見習いダイバー(1)
「誰だよ?『お前に教える戦い方なんかねえ』なんて言ったヤツ・・・俺だよ・・・」
マロウが46部隊本部テントの戦術解析コンソールに突っ伏して、頭を抱えていた。
見習いダイバーとなったクリューの教官となったマロウは、仲間の3Gとの編隊訓練や集団戦闘シミュレーションなどにクリューを参加させていた。結果は散々なもので、とても実戦に投入などできそうもない。クリューが死ぬだけならまだしも、味方まで巻き込み全滅の恐れすらある。
「・・・ったく、教えることだらけじゃねえか。教え方が悪いのか? いや、そもそもクラフターの実戦投入に無理があるのか?」
作業用3Gであるクラフターには、軍事用に必要な機能がほとんど備わっていない。ダイバーの感覚を強化するマシナリードーピングは無く、敵を補足し味方を識別する霊子レーダーも無ければ、味方との連携に必須な意思共有システムもない。戦術上、味方同士お互いに会話できる霊子通信は、クラフターには誰でも簡単に傍受できる一般用チャネルしかないので、戦場では使いようがない。
編隊や連携ができないのはクリューだけが原因ではないのだが、せっかく支給されたクラフターを使わないのは勿体ない。
後方からの援護射撃に徹すれば、勘のいいクリューなら味方に誤爆させることはないかもしれない。しかしクラフターには自動照準もなければ、そもそも射撃スキルが備わっていないのだ。さらに言えばクリューの性格上、敵との格闘戦を好む傾向にある。後ろに引っ込んでチマチマ射撃するなど性に合わないだろう。
かといってクラフターを他のダイバーに回し、クリューに軍事用3Gを与えるのは愚策だ。今や46部隊のダイバーの誰よりも、クリューはクラフターを使いこなしている。1対1であれば、クリューのクラフターは軍事用3Gと互角以上の戦いができるのだから。軍事用に慣れた他のダイバーでは、クラフターの軍事利用は不可能とも言えた。
「せめて、あの『紙一重野郎』が連携とは言わなくとも、意思疎通できりゃあな~・・・」
バカと天才は紙一重。
マロウが勝手にクリューに付けたあだ名である。「チビ」よりは昇格したのかしてないのか。
「待てよ?」
軍事用霊子通信による連携は、この司令テントも共有している。今ではほとんど使われることのない古典的な電波通信を指令室とクラフターで繋げてしまえば、多少のタイムラグはあっても意思疎通は可能ではないのか?
古典的な電波通信は「アマチュア無線」として、ごく少数の愛好家が存在する。
「そんな酔狂な趣味を持ったヤツ、ウチの部隊にいたっけか?」
仲間の個人的な趣味に興味はなかったが、マロウは一応当たってみることにした。




