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忍者の末裔は忍ばない  作者: 木塚 麻弥
第3章 忍者と主君

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第31話

 

「……仲間と一緒にダンジョン攻略するの、けっこう楽しかったな」


 昨夜、俺は颯と沙霧さんと一緒に新宿ダンジョンで攻略配信をした。それが思っていた以上に楽しく、朝起きた時につい感想が口から漏れた。


 単独ソロ深淵アビスダンジョンに入って、討伐記録のないモンスター相手に無双してしまうのも爽快感があった。コメント欄の反応も楽しめた。ただそれ以上に仲間とあれこれ話しながらダンジョン攻略していくのが楽しいと気づいてしまった。


 仲間がいると、倒したモンスターから得られる素材やアイテムを分配しなきゃいけないから、稼げる金額が減ってしまうというデメリットがある。ただ俺個人としてはそのデメリットを無視してでも、颯たちと一緒にダンジョン攻略したいと思うようになっていた。


 忍びとして、ずっとひとりで戦ってきた反動かな?


 颯に指示を出しながら戦うのは面白い。彼は成長が早く、何か課題があっても俺の指摘を聞いてすぐ修正してくれる。


 沙霧さんは流石忍者って感じ。たまに危なっかしい所もあるけど、少なくともA級以下のモンスターに後れを取ることはなさそう。


 正直、颯も沙霧さんも俺が望むような戦力じゃない。まだふたりを連れて深淵にはいけない。ただ、それでも良いと思う俺がいる。


 いつか一緒に深淵攻略に行けるよう、ふたりにはもっと強くなってもらいたい。



「でも土日までダンジョン攻略に付き合ってくれないよなぁ……」


 平日の昼間はダンジョン攻略の講義、たまに実習。夜は学園を抜け出してリアルダンジョン攻略。そんな数日を過ごしてきて、颯はかなり疲れてるはず。沙霧さんに至っては半ば強制的にパーティーに入れたわけだし。


 ……よし。今日はひとりで新宿ダンジョン攻略の続きに行こう。


 土日になったら深淵の2階層を攻略してやろうと考えていたんだけど、その熱が冷めてしまった。


 俺が颯とふたりで10階層まで。その後、沙霧さんを加えた3人で20階層まで攻略した新宿ダンジョンは難易度がA級という評価のダンジョン。80階層にいるボスを倒して完全攻略しても、あまり話題にならない。


 だけど今の俺は超高難易度ダンジョンにソロで挑むより、颯たちと一緒に新宿ダンジョンの20階層ボスを倒した時の興奮の方が心地良かったように思えてしまう。


 また平日の夜、ふたりを誘ってみよう。



 朝飯を食べ、ダンジョン攻略の準備をした。


 俺は小型の武器やアイテムしか持たないから、ほとんどアイテムポーチの中に納まっている。いつもしっかり手入れしてからポーチにしまうので、準備にはあまり時間がかからないんだ。


「それじゃ、いきますか」


 寮の扉を開ける。


「蓮、おはよー!」


 俺の部屋の右隣の扉が開いて颯が出てきた。


「おはようっす」


 左隣の扉が開いて沙霧さんが出てきた。ちなみに彼女は今後も男装を続けることになった。颯は沙霧さんが女子だってまだ知らない。


「ふたりとも、おはよ」


 タイミングが奇跡すぎる。というかふたりとも、何故かダンジョン攻略に行くような装備を身に着けていた。


「やっぱり思った通りっす。蓮君なら土曜日もダンジョンに行くって」


「蓮、お前ひとりで新宿ダンジョンの攻略度を上げようとしてただろ? なんで俺らを誘わねーんだよ」


「そ、そうだけど……。ごめん、土曜日くらいはお休みしたいかなって」


「そりゃあ、多少は休みたいってのが本音っす」


「でも()()()()見ちゃったらなぁ」


 そう言って颯が俺にスマホの画面を見せてきた。それは昨晩、俺たち3人が渋谷のダンジョンを激走しながらモンスターをなぎ倒し、タイムアタックさながらの勢いで20階層まで到達するまでの動画のハイライトをまとめたものだった。


「これ、たった一晩で再生数が300万超えっす!」


「昨日の配信の視聴者さんが作ってくれたみたいなんだけど、俺らのカッコいい戦闘シーンがすげぇ良い感じで編集されてんの。ヤバくね?」


「BGMもこの動画のためにオリジナルで作ってくれたみたいっす。ここまでしてもらっちゃうと、流石にアガるっすよ!」


 興奮が収まらない様子のふたり。


 しまった、チェックし忘れてた……。

 今すぐエゴサしたい。

 

「おい、蓮。なに帰ろうとしてんだよ」


「ちょっと部屋でエゴサーチしようかなと」


「んなことやってる場合じゃないっす。今日も新宿ダンジョン行くっすよ!」


「そうそう。お前がひとりで行っちゃうんじゃないかって思って、俺なんか6時くらいから玄関で待機してたんだからな」


「同じくっす」


「えっ」


 今9時だぞ。3時間もなにしてんだよ。 

 メッセージアプリで連絡すればいいだろ。


 ……俺たちはもう、仲間なんだから。



「わかった。それじゃ一緒に行こう」


「よしっ」

「やったっす!」


「あとこれからは普通に連絡してくれればいいから。昨日、連絡先交換したよな」


「え、でもそれは……」

「自分から誘うのは、少し厳しいっす」


 お前らコミュ障か?


「蓮はグイグイ引っ張ってってくれるから一緒にいて楽なんだよな。俺、委員長タイプってよく言われるけど、成績良くするために無理してるだけだから」


「俺は目立つのがあんまり好きじゃないっす。でも蓮に無理やり連れていかれるのは、そんなに悪い気はしてないっす」


 ほーん。

 君たちそういう人種だったの。


「おっけー。それじゃ正式にパーティーを結成しよう。んで、俺がそれのリーダーってことで良い?」


「良い」

「もちろんオケっす」


「あざす。せっかくだからパーティー名とか考えちゃおっか」


「蓮に任せる」

「俺はセンスないっす」


 主体性ないやつらだなー。

 だったら好きにやらせてもらう。


「シノバーズ、にしようと思う」


「忍ばず? あぁ、俺が前に忍ぶなって言ったからか」


「くふっ。お、俺は良いと思うっす」


 沙霧さんは気付いたな。

 漢字で書くなら『不忍』だ。



「それじゃ改めて。シノバーズ、新宿ダンジョンへ出撃!」


「おう!」

「御意っす!」

 

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