見習いダイバー(6)
「置いてくる・・・か・・・」
マロウにその感覚はわからない。ゼナもわかっていないようだが、クリューには何かがストンと腑に落ちたようだ。何かに取り憑かれたように、木の棒を構えて虚空を狙っていた。とてもただの木の棒とは思えないほどの威圧と集中力。隣にいるゼナもマロウも声をかけるどころか、息をするのにも苦労をするほど。
おもむろに、フッと緊張感が霧散する。
「当たったか? クリュー」
クリューは黙って頷く。
「フォッフォッフォ~。クリューの敵は単調な動きのようじゃのぅ」
「・・・うっせ」
クリューは口をとがらせる。
「ならば、今度は実物でやってみれ。ホラ」
ベネトが手にしていた杖をクリューに放り投げた。受け取ったクリューは杖を手にしたまま、目を丸くしている。
「フォッフォッフォ~、仕込み杖じゃよ。柄のところを回してみぃ」
クリューが首をかしげながら、弧を描いた柄の付け根を180度ひねる。するとチャキッという音と共に、グリップと引き金が出てきた。杖の先が蓋のように外れ、螺旋状のライフリングを刻んだ銃口がのぞく。
「古典式火薬銃じゃ。ワシが作った」
「ベネトさん!! アンタ、なんちゅう物騒なもんを持ってたんだ!?」
「甘いぞぃ、マロウ。常在戦場じゃよ。フォッフォッフォ~」
「今どき白兵戦なんて、しねえよ・・・」
「ワシの若い頃もなかったぞぃ・・・趣味じゃ」
がっくりと項垂れるマロウに、穏やかに笑うベネト。そんな二人を尻目に、クリューとゼナは仕込み杖の銃を弄繰り回している。
「爺っちゃん、弾は?」
「今は入っとらんよ、ホラ」
ベネトはカーゴパンツのポケットから箱を取り出し、クリューへと投げた。
「1ダース入っとる。それでテラクアコウモリを仕留めてみぃ」
ヴィヴァマー諸島に生息する一回り大きな蝙蝠で、ヒトが持ち込んだものかテラクア原種かは判明していない。
「ベネトさん!! コウモリなんて当てられっこねえ!!」
コウモリの動きは目で追えないほど不規則だ。おまけに飛ぶのは夕暮れから夜にかけて。ナイトスコープも付いていない仕込み銃で仕留めるなど、マロウには不可能としか思えない。
「マロウさん・・・出来ないと決めつけたら、何もできないよ。100%出来ると思い込むことが・・・魂に刻み込むことだから」
クリューは銃を見つめながら呟く。隣のゼナが「意味わからん」とばかりに両手を軽く上げていた。
「フォッフォッフォ~。クリューよ、無益な殺生はするなよ」
「大丈夫。仕留めたら、ちゃんと食うから」
「げぇ~、コウモリ食うのかよ・・・」
ゼナが呻くような声を出す。
「何だよ、ゼナ。食ったことねえのかよ?」
「食うわけないじゃん!!」
「ワシは食ったことあるぞぃ」
「「マジか!?」」
「・・・冗談じゃ。フォッフォッフォ~」




