第41話
風魔 蓮と枢木 颯、沙霧 奏多、北条 翠の4名は、新宿ダンジョン内を激走していた。
先頭を行くのは颯、続いて奏多。翠が3番手となり、蓮が殿を務めるという隊列で進んでいる。
「翠、強敵が来るっす! 右前方の通路から、あと4秒後に」
「りょーかい!」
走りながら魔力を放出し、無詠唱で炎魔法を放つ。無詠唱と言ってもS級最強格の攻撃である。危険度A級のモンスターの大半は、一撃で消し炭と化していった。
このように強いモンスターの気配を奏多が感じ取り、翠が遠距離魔法で排除していく。その攻撃を避けたり耐えたモンスターには奏多が小刀を投擲して視覚を奪い、さらに余裕があれば四肢にダメージを与える。そして颯が走りながら大剣で止めを刺していく。
誰も足を止めず、倒したモンスターから素材も回収しない。
また前の3名は進行方向の妨げとなる敵のみを攻撃対象としていた。ダンジョン内で激しく戦闘すれば、音につられてエリア外のモンスターも襲ってくることがある。それらは隊列の両サイドから、もしくは背後から追いかけてくることになるが、前を走る颯たちはそれらを一切気にしない。
風魔 蓮がたったひとりで、左右と背後から迫るモンスターを全て対処してくれるからだ。更に彼は先頭を行く颯に進行方向の指示まで出していた。
「颯、その先は右な」
「おっけー!」
蓮は80階層まであったこのダンジョンの全フロアマップを記憶している。
ここは新宿ダンジョンの50階層。ダンジョンのアップグレードが行われたというが、出現モンスターやダンジョンのマップは変わっていない。だから彼らは迷わず突き進める。
「よし、見えた! ボス部屋だ。あの付近のエリアに入れば一休み出来るぞ」
「一切止まらずに来ちゃったけど……。君ら体力凄いな」
「颯だって、そんなデカい剣持って走り続けてるじゃないっすか」
「運動量も私たちの中では颯君が一番多いね」
「蓮に無茶ぶりされることが多いって気づいてさ。体力増強系のアイテム作っといたんだよ。マジで正解だったわ」
颯が身に着ける体力増強指輪の上位互換品を翠も装着している。そして蓮と奏多は忍びとして鍛え上げた己の心肺機能で走ってきた。
「そんでレン、この先どうする? 一旦止まって休憩する?」
「んー。みんなが休憩なしでもOKなら、このまま行っちゃおうかと」
「ここ一応A級ダンジョンの50階層だぞ」
「普通は中ボスでも装備やアイテムを整えるっす」
「普通はそうだからこそ、立ち止まらない方が面白いんじゃね?」
「……なるほど。なら俺は大丈夫かな」
「同じくっす」
「私も大丈夫だよ」
「よし! それじゃこのままレッツゴー!!」
蓮たちはそのまま走り続け、中ボス部屋に突撃した。
50階層の中ボスはヘカトンケイルという名前の巨人。落石かと見間違うほど大きな拳で攻撃してくる。物理系のパーティーで相手するのはかなり厳しい強敵だ。
「焦熱極星・ノヴァ!」
北条 翠の岩をも蒸発させる極大魔法で、ヘカトンケイルは反撃の間もなく消滅した。
「はい、次に行くよ!」
ここはただの通過点。そう言わんばかりに蓮は60階層へのポータルを起動した。
──***──
60階層の中ボス、アーバンスパイダー。
鉄骨のような硬度と、一度触れたら引きはがすには皮膚をはがすしかないほど強力な粘着力を持った糸を張り巡らせた巣で獲物を待ち構える。更に隠密行動に長けた忍びの歩法でも察知してしまう振動感知能力を有する。
「颯、見てて。コイツの糸を切るにはコツがある」
そう言って鋼の強度の糸をクナイ型スコップでスパスパ斬っていく蓮。彼はそのままアーバンスパイダーに接近すると、反撃をものともせずその巨体を細切れにした。
「よし、次!」
蓮が70階層へのポータルを起動した。
──***──
70階層、中ボスはツインヘッドレックス。
巨大な恐竜で、右頭が火炎を。左頭が電撃を吐く。また魔法を無効化する対魔鱗を持つため、魔法使いでは倒すことが困難な中ボスである。
「名称は対魔鱗なのに、斬撃にも耐性がある」
「じゃあどうすんだよ?」
「コイツはこれで倒すんすよ──せいっ!!」
奏多がレックスに触れて放った魄勁は、その心臓に直接ダメージを与え、一撃で戦闘不能にした。
アーバンスパイダーも、ツインヘッドレックスも。本来なら10階層分の雑魚モンスターがまとめて襲ってくるような強さが追加されている。
それでもシノヴァーズの歩みを止めるには至らなかった。
「よし、次に進もう!」
一切躊躇せず、蓮は80階層へのポータルを起動した。




