第336話 この車の本気と管理者と使用者
【魔力と血液の接収により臨界点を突破、本来の機能を展開】
無機質な声が流れ、車が一瞬、ドクンと脈を打ち魔力が車を走る。5人の少女達と神父が座っていた周りが光ったと思いきや車内が大きな部屋に変わった。
大きな部屋には、6つの椅子がポツンと置かれ、そこに少女達と神父のみ座っている。
「わぁ、ルミちゃんすごいぜ!ルミちゃんの車と同じだね」
『そうですね……でも、なんか違いますね』
【最先端の魔導と科学の合わせた城へようこそ】
声と共に扉が開放され、レイは、興味深々に扉の外を伺う。
「カッコいい会議室?みたいのがある!」
左右には金の柱と葉っぱが蛇の様に絡まった模様の像が有り、中央には米国国旗が置かれていた。
そう、日本の首相や半島の大統領が演説したと話題になる米国下院議会会場。
それと全く同じ物が置かれている。
〝米国下院議会会場やんけ〝
〝なんで、あるんや?〝
〝意味が分からない〝
「なんで、あるんだろうね」
「それをお答えしましょう」
演説台の裏側から出て来たのは黒髪にワンサイドアップ、沢庵の様な眉、大きな蒼い瞳で背が低い女子高校の様な姿をした少女。
「私の名前は、雨天さつきです!さっき、マザーによってつくられた接触用のフレッシュゴーレムです」
「フレッシュゴーレム?」
「皆さんから接取した遺伝子情報を統合して、冷凍保管されていた卵子を受精させ高速成長させたのが私、つまりレイちゃんさんはママでありパパってことですね!」
先ほどのルミ、レイ、テルちゃんを刺した針から奪われた血液は瞬時に解析され、保管されていた卵子に受精、高速成長させられ接触用のデバイスとして、しずくは世に生を受けたのだ。
〝ふぁ、フレッシュゴーレム!人間だと……〝
〝動物では見た事あるけど人間は倫理の問題でまだ出来ていないと噂の……〝
〝生まれで数分しか経って居ないのに作るなんて……しゅごい〝
「で、この建物といいますか施設は米国がダンジョン災害でワシントンを放棄することになった場合に備えてワシントンの全ての機能を集約した物になります、こっちには……これがあります」
しずくと呼ばれる個体は別な扉を開ける。
「すげー、昔見たことがある宇宙センターの指令所とか銀河帝国の指令所みたい!」
レイは驚きの声が挙げる。
それもそのはず、多数の大型ディスプレイが置かれ色とりどりの線で示された戦況図や軍人達が映る立体映像が展開されているのだ。
「見えているのは、現在の米軍のダラスでの戦況図ですね」
「わぁ、本当だ……見る限りだと米軍押されていない?」
「レイさん、そうですね、囮の部隊を用意してDドッグをおびき寄せて横から殴るはずだったシュナイダー部隊がDキャットの攻撃を受けて壊滅していますね……」
ダラスの遥か上空からの人工衛星の映像と合わさった戦況図では、Dドッグをおびき寄せるはずの囮部隊が本体であるシュナイダー部隊を壊滅させたDキャットに包囲され全滅のしそうな状態に置かれている。
「助けてあげたいけど、どうにもならんよね……ここ日本だし……」
「ありますよーただ、これには条件があります」
「どんな条件だい?」
「使用者をきめて下さい、ここの施設の管理者は血を戴いた三人ですが施設の使用者は管理者以外から2人が選ばれます」
そう言いながら、しずくという名の個体は金と銀の公爵令嬢達を見る。
最初から、しずくの背後にいる本体のマザーは2人の少女を使用者にしたかったのだ。
一刻、一刻と時間が過ぎ戦場で米兵の命が失われようとしている。
そんな中で、聡明である11歳の少女達は、目の前で人が死ぬことがこのままでは確定する場面で使用者になるのが嫌だと言う事など出来る訳が無い。
「「使用者になります」」
「素晴らしい決断に感謝を……それでは彼等を救出しますね」
しずくが右手を挙げるとディスプレイの1つが変化し、無機質な倉庫が映し出される。
そこにはミサイルが並んでおり、多数のミサイルが発射され天井に当たる直前で天井が水の様に揺らめきミサイルが吸い込まれていく。
同時に、米軍兵士を追いかけるDドッグとDキャットの頭上に雨あられとミサイルが降り注ぎDキャットとDドッグを全滅させる。
「さて、皆さんにはこんな事よりも、もっと知って私を知って貰いたいので紹介しますね!」
助けた米軍兵士の事など興味ないとばかりに踵を返し、笑顔で少女達と神父を見るのであった。
この施設は、一体どんな機能を持って居るのか?
次回 この車の中は……




