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忍者の末裔は忍ばない ~ダンジョン産のアイテムで一般人が化け物みたいに強くなったから、俺も本気を出して良いらしい~  作者: 木塚 麻弥
第4章 新たな階層

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第48話 〈配信コメント欄〉

 

『赫灼(かくしゃく)彗星《すいせい》・レイ!!』


 紅蓮の閃光がボスを貫く。


〈うひょぉぉぉぉぉ!!〉

〈す、すげぇ……〉

〈待って。俺の知ってる魔法じゃない〉

〈発射台が300キロで走るとこうなるのか〉

〈赫灼彗星も確か600キロくらいだよな〉

〈うん。そんなもん〉

〈前に速度検証してるヤツがいたぞ〉

〈えっと、じゃあ合成速度は900km/h?〉

〈あのデカさでその速度は異常だな〉

〈でも音速を超える魔法もあるっしょ?〉

〈あるけどそーゆーのは弾が小さいんだよ〉

〈弾がでかいと威力は上がるけど速度が下がる〉

〈威力×速度=破壊力だからなぁ〉

〈正確には E=1/2mv^2 〉

〈そだね。運動エネルギーは速度の2乗に比例〉

〈魔法の威力上げるより速くした方が良いんだ〉

〈破壊係数とかも関係するけど、基本はそう〉


『はい、俺たちの勝ち!』


 蓮が翠を降ろして颯と奏多に勝利宣言するが、視聴者たちの興味は別のところに向かっていた。


〈ちょい待て。なんだ今の動き〉

〈意味の分からん動きで急停止したな〉

〈慣性どこいった〉

〈物理法則さーん、仕事してー!〉

〈300キロからの急停止とかアホやろ〉

〈どんな脚してんだよ……〉

〈それでもスイちゃん平気そう〉

〈レン凄いのか、スイが凄いのか〉

〈どっちもなんじゃね?〉


 実際に蓮は少し荒い止まり方をしている。それは翠の装備や彼女の耐性を見込んで調整した結果だった。


『勝負じゃないところでまたアレやろうね』


〈アレって、アレだよな〉

〈スイレン合体魔法〉

〈↑カッコいいなw〉

〈合体(意味深)〉

〈おいやめろwww〉

〈合体攻撃はロマンの塊〉

〈ところでアレをもっかいってことはさ〉

〈スイ様が再度、抱っこをご所望です!〉

〈ε=ε=ε=ヾ(*。>ω<)ノキャー〉

〈もう実質『抱いて』って言ってるだろw〉

〈スイちゃん大胆(・∀・)ニヤニヤ〉



『あ、さっきのボス、名前を付けれる』


 それは新たなモンスターをはじめて討伐した時に得られる命名権。このボスフロアに来るまでに出てきた雑魚モンスターの多くは、別のダンジョンでも出現していたので命名権はほとんど得られなかった。ただ僅かに得られた命名権について蓮たちは後日ゆっくり考えることにしている。


『雑魚モンスターの命名は保留してるけど、さっきのボスは今ここで命名しちゃおっか。たくさんの人がこの配信見てくれてるし』


『そうだな』

『賛成っす』

『異議なーし!』


『てことで視聴者の皆さん。候補をあげて下さい』


〈レンって、俺らに任せるタイプ?〉

〈深淵では自分で考えてたぞ〉

〈じゃあ視聴者サービスか!〉

〈いいねぇ。配信に慣れてきてる〉

〈ただめんどいだけじゃね?w〉

〈変なの付けて炎上するのも嫌だし〉

〈配信コメントから選べば責任転嫁できる〉

〈なるほど。策士すぐるwwww〉


〈さぁ、案を考えよう〉

〈はいはい! ヘカトンケイル!〉

〈なんそれ〉

〈百の手と五十の頭を持つ巨人〉

〈それじゃ手が多すぎじゃね?〉

〈なら四腕弓士(テトラアーチャー)〉

〈それっぽいの出てきた!〉

〈中華系のモンスターみたいだな〉

〈もう少しボス感が欲しいところ〉

〈ボスっぽくて、多腕か〉

〈神様って多腕のイメージ〉

〈千手観音とか?〉

〈弓使う神様って何がいる?〉

〈日本神話だと愛染明王、天忍日命とか〉

〈ギリシャ神話ならアポロン、アルテミス〉

〈愛染明王は腕が6本だな〉

〈シヴァ、ラーマ、カーマも弓を使う〉

〈シヴァって多腕だよね〉

〈うん。破壊の弓の使い手〉

〈シヴァいいじゃん〉


『シヴァいいじゃん』


 視聴者と蓮の感想がリンクする。


『A級ダンジョンの90階層なら、神様の名前を付けてもいいですよね。かなり強かったと思うし』


〈君らは一撃で倒しちゃったけどね〉

〈でもあの攻撃を躱して接近はキツそう〉

〈レンたちが軽く流すから勘違いするけど〉

〈あんなん普通は無理だって〉

〈いきなり飛んでくる矢とか怖すぎ〉

〈強敵であることは間違いないな〉


『特に否定コメントなさそうなんで、90階層のボスの名前はシヴァにしまーす』


 そう言って蓮が登録作業を進める。


〈シヴァね( ..)φメモメモ〉

〈ところで今日はこのあとどうすんの?〉

〈踏破するって言ってたけど……〉

〈どう見ても先がありそうだね〉


 シヴァを倒した後、少し離れた場所に上層への階段が現れていた。


『ほんとは最後で行きたかったんですが、今日はここまでにしようかと』


『俺はその言葉を聞いてちょっと安心した』


『私も、少し疲れちゃったかな』


『無理すべきではないっすね』


 彼らは50階層から入り、破竹の勢いでこの90階層まで来ていた。とはいえこの先ダンジョンがどこまで拡張されているか分からない。終わりが分からない作業を継続し続けるというのは、精神的にかなり負担がかかる。


 忍びである蓮と奏多は問題ない。彼らはいつ終わるとも分からない任務を遂行する必要があるので、それに慣れるための訓練を積んでいる。強靭な精神力こそ、忍び耐える者──つまり忍者の証であった。


 蓮に忍びとなる力の基礎を与えられた颯も、彼らの仲間になったばかりの翠も、精神的には一般人と大きく変わらない。今は、まだ──



『それじゃ帰りまーす。今日はご視聴いただき、ありがとうございました。明日もこのダンジョンを攻略して行く予定です。それからえっと』


『『『ブースへの登録をお願いします!』』』


『そう、それ! シノヴァーズを今後もよろしくお願いします。ではでは~』


 蓮が帰還用のポータルを起動させ、中に入って行く。颯たちもそれに続き、翠が視聴者たちに向けてバイバイと手を振ったところで配信が終了した。

 

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