見習いダイバー(3)
<I字隊形に移行>
「クリュー、隊のケツに付け!!」
<I字隊形維持のまま、速度を上げる>
「クリュー、スピードを上げろ!追い抜くなよ!」
<V字隊形に移行>
「クリュー、お前は左端に行け!」
<クラフター、下がり過ぎだ>
「お前、もうちっと前へ出ろ!!」
(我ながら、なんなんだよ。・・・このクソ翻訳)
クリューのクラフターを入れた、5機の3Gによる編隊訓練。
マロウは隊長機であるアッシュハウンドからの霊子通信を、電波無線機でクリューに伝えている。しかも軍用語を知らないクリューにも理解できる言葉に変えて。
<想定戦闘空域に到達。右翼より順に散開せよ>
「クリュー、お前は最後に散開しろ」
「マロウ、『サンカイ』って何だ?」
「バラけろってことだ!!」
<クラフター、突出し過ぎだ>
「クリュー、突出・・・じゃねえ!!前に出すぎんな!!」
「バラけるんだったら、どこに行ったっていいだろ?」
「いいから、下がれ!!このスットコドッコイ!!」
編隊訓練を終えた5機の3Gが、司令テント脇に帰還する。4機は木々に囲まれた空き地に着陸するが、クリューのクラフターだけが枝をなぎ倒しながら大木のすぐ近くに降りてきた。下で待つ整備班が落ちてきた枝から逃げ回る。
パキパキと小枝を降りながら、クラフターのコックピットハッチが開く。
「このクソガキ!!危ねえだろ!!」
整備班を代表してギャビンが怒鳴っていた。
「あ、悪りぃ悪りぃ」
クリューはコックピットから軽く手を上げ謝るが、表情に反省の色はない。
「この方が早く下りれるじゃん」
言うや否や、クリューは大木の枝に飛び移り、あっという間に地面に着地する。野生の猿のような動きに、ゆっくりとワイヤーで下りているセーブルが呆れていた。
「やるなあ、ポチ。アタシも今度からそうしようかな」
「やめろ!!スノーバードに傷がつく!!」
先に降りていたゼナがクリューを褒めるが、ギャビンが必死に止める。
それらの様子をマロウは司令テントの入り口で、溜息をつきながら眺めていた。
「ご苦労だったな、マロウ」
ローガンがマロウの肩を軽くポンと叩き、労いの言葉をかけた。
「へっ、そりゃどうも・・・」
・・・ヒトの気も知らねえで。
マロウが卑屈に笑う。
「お疲れ様。あの子、段々サマになってきたわよ。マロウのおかげね」
続けてセーブルがマロウに声をかけた。
「ホントに『お疲れ様』だぜ・・・」
「???」
マロウの言葉の意味がわからずに、首をかしげながらテントに入っていくセーブル。マロウとクリューの電波無線の内容は二人にしか聞こえていないのだから。
「あ、マロウさん!!」
クリューが満面の笑顔で手をブンブン振りながらマロウの元へ走ってきた。
ありゃあ、犬だな。手じゃなくてしっぽが見える。「ポチ」と呼ぶ嬢ちゃんの気持ちがわかるぜ。
「マロウさん、サンキューな!! 実戦でも何となくうまくできそうだ」
・・・どこがだ。あんなんじゃ、まだまだ実戦じゃ使えねえ。
「お、おう・・・俺に任せとけ」
本心を隠して、マロウはぎこちない笑顔を見せる。
「でもな~、マロウさん」
「・・・何だ?」
「もうちぃっと、わかりやすく言ってほしいぜ」
「あれ以上、わかりやすくできるかっっ!!!!!!」




