見習いダイバー(9)
「そういえばよう、俺も軍にいたころに翼の生えた黒い女性型の3Gを見たことがあるぜ・・・確か、ありゃあ、帝国の・・・」
「あ、クリューが帰ってきた!!」
マロウが昔話をしようとしたところで、ゼナが立ち上がって行ってしまった。
「俺の話も聞けよ・・・」
「今度、聞いてあげるわよ。クリューを迎えに行ってあげましょ」
項垂れるマロウの肩をポンと叩き、セーブルも席を立つ。
「ワシは酔っぱらったから、ここで待っとるぞぃ」
森の暗がりから野営地に出てきたクリューは、仕込み杖の先に獲物をぶら下げて、肩に担いでゆっくりと歩いていた。
「ポチっ!! やったのか?!」
ゼナが杖の先にぶら下がった獲物を確認すると、大きなコウモリが2匹。
「スゲえぞ、ポチ!! 2匹も狩ったのか!?」
自分のことのように喜ぶゼナを一瞥しただけで、クリューはスタスタと歩いていく。
「お、おい・・・ポチってば」
ゼナの呼び掛けに振り向いたクリューの表情は不満の色がありありと浮かんでいた。
「・・・爺っちゃんは?」
クリューの雰囲気に気圧されて、ゼナは素直にベネトの座っているテーブルを指差す。
「・・・あっち」
クリューは礼も言わずにベネトの方へと歩いていった。
途中でマロウとセーブルにすれ違うものの、クリューは目もくれずに歩いていく。クリューに声をかけることもできなかった二人は、ゼナに近寄った。
「・・・どうしたの? 何かあった?」
「・・・わかんない。何かが気に入らないみたい」
「コウモリ2匹も狩ってるじゃねえか。何が気に入らねえんだ?」
「・・・わかんない」
「爺っちゃん」
「おお、クリューか。首尾はどうじゃった?」
クリューは2匹のコウモリをテーブルの上に置く。それを見たベネトは満足そうに微笑むが、クリューの顔は仏頂面のままだ。
「お? どうした?」
クリューはベネトから借りた仕込み杖の銃を突き出す。
「これ、弾が真っ直ぐに飛ばない」
「そんな訳あるか。10m程度までなら的は外さんはずじゃぞ」
「違う! 俺が身に付けたいのは『射撃』じゃなくて『狙撃』だ」
「なんと・・・」
「100mも離れると、弾がバラバラに飛んでいくんだ。当たるように修正するのに10発も使った」
今、何て言った?
つまり100m離れたところから、残り2発でコウモリ2匹を仕留めたのか?
「修正・・・と言ったな? クリューよ、修正とは、一体何をした・・・?」
「・・・説明できない」
クリューは何か特別な力を持っている?
ベネトもクリューに説明を求めようとしなかった。
賭けに勝ったセーブル。
「クリューの狩ったコウモリを食べてもらうわ」
「「「え~っ!!!」」」




