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忍者の末裔は忍ばない  作者: 木塚 麻弥
第3章 忍者と主君

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第40話 清水 碧

 

『スイが抜けちゃうの寂しい』


『えー! じゃあ、やっぱりずっとシノヴァーズにいます!』


 配信で蓮と翠の会話を聞いていたひとりの女性。彼女は翠の言葉を聞き、とても悲し気な目をした。


 彼女の名前は清水(しみず) (みどり)北条(ほうじょう) (すい)が所属していたS級攻略者パーティー、アークナイツのリーダーである。


「……そっかぁ。スイちゃん、信頼できる仲間を見つけたんだね。おめでと」


 悲しみを抑え、翠の門出を祝おうと精一杯の笑顔で配信画面に笑いかける。


 その時、彼女のスマホが鳴った。

 少し悩む素振りを見せた後、彼女は電話に出る。


「はい、清水です」


『ミドリさん! 配信見てますか!? 最近噂のシノヴァーズってパーティーの配信です! そこにスイちゃんが出てるんですけど、ウチを脱退するって言ってます!』


 電話口は男性だった。彼はアークナイツのサブリーダー、瑠偉るい。長年、碧を支えてくれた信頼できる部下であり、彼女とともに翠の成長を見守ってきた仲間だ。


「見てたよ。スイちゃんが初めて、自分の意思をはっきりと伝えるのをね」


『……じゃあ、彼女の脱退を認めるんですか?』


「戦力が大幅ダウンしちゃうね。もしかしたら私たち、S級パーティーじゃなくなっちゃうかも」


『俺はそんなことを言ってるんじゃなくて! お、俺は彼女のこと、大切な仲間だと思ってました。ミドリさんが彼女のことを自分の娘みたいに思ってたことも知ってます。だから、だからそんな簡単に諦めて良いんですか!?』


「あはは。ほんとの娘だったら、危険なダンジョンなんかに連れていかないよ」


 自嘲するような言葉を吐き、彼女の瞳がより一層暗くなる。



「ねぇ、知ってる? スイちゃんは私たちと一緒にダンジョン攻略する時、一瞬も気を抜いたことがないの。彼女は常に全方位を警戒していた」


『それは……、はい。なんとなく気付いてました』


「ルイ君は今、彼女たちの配信を見てるんだよね。どうかな。スイちゃんの様子」


『前だけを見てます。後ろを振り返りもしない』


 アークナイツという大規模パーティーのサブリーダーであった瑠偉は、全体の状況を把握するため部隊の後方に配置されていた。その彼はダンジョン攻略中、後ろを振り返る翠と良く目があったのだ。


「分かるよね。私たちとシノヴァーズのレン君じゃ、勝負にならないんだよ。あの北条(ほうじょう) (すい)が完全に信頼して背中を任せてる。レン君が近くにいる時は周囲の警戒もしてない。だから、もう無理なんだよ」


 レンという配信者が話題になっていることは知っていた。その配信動画を見て、いつかはポーターとして雇ってみたいと考えていたほどだ。しかし彼が特別指定でポーターをしていて、今年ダンジョン攻略者育成機関に入学するという情報を知った時からは、言葉に出来ない嫌な予感がしていた。


 翠と同じ年齢。攻略者としても深淵アビス1階層をソロで踏破してしまうほど優秀ならば、入学する先は富嶽学園になるだろう。それも翠と同じ。


 翠と蓮は必ず出会う。

 出会えば強者同士惹かれ合うはず。


 そんな予想もしていた。しかし清水(しみず) (みどり)は、翠が富嶽学園に入学することを許可した。


「私ね、実はこうなるんじゃないかなーって思ってたんだ。というか、こうなることを心のどこかで期待してたのかも」


『ミドリさん……』


「彼女には私たちアークナイツっていうパーティーは小さすぎたんだね」


『俺は、諦めませんよ』


「私はリーダーとして、スイちゃんを引き留めてほしくないな」


『なに言ってるんですか。違いますよ。俺はミドリさんがスイちゃんと一緒にダンジョン攻略できる未来を諦めないっていう意味で言ったんです』


「……え?」


『ウチに戻ってこないなら、俺たちがあっちに行きましょうよ。彼らはまだ4人だけなんです。本格的にダンジョン攻略していくなら、サポートメンバーは必然的に増えます。俺たちアークナイツは、それが国内最高水準で出来るはずです』


「なるほど。こっちに引き戻すんじゃなくて、手を組むわけね」


『そうです。もちろん他のメンバーにも意見を聞いてからになりますが』


 碧は瑠偉から、そんな提案をされるとは思っていなかった。彼はアークナイツのサブリーダーであることに誇りを持っているように見えていたからだ。


「まさかルイ君からアークナイツの身売り発言が出るとはね」


『そう聞こえました? まぁ俺はミドリさんの右腕でありたいって思ってるだけなので、ぶっちゃけ貴女が笑ってくれてれば何でもいいんです』


「おっと。それってプロポーズかな?」


『茶化さないでください。それはいつか、俺がミドリさんより強くなれた時にしますから』


「ふふっ。期待してまってるよぉ!」


 闇に沈んでいた碧の瞳に光が戻っていた。



「……さて、それじゃ動きだそっか」


『まずなにからやりますか?』


「仲間の説得だね。ルイ君、任せていい?」


『はい。ミドリさんは何を?』


「私はレン君やスイちゃんたちをサポートするための準備かな。これだけのことが出来るよって、大人の力をアピールしないとね! まずはダンジョン管理局にいる妹とおじいちゃんに相談してみるつもり」

 

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