見習いダイバー(5)
クリューは海が一望できる丘に立ち、木の棒を銃に見立て構えていた。
「どうした、ポチ。サタニアを撃ち落としたいのか?」
遠くから声をかけてきたゼナの方にクリューは振り向く。
「サタニアって何だ?」
「ほら、アレだよ」
ゼナが指差したのは、空に浮かぶ輪を伴った大きな月。
「土星(Saturn)に似てるから、そういう名が付いたって、聞いたことがあるぞ」
「土星って何だ?」
「・・・さあ? そこまでは知らんけど?」
「もっと勉強しろ!! このボンクラども!!」
ゼナの後ろから叫んだのは、ベネトをおんぶしたマロウだった。ベネトの姿を見つけたクリューは、丘を全力で駆け下りる。
「爺っちゃん、何でここに?」
「クリュー、お前に会いたいんだとよ」
「フォッフォッフォ~。マロウや、済まんのぅ」
ベネトはマロウの背中からゆっくりと下りる。
「して、クリューよ。お主、何してたんじゃ?」
「爺っちゃんは後方に下がって牽制しろって言ってたじゃん? 牽制じゃなくて狙撃しちゃえば、後方からでも敵を倒せるなって思って」
「それで、木の棒なのか?」
「バカにすんなよ!! イメージトレーニングだ!! 魂に刻み込めば、どんな3Gに憑依しても活かせるんだからな!!」
「な・・・」
マロウは絶句した。
魂に刻み込むって簡単に言うが、どんな集中力でイメージトレーニングすれば、魂にまで刻み込めるというのか。大体「体に教え込む」だけでも、相当な反復練習が必要だ。それを魂レベルに落とし込むというのは、肉体よりもさらに先の話だ。理屈では決してできはしない、魂とか本能レベルでの話となるのだ。クリューの考えや発想は、常人とはまるで違う。
しかしゼナもベネトも真剣な表情でクリューの話を聞いていた。
この二人も常人離れしてるってことだ。
マロウは自分の限界を思い知らされていた。
「それで、クリューはどんなイメージで撃っとるんじゃ?」
マロウが悩んでいるのを余所に、ベネトが穏やかに問う。
「空間をピンポイントで狙ってるよ。空だけだとイメージしにくいから、あの月を手前にしたり奥にしたりして」
クリューはサタニアを指さす。
「そうか、三次元で捉えとるのじゃな。うんうん」
ベネトは柔らかな笑みを浮かべていた。
「じゃがのう、それでは止まっているモノしか当たらんぞぃ」
クリューがハッとした顔になる。
「動いているモノに当てるには『時間』も捉えねばならんぞ。ピンポイントで狙うんなら、マトがそのポイントに来る時間も捉えることじゃ」
軍用機には「オート照準」が備わっている。軍用機搭載のHi-QCが敵の動きを予測し、自動で照準をコントロールするのだ。軍用機に乗っていたマロウは、空間も時間も意識したことはなかった。
「ねえねえ、ベネト爺ちゃん。コツってあるの?」
ゼナも興味があるようだ。
「そうさのぅ・・・あえて言うなら、敵の進路に弾を『置いてくること』じゃな」




