見習いダイバー(2)
「ワシならできるぞぃ」
白髪さえほとんど無くなり、禿げ上がった好々爺が柔やかに笑った。
「若い頃から古典的な機械弄りが好きでのぅ。こんなモノが役に立つとは思わんかったわぃ」
「ベネトさん、ありがとうございます」
「爺っちゃん、スゲえ!! ありがと~!!」
マロウが敬意を込めて感謝してるのに対し、クリューは無邪気に喜んでいた。
ベネトの見てくれは、ただのしょぼくれた爺さんだが、これでも46部隊の予備ダイバーである。齢八十は優に超え、とうの昔に軍を退役していたのだが、この内乱の勃発時に現役復帰してきた元凄腕ダイバーだ。マロウが正規軍に入隊した時点ですでに現役からは退き、教官となっていた。マロウにとっては恩師であり、昔は鬼教官だったこともあり頭の上がらない人物である。
「フォッフォッフォ~、若者の力になれて、じじいも本望じゃよ」
「よっしゃ、クラフターを改造すっぞ! 整備班、全員集合!!」
ベネトの知識を基に、整備班長のギャビンが設計図を起こす。ジャンクパーツをかき集め、クラフターの頭部にアンテナと電波通信機器を取り付ける工事が昼夜を通して行われた。
大きなドッグ用テントの中で、クリューはベネトと並んで工事の様子を眺めていた。
「のう、坊主」
「クリューだ」
「そうか、クリューか。いい名じゃな」
「爺っちゃん、ありがと」
「なんのなんの。それで、クリューや」
「ん? 何だい?」
「戦争で大事なことは何だか知っとるかの?」
「目の前の敵に勝ちゃあ、いいんじゃないの? 兵隊なんだから」
「ほう、そうかの?」
「オレは政治のこととかわかんねえし、偉くもないから戦争をどうこうできるわけじゃねえ。作戦なんて立てられねえし、だから目の前の敵をやっつけることだけ考えてりゃいいんじゃねえの?」
「・・・意外とわかっとるんじゃの」
「わからねえから、目の前に集中するだけだ」
「フォッフォッフォ~、面白い子じゃ」
「よせやい、オレなんか面白くも何ともねえよ」
「いいや、クリューは面白い子じゃ。何かを変えてくれるやもしれんの」
「オレに何かを変えられんのかな?」
「さあな、クリュー次第ではないかの?」
「オレ次第?」
「そうじゃ。じゃからクリュー・・・戦争なんかで死んではならん。死んだら、そこで終わりじゃ」
「爺っちゃん、戦争なんだから、誰かは死ぬよ」
「じゃが、クリューは死んではならん!」
「・・・わかった。死なねえように死ぬ気で頑張る」
「フォッフォッフォ~。じゃがのう、帝国には死んでも平気な『クローン転生』とやらが、あるらしいわ」
「クローン転生? 何だ、それ。どうやんだ?」
「さあな、ワシも知らん。金じゃあ買えんらしいがのう」
「・・・帝国か~」
「クリュー、大きくなったら帝国に行ってみると良いかもしれんぞ」




