第46話 〈配信コメント欄〉
『某が姫様を完璧に守ってみせましょう』
〈いや、かっこよ〉
〈めちゃくちゃ良い!!〉
〈スイちゃん、いいなぁ〉
〈私もレン君にそれ言われたい!〉
〈普通はサムい台詞なんだけどね〉
〈実力ある奴って何言っても絵になるな〉
〈3連射を簡単に弾いちゃうんだもん〉
〈(・∀・)ニヤニヤ〉
〈マジこいつ見てて面白れぇ〉
〈俺もスイちゃん守りたい!〉
〈Tier 1を……、守る?〉
〈それ出来るの、レンくらいなんよw〉
〈おまいらじゃ無理〉
〈ところでハヤカナペアはどうなった?〉
ダンジョン管理法では、ダンジョンに入る際はひとり1台の配信用ドローン所持が義務つけられている。そして目視できる距離にいる者は同じグループで活動中とみなし、グループ単位で配信をすれば良い。なお、良い絵を撮るためにパーティーメンバー全員分のドローンで配信している攻略者もいる。
同じパーティーであれば、複数台のドローンを使用していても配信は同じブースで行われる。その配信をドローンごとに画面を分けて視聴するか、どれか1台を選択して大画面で見るなど選択が可能だ。
シノヴァーズでは現在、蓮と翠のペアを映し出すドローンと、颯と奏多を映し出すドローンの2台体制で運用していた。
──***──
蓮たちが少し足を止めている時、颯と奏多は全速力でボスに迫っていた。
〈こいつらなんで全力で走ってんの?〉
〈遠距離持ちにはそれが最適解〉
〈弓使いは基本、近接に弱いからな〉
〈そそ、近づいた方が安全なの〉
〈それは分かるけどさ……〉
ボスに近づくにつれ、打ち込まれる矢の威力も上昇している。
『──ぐっ! いてて。手が少し痺れたっす』
『カナタ、大丈夫? 変わろうか?』
『いや、もう少しだけ俺が前をやるっす。ハヤテのオートガードスキルは発動時に足が止まるから、そのタイミングで本命の攻撃を打ち込まれる可能性もあるっす。やるならもっと接近してからの方が助かるっすね』
『そっか。じゃあ、もう少し頑張ってくれ』
『はいっす!』
〈なかなか良いコンビだな〉
〈うんうん〉
〈レンハヤだけじゃなくハヤカナもあり〉
〈カナタ、仕草がちょっと可愛いもんね〉
〈そわそわ(〃ω〃)〉
〈カナハヤも良きと思いませんか!?〉
〈ちっちゃい方が攻めとか最高〉
〈↑の人らとは美味い酒が飲めそうです〉
〈ちなみに確認だけどカナタって男だよな?〉
〈声は中性的な感じ〉
〈俺って言ってるし、装備は男物だな〉
〈えーっと。てことは……〉
〈┌(┌^o^)┐ホモォ…〉
〈最近はブロマンスって言うんですよ〉
〈でもその先に進めば┌(┌^o^)┐だろw〉
奏多が男装を止めないせいで配信コメント欄が混沌と化していた。
──***──
〈今更だけど、配信者たちの高速移動を完璧に追いかけてるドローンって凄いな〉
蓮と翠の配信側で、そんな疑問を持つ視聴者がいた。
〈配信用ドローンの最高速度は300km/h〉
〈マジ? そんな速いの?〉
〈しかも急制動するために抑えてその速度〉
〈それで攻略者の動きを完璧に撮れるのか〉
〈ちなみにドローン制御は攻略者が設定する〉
〈設定が下手だと配信は見れたもんじゃないぞ〉
〈その点、シノヴァーズの設定は凄いな〉
ピローン
軽快な音ともに赤文字でコメントが書き込まれる。
〈レン君にドローン制御を叩き込んだ師匠は俺ね〉
それはとあるインフルエンサーの書き込み。
〈でたハルヒコww〉
〈レンの最古参ファンが来たぞぉー〉
〈最古参ってさぁ……〉
〈自分でファンサイト起ち上げんのズルい〉
〈んじゃお前らもやれよ〉
〈サーバー管理費いくらかかると思ってんの〉
〈インフラと思って大人しく会員料金払え〉
〈それな〉
〈ドローン制御はハルヒコ仕込みか〉
〈どおりで見やすいわけだ〉
〈シノヴァーズってもう大手と遜色ないな〉
最強クラスの攻略者が複数人いて、その配信技術はフォロワー30万人のダンジョン配信解説系インフルエンサーが指導したもの。
あと彼らに足りないのは──
〈戦力とか配信技術は申し分ないよ〉
〈最小限の動きで対処するのは凄い〉
〈でもなぁ〉
〈もうちょっと派手な動きが欲しいよね〉
〈そう、それ!!〉
〈贅沢な望みだってことは分かってるけどな〉
〈もっと出来るだろって思っちゃうんだよ〉
その書き込みを蓮は見ていた。
そして颯に教えてもらった技術を思い出す。
『では、こんなのはどうでしょうか』
再び超高速の矢が飛来した。
今度はタイミングをずらした四射。
蓮は一射目をクナイで弾きつつ、身体を回転させる。本来腕の動きだけで充分対処できるものを、あえて身体全体を飛躍させた。
回転しながら二射目を弾き飛ばし、着地と共に前方に踏み出す。
踏み出した勢いのまま、飛んできた三射目に向かって行く。そして篦と呼ばれる矢の軸の部分を掴むと、矢の勢いを殺さぬように半回転して飛来してきた方角へと放った。それが次に飛んできた四射目と空中で激突し、ふたつの矢が粉々に砕け散った。
〈うおぉぉぉぉ! なんだ今の!?〉
〈回転技かっけぇ!!〉
〈いやいやそれより最後の!〉
〈飛んできた矢を掴みにいった!?〉
〈そんでそれを投げて別の矢に当てた?〉
〈い、意味が分かんねぇ〉
〈どんな動体視力とコントロールだよ〉
〈えっ、待って。蓮って人間だよね?〉
〈攻略者って超人だけど、それとも別次元〉
〈矢を掴みに行く変態は初めて見たww〉
この配信コメント欄を見て、蓮は視聴者たちが満足してくれたと判断した。
『スイ、そろそろ行こう。のんびりしてたらハヤテたちに負けちゃう』
『うん。でも私、これ以上速くは走れないかも』
『じゃあこうしよう』
そう言って翠を蓮が抱きかかえた。
『え、ちょ。レン君!?』
『俺がボスを探して走る。見つけたら合図するから、魔法の詠唱をはじめて』
赤面する翠。そんな彼女を全く気にせず、蓮は走り出した。
〈ふぉぉぉぉぉぉ!?〉
〈スイちゃんをお姫様だっこだと!?〉
〈ここここいつら、合体しやがった!!〉
〈合体wwww〉
〈まぁ、確かにそうではある(笑)〉
〈最速のレンと最高攻撃力のスイちゃんか〉
〈最強の戦車だな〉
〈ステルス爆撃機じゃね?〉
〈あー。そっちかもww〉
〈マジで速いじゃん〉
〈ドローンがちょっと離されてるぅぅ!〉
〈えっと、300km/h出せるのでは?〉
〈これ大丈夫? スイ、生きてる?〉
翠が身に着ける伝説級装備の性能をもってすれば、300km/hで高速移動するのは大した問題ではない。問題があるとすれば、蓮に抱えられた状態であるということ。




