スーッと瞑想に入るが如く目を瞑る。
(ほぅ・・・)
ベネトはクリューの纏う空気感が変わったことに驚いた。門前払いを喰らい続けイライラしていたクリューだったのだが、目を閉じた途端に優れた戦士の持つ独特の緊張感が垣間見えたからだ。ベネトが若いころに出会った美女、バケモノと呼ばれた帝国のER隊と似た雰囲気に。




