見習いダイバー(4)
「どれ、ワシをクラフターに乗せてくれんかのぅ。クリューに見本を見せてやりたいんじゃ」
隊列訓練の前に、ベネトがローガンに進言する。ローガンの目から見ても、クリューは伸び悩んでいるように見えていた。クリュー本人は全く悩んでいないのだが。
「爺さん、無理はするなよ」
80歳を超えたベネトは杖を突いており、通常歩くことも覚束ない。ローガンが心配しているのは訓練そのものよりも、3Gへの乗り降りの方だ。軍用3Gよりも若干小さいクラフターであっても、コックピットは10m以上の高さにあるのだから。
「私がフォローするわ」
ベネトは昇降ワイヤーを使わず、セーブルのハイホークXの手に乗りコックピットへ乗り込んだ。
「フォッフォッフォ~。ええのぅ、若い体は。新車はええのぅ」
憑依したベネトから司令テントに電波無線機からの音声が流れる。
「マロウ、ワシへの指示はいらん。クリューよ、デコイからの映像でクラフターの動きを目に焼き付けておくんじゃ」
ベネトのクラフターは、予備のGサイクロトロン銃を手にした。
「借りるぞい。さすがのワシでもクラフターで接近戦は無謀じゃからの。フォッフォッフォ~」
高らかな笑い声と共に、ベネトのクラフターが空へと舞い上がっていった。
<I字隊形に移行>
ベネトのクラフターは他の4機の動きを見て、すかさず最後列に並ぶ。周囲からは一呼吸遅れるものの、マロウが電波無線機で伝えたクリューのクラフターの時よりも数倍速い。
<V字隊形に移行>
同じように一呼吸遅れながらも、ベネトのクラフターはピタッと左前に位置した。
「クリューよ。味方の動きは常に把握しておくんじゃ。味方を活かせば自分も活きる。逆に味方を混乱させれば、自分は孤立する。戦争は一人でやるもんじゃないからのぅ」
クリューのような異常ともいえる速度は出さないものの、無駄のない動きで味方に合わせている。優雅ともいえる動作は、クリューだけでなくマロウも見とれるほどだ。
(誰だよ・・・「今や46部隊のダイバーの誰よりも、クリューはクラフターを使いこなしている」なんて言ったヤツは・・・俺だよ。いや、思っただけで言ってねえか)
マロウが内心でひとりボケひとり突っ込みをしていた。
<散開し、仮想敵を攻撃せよ>
他の4機が隊列を崩しバラけるのを見たベネトは、クラフターを後方へと下げた。
「味方の4機はシンクロしとるからのぅ。邪魔しないように下がるのは鉄則じゃ。特に味方の射線に入っては、いかんぞぃ」
「でも爺っちゃん、それじゃあ敵を倒せないじゃん」
「ええんじゃよ。味方が倒してくれれば。こっちは敵を牽制するだけでいいんじゃからのぅ」
クリューは真剣なまなざしで、デコイから送られるベネトのクラフターの映像に見入っていた。




