第343話 崩れる建物と飛ぶ昼食
1人のスーツを着た若い女性が、台車を押しながら通路を歩いている。彼女は今年、入庁し現在は仕事を覚える為に様々な雑用をしている。
「いい匂い……私も食べたいな……」
台車に乗せられた幕の内弁当からは、良い匂いがしている。
カラカラっと音を立てながら、台車を応接室へ続く渡り廊下を運んでいる時だった。
ドン、ドンっと足元から突き上げる音が響く。
「今日の昼食は、金沢の旬の幸を……」
応接室で説明していた市長とレイを含めた全員もこの音と振動を感じる。
「一体何が……」
応接室の窓を市長が開け、外を伺う。
丁度、外には職員用の駐車場が見えた。
ズルズルドン、ドンっと嫌な音がし、駐車場が巨大な穴を開ける。止まっていた車は宙を舞いながら、巨大な穴に吸い込まれていく。
「な、なんと」
その穴はドンドン大きくなっていき、市役所の渡り廊下に迫る。渡り廊下を支える地面が無くなり、宙ぶらりんになる。
「不味い!通路に人がいる!」
まっ先に気が着いたのは、通路を見ていた神父。バキバキっと渡り廊下は嫌な音を立て傾く。
「キャーアアアア」
台車を運んでいた女性は腰が抜けたのか、その場にへたり込んでしまう。
「落ち着いて、今、助けに行くからな」
「遅いで神父さん、俺がいくぜ!」
助けに行こうとする神父の横をレイがバチバチと音を鳴らしながら通る。そう、レイはスキル【電気】を使い自分の神経を極限まで上昇させた。
〝この技、某ジャンプの念能力で使うキャラが居たよな?〝
〝生まれた時から電流浴びているからっていうキザキャラやなw〝
〝だんだん、現実と虚構が混じって来たなww〝
あっと言う間に、レイは女性の傍にやって来る。
「だ、大丈夫かな?」
「あ、ありがとう、あーー折角の幕の内が」
声を上げる女性の目線の先には、転がる台車がある。台車に置かれた幕の内からは、色とりどりの輪島名物が零れ落ちた。
〝この状況で弁当の心配をするかww〝
〝公爵令嬢と枢機卿の昼飯をぶちまけてしまたっんやぞ〝
〝↑状況を鑑みず文字にするとヤバくて草ww〝
「そんな事より、命大事だよ!」
「でも、どうやって、腰が引けて」
「これがあるじゃない?」
転がった台車を指さす。ぶちまけられていたお弁当を退けて女性を乗せる。
「あ、エビフライ、戴きます」
レイは唯一、幕の内弁当に残っていたエビフライを取ると口の中に入れた。
〝草wwこの状況でエビフライを食べるなww〝
〝鋼の心臓持ってそうやな……〝
〝勿体ない警察もこれにはニンマリ〝
『レイちゃん、急がないと崩れますわよ!』
「ルミ、いまから行くよ!しっかり掴まってね!」
女性が台車に掴まるのを見ると行き良く走り出す。後方では、べキベキっと嫌な音が響いてくる。
「ギリ、セーフ」
『ギリギリ、過ぎますわ……』
台車とレイが応接室に入ると同時に、後方の通路が捻じれ壊れていく。レイの目の前には、巨大な大空洞が口を開けている。
何を思ったのかレイは右手に着けていた時計を外し、空高く投げる。
「起動、時計鳥」
起動パスにより、時計はベルトの部分が羽になり時計の本体は鳥になり宙を飛んでいく。
『レイちゃん、あれってこの間、CASI〇さんから貸して貰った』
「女の子向けの時計型のお話し鳥だよ、まぁ俺のは特別製だけどね!」
そう、これはレイが案件の一環として、CASI〇さんから貸して貰った最新の時計。
この時計は、起動バスと共に、鳥型に変形し搭載されたAIが暇を持て余した女の子の愚痴に付き合ってくれるという機能が搭載がある。
本来は、それだけの機能。
〝特別製ってどんな機能があるんだろ?〝
〝気になって、夜しか寝られない〝
〝↑スヤスヤで草ww〝
「確か、防弾、防刃、防水、防塵、位置追跡機能と俺の周囲のデータをスパコンで解析しているんだけ?確か、女の子達の安全を守る為の機能を着けてるらしい」
位置追跡機能と周囲のデータの収集しスパコンで解析。歳場も行かない少女に一体何をしているだと思う人達もいるかもしれい。
だが、レイにとってはそんな事どうでも良いのだ。
〝レイちゃんの事が丸裸にされちゃう〝
〝人権侵害やろww〝
〝そ、そんな事許されるん?〝
「別に悪い事してないし、毎日、行くお菓子店や猫もふりスポットぐらいしか解析する対象ないけど良いけど良いのかなって思う……後、怪しい人達が自分の周りに来るとハイエ〇スで来て回収されているから安全かな?」
〝怪しい人達がハイエ〇スで回収されるww〝
〝周囲の環境をスパコンで解析ねぇ……何を解析したんですかぁ〝
〝意味が分かると怖い文章やめw〝
世界中で注目されているレイの周りには、各国のエージェントや色んな人間が寄って来る。
そんな人間達をこの時計は、スパコンで解析、エージェントがレイに接触する前に回収していくのだ。
レイにとっては、敵か味方しか無いので、この回収していく人たちが何者であろうと関係無いのだ。
「さて、鳥ちゃん!周囲の環境を調べておいでー!」
レイの放った鳥は、ぽっかりと穴が開いた空間の調査をしていく。
普段は菓子と猫と人間のデータがスパコンに送られていたが、今回は大量の地質データや写真が大量に送られCASI〇の用意したスパコンが落ち、企業回線としてサブスクリプションで契約してた「富岳」と「京」にデータを送り解析を始める。
「お腹減った」
レイが呟く。
さて、お昼ごはんはどうなるのか?
次回 公爵令嬢達の始めてのY〇SHINOYA




