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忍者の末裔は忍ばない ~ダンジョン産のアイテムで一般人が化け物みたいに強くなったから、俺も本気を出して良いらしい~  作者: 木塚 麻弥
第4章 新たな階層

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第52話

 

「さて。準備はいい?」


「おう!」

「はいっす」

「うん。今日も頑張ろうね!」


 蓮の言葉に颯と奏多、翠が応える。


 時刻は19時。

 彼らは新宿ダンジョンの91階層にいた。


 昨晩から本日の夕刻まで、蓮たちはスパを満喫した。後半は仮眠したり温泉に入るなどして体力の回復に努めたため、全員の顔がはつらつとしている。


「みなさん、こんばんは。シノヴァーズのレンです。今日は昨日に引き続き、新宿ダンジョン攻略を進めていきまーす」


 蓮は配信用ドローンに向かって挨拶と自己紹介、現在地の紹介を行った。


「今日は完全攻略したいな」


「でも何階層まであるか分かんないんで、無理は禁物っす」


「この階層から出るモンスターもまだ分かんないもんね」


 現在、彼らは90階層で中ボスを倒した後に移動できる91階層の階段付近セーフエリアにいた。ここから足を踏み出せばモンスターに襲われる可能性がある。


 まだシノヴァーズ以外に新宿ダンジョンの90階層ボス、シヴァを倒した攻略者パーティーがいないため、ここから先の情報もない。


「まぁ、こんなところで止まっていても仕方ないので、さっそく行きましょう。ハヤテ、いつもみたいに前衛を頼む」


「よっしゃ! サポートは任せた」


「「「任された」」」


 颯が先頭となり、シノヴァーズがセーフエリアから足を踏み出していった。



「これは……」

「広いなぁ」

「90階層より天井高いっすね」

「あぁ。てことは──」


 蓮がこのタイプのダンジョンで出現するモンスターの傾向を口にしようとした時、高速で彼らに接近するモノがあった。


「来るぞ! ワイバーンだ!」


 二本足と大きな翼を持つ飛竜、ワイバーン。日本でのモンスター分類上は、ドラゴンの劣等種とされている。


 ただ劣等種と侮ることは出来ない。

 ここはA級ダンジョン。その91階層。


 当然出てくるモンスターは強くなっている。


「ハヤテ、ガードを!」

「あいよっ!!」


 颯が大剣を構え、ワイバーンの突撃を防いだ。


 轟音が響き、衝撃波が広がる。それだけの衝突であったが、大剣を構えた颯はその場から一歩も下がらなかった。


 全てのエネルギーはワイバーンの頭部に集中し、トマトをコンクリートに向かって投げつけたかのように頭がグチャっと潰れた。配信画面で見れば赤色のキラキラしたエフェクトで表現されるが、リアルで見るとなかなかにグロい。


 とはいえ、ダンジョン内のモンスターは致命傷を負えばすぐ光の粒子となって消えていく。それを攻略者も分かっているので、基本的に誰もモンスターが死ぬ瞬間を凝視しようとはしない。──死に慣れている忍び以外は。


「消える前に見えた頭蓋は、眼窩《がんか》が大きかった」


「てことは視覚情報に頼ったモンスターっすね。俺は中脳が結構発達してるように思えたっす」


「じゃあ空間認識能力に長けてるってことかな。物陰に隠れながら行動しても見つかっちゃう可能性が高いね」


 蓮と奏多がそれぞれの見解を話し合う。


「お前ら、あの一瞬でそんなこと見てたの?」


「モンスターの体構造って、ファンタジーに思えて実は物理法則に忠実なことの方が多いんだ。現実にいる動植物の造りに近いこともあるし」


「だからちゃんと倒す瞬間も見とかないとダメってことっす」


「えっと。モンスターの特性が分かって、私たちはどうすればいいのかな?」


「目で見て獲物を補足し、物陰に隠れても無駄。つまり俺らは」


「全力でこのエリアを走り抜ける必要があるってことっす!」


 その時、10体を超えるワイバーンが蓮たちに襲い掛かってきた。


「ハヤテ! 全力で突っ切れ!!」


「了解!」


 颯は防御スキルを発動させ、大剣を盾にしながら前方へ強引に突き進んでいく。蓮と奏多は飛来するワイバーンの目に向けてクナイを投擲し、数を減らしていった。


「わ、私はどうすれば?」


「この程度の襲撃なら、スイの出番はまだ先かな。魔力を温存しておいて」


「りょーかいです!」


「レン、階段が見えた!」


「よしっ。そこまで走れぇぇ!!」


「「「うおぉぉぉぉ!」」」


 彼らの目的はダンジョンの踏破。

 

 戦って無駄に体力やアイテムを減らすより、ただ強引に突き進むだけで上の階層にいけるのであればそちらを優先する。



「ごぉぉぉる!」


 蓮たちは92階層へ上る階段付近のセーフエリアへと辿りついた。


「いぇーい!」

「91階層、突破っすね」

「みんな怪我してないよね?」


「「「だいじょーぶ」」」


 行動を共にする時間が長くなり、どう聞いたら互いがどんな反応をするか理解するようになった。そのため返事がぴったり揃うようになってきている。

 

「道中、見えたモンスターはドラゴン系ばかりだった」


「てことは100階層までそれ系って可能性高いっすね」


「私ちょっと聞いたことがあるんだけど、未踏破ダンジョンでドラゴン系のモンスターが出始めると、そこのボスがラスボスになることが多いんだって」


「俺も海外の配信者がそんなこと言ってるの聞いたな。ただ日本のダンジョンだと、あんまりあてはならないみたいだけど」


 国によってダンジョンで出現するモンスターが異なるというのは知られている。海外での法則が日本で適用されないこともあるのだ。


「でも次がラスボスって可能性を考えて進もう。俺、やりたいことがあるんだ」


「ん? やりたいことって、なんすか?」


「ボス部屋についてから言うね」


 蓮はニヤッと笑うと、92階層へ続く階段を登っていった。

 

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