第33話 〈配信コメント欄〉
「──ってことで俺たちは今日から、シノヴァーズってパーティー名で活動を開始します。視聴者登録よろしくお願いします」
「お願いしまーす!」
「よろしくっす!」
新宿ダンジョンの1階層。蓮がドローンに向かって蓮が手を振りながらパーティー名が決定したことを視聴者たちに伝えた。
もとはシノバーズという名前にしようとしていたが、『バ』を『ヴァ』にした方がカッコイイという颯の提案が受け入れられ、シノヴァーズになった。
〈シノヴァーズ、かっこいいね〉
〈厨二っぽいけどなww〉
〈攻略配信のパーティーってどこもそうだろ〉
〈3人でやっていくんだ。頑張って!〉
〈ちなみに名前の意味は?〉
〈どんな意味なのが気になるぅ〉
「え、意味? あっと、それは……」
忍者である自分が忍ぶのを止めたからシノヴァーズにしたと配信で素直に言ってしまってよいのかと、流石の蓮も躊躇した。
なお、この配信は既に1万人以上が視聴している。それだけの人数が見ていれば、勝手に配信者の行動や思考を推測する考察厨が現れる。
〈シノヴァーズ、スペルはSynovasかな。Synは『共に』とか『統合』って意味、んで Novasは 新星たち。つまり『共に輝く新星たち』ってことかな〉
〈おぉぉぉ! かっけぇ〉
〈カッコいいじゃん!!〉
〈いいね〉
〈意味も含めるとより良い響きに思える!〉
〈シノヴァーズ、良いねぇ〉
その勝手な解釈に蓮は乗っかることにした。
「はい。そうなんです。俺たちはこれから未踏破ダンジョンにどんどん挑戦していきます。日本のダンジョン踏破率を引き上げてみせます。そういう新星になることを目指すんで、ぜひシノヴァーズを推してくださいねー!」
〈考察厨に乗りやがったww〉
〈強けりゃなんでもおっけぇーい!〉
〈うん。言っちゃえばそれが全て〉
〈めちゃくちゃ推します!!〉
〈君ら期待値高いから。マジ頑張れ〉
〈でもひとりは魔法職欲しくね?〉
〈あー、それな〉
〈全員物理特化だもん〉
〈物理耐性強い敵出たらピンチやぞ〉
先日の配信で視聴者たちは、蓮たち3人が全員物理系の戦闘職であることを知っていた。そしてこのコメントを見て、歓喜する女性視聴者がひとり。
〈えっ、えっ! 魔法職要りますか!? 私、魔法職です! 参加したいです!!〉
〈必死だなwww〉
〈ちょっとガチすぎてひくわー〉
〈参加したいのは絶対に君だけじゃないよ〉
〈はいはい! 私も参加したい!〉
〈私もレン君たちに同行したいなっ〉
〈B級だけど広範囲殲滅魔法が使えます!〉
〈俺はA級の魔法職。参加してやっても良い〉
〈マジかよ。凄い人が立候補するやん〉
「ハヤテ、カナタも見てよ。魔法職で俺らのパーティーに入りたいって人が、こんなにもたくさんいる」
「まぁ、俺らそこそこ強いしな」
「期待してもらえるのは嬉しいっすね」
ピローン
軽快な音ともに、とあるコメントが赤く目立つように表示される。それは配信者に対して1万円以上の高額投げ銭をした時の挙動。
〈私、めっちゃ強い魔法使いです。最強です。私を誘ってください!〉
それはさきほども書き込んでいた女性視聴者だった。蓮たちにアピールするために、彼女が課金したということ。ただそれには理解できない点があった。
「うぉ! 投げ銭だ、もらったのはじめて!」
ダンジョン配信オタクの颯は目を輝かせて初体験に喜んだ。
「でもなんでもう投げ銭できるの? 俺が配信登録してからの日数と、視聴登録者数が規定を超えたから収益化申請を一昨日出したばっかなのに」
颯は理由を知っていたが、彼は投げ銭が送られてきた画面のスクショや、送ってくれた人のプロフィールを見に行くので忙しそうだた。彼に代わり、博識な視聴者たちが蓮の疑問への回答を書き込む。
〈この配信サイトが認めた公認配信者だな〉
〈公認配信者なら誰にでも投げ銭出来る〉
〈そんなこと滅多にないけど〉
〈迷惑がられることもあるから〉
収益化申請が通っていないということは、収益を振り込むための口座などの情報もまだ登録されていないということ。そんな配信者へ強引に投げ銭するというのは、迷惑行為と受け取られてしまう。
「へぇ。公認配信者さん。ちょっと前にハルヒコさんが言ってたやつですね」
〈待って。この人プラチナバッジついてる〉
〈プラチナってことはA級以上……〉
〈しかも最強を自負してる〉
〈S級攻略者の可能性もあるってこと!?〉
「な、なんか凄い人が参加希望を出してくれたみたいですね」
蓮はのんきにそんなことを呟くが、この時点で颯と奏多は投げ銭をした女性視聴者が誰なのか予想がついていた。
人心掌握の術も使える忍者なのに、何故かこういうことに鈍い蓮。彼にはかねてから考えていたことがあり、それによって問題発言をしてしまう。
「せっかく投げ銭してくれたのに、ごめんなさい。A級以上の魔法使いさんであってもパーティーに参加していただくことはできません。俺たちはもう、仲間に入ってもらう魔法使いさんを決めているんです」
この言葉は、参加を熱望したS級最強魔法使いの心に大きなダメージを与えた。




