命令(4)
「なあ、いいか?」
目を閉じていたクリューが静かに口を開いた。誰に問いかけたわけでもない一言だが、三人とも「話をしていいよ」とばかりに黙って頷く。
「この戦いの意味ってなんだ?」
「クリューは何を知りたいの?」
「放棄された基地を狙う敵と、それを防衛する俺たち」
ゼナはクリューの意図がわからず首を傾けるが、セーブルとベネトは顔を見合わせてアイコンタクトを取る。
「グラミー島は敵である北大陸と、ここヴィヴァマー諸島のほぼ中間点にあるわ。距離はおよそ8000㎞。敵は橋頭堡を奪うつもりでしょうね」
「地球の感覚で言えば、大陸を何度も横断できるぞぃ」
「・・・わかんねえ」
「フフッ、クリューならそうよね」
「アタシもわかんねえぞ」
「そうね。具体的には私にもわからない。だってここと北大陸とは1万5000㎞離れているのよ。距離感なんてピンと来ないわ」
「じゃが、地球の感覚で言えば恐ろしく遠いんじゃよ。地球なら裏側近くまで行ける距離じゃからのぅ」
「でもGBUシステムなら秒だぞ?」
3Gや宇宙船を兼ねたテラクアを航行する船は、亜光速まで出せるGBUシステムで空を飛んでいる。
クリューの言葉にセーブルとベネトは目を合わせた。
「・・・それじゃよ。放棄された理由はの」
「・・・わかんねえ」
「説明してあげる。ここで内戦になった時にね、誰も惑星での戦い方を知らなかったの。テラクア独立戦争は宇宙戦だったしね」
「敵も味方も惑星での戦争なんて地球時代しか知らんのじゃ。じゃから地球感覚で内戦を始めた。15000㎞は途方もなく遠い。前線基地が必要じゃと思った」
「で、基地を作って運用してから気づいたの。・・・必要ないって」
「部隊を駐留させるのも、物資を基地まで運ぶのも、無駄だったんじゃよ。GBUシステムなら15000も8000も大して変わらんからのう」
ゼナは目を丸くして驚いているが、クリューの目は鋭さを増している。
「・・・じゃあ守る意味ねえじゃん」
ゼナはうんうんと頷くが、セーブルとベネトは溜息混じりに笑っている。
「・・・でも、命令なのよ」
「ワシらは上から嫌われてるでのぅ」
二人は静かにティーカップに口を付けた。怒りも動揺もなく、諦めているわけでもなく、ただ淡々と状況を受け止めている。
「ワシらはやらかしとるし、やっかまれとるし、まあ厄介者じゃから、こういうのも慣れっこじゃな」
「いろんな思惑はあるかもしれないけど・・・意味が何であれ、やることは変わらないわよ」
二人の平常心を見たクリューは、ゼナを見る。
「アタシか? アタシはスノーバードを貰った以上、全部勝つ気さ。PPAまで貰ったんじゃあ、相手が誰でも負けらんねえよ」
ゼナは自信に満ち溢れていた。
「よいか、クリュー。例え劣勢でも、生き残れば勝ちじゃよ」
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