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忍者の末裔は忍ばない  作者: 木塚 麻弥
第2章 富嶽学園

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第27話 〈配信コメント欄〉

 

 その日の22時頃。

 レンのブースで配信が始まった。


〈来たきたキタ――(゜∀゜)――!!〉

〈最強ポーター、レンの配信です!〉

〈今はちゃんと攻略者だぞ〉

〈そそ。もうポーターじゃない〉

〈こまけーなw〉

〈待ってたよぉ!!〉

〈SNSとかやってないの? 事前告知欲しい〉

〈それな。すぐ見に来たいからやってよ〉


 既に視聴者数は5千人を超え、配信のコメント欄は大いに盛り上がっている。


 そんな中、異変に気付く人もいた。


〈あれ、今日はソロじゃないんだ〉

〈ガタイが良いヤツいるな〉

〈相方? コイツの武器は大剣か〉

〈どう見ても前衛でしょ〉

〈レンも前衛だよな。前衛×2構成?〉

〈最強ポーターはオールラウンダーだから〉

〈そそ。万能型に隙はない〉


 配信がバズり、この時点で蓮には多くのファンがついていた。


「──そんでコレが」


「ん? おいレン。これって配信始まってない?」


「えっ? あっ!」


 ドローンに背を向け、準備をしていた蓮が慌ててカメラに手を振る。彼の隣に立つ颯も今日は仮面で顔を隠している。


「みなさん、こんばんは。ダンジョン攻略者になったレンです」


〈ばんちゃ!〉

〈こんばんわー〉

〈配信待ってたよぉ!〉

〈今日も無双見せてくれるんだよな?〉

〈期待してるぜぇぇ〉

〈ところで隣の戦士はだれ?〉


「今日はこのハヤテと一緒に、新宿のダンジョンを攻略していきます!」


「ハヤテです。よろしく」


〈よろしくねぇ!〉

〈レンの相方なら普通じゃないはず〉

〈期待大〉

〈wktk〉

〈君もレンみたいに強いの?〉


「あ、いや。俺は一般人です。一応ちょっとダンジョン配信オタク入ってて……。だから今日はレンに、配信が盛り上がるモンスターの倒し方を教えようかと」


〈おぉ、そりゃいい!〉

〈レン君、凄いんだけど地味だもんね〉

〈たしかにwwww〉

〈せっかく強いならもっと派手に倒してよ〉

〈ハヤテ氏、レンを一流配信者にしたげて〉

〈一般人なら無理はしないでね〉

〈戦闘はレンに任せとけ〉


「りょーかいっす。微力ながら頑張ります!」


「一応、俺もハヤテに強いモンスターを倒すコツとか教えていくんで。そっちでも色々参考にしてもらえると嬉しいです」


〈やばいな。拡散しないと〉

〈深淵1層を踏破するレンの講義だって!〉

〈録画必須だぁぁ〉

〈分析班、待機してる!?〉

〈東大の分析チームです。準備完了〉

〈ダン管の分析室主任技師だよぉ。見てるね〉

〈ファッ!!?〉

〈ヤバい人が出てきた!〉

〈え、だれ?〉

〈ダンジョン管理局の分析室しらねーの!?〉

〈国の機関の凄い部署の凄い人ってこと!〉


 ダンジョン産アイテムの鑑定やモンスターの生態調査など、ダンジョンという存在の様々なことを分析し、攻略者の生存率を高めるために色んな情報を公開をしていくダンジョン管理局の分析室。そこの主任技師はこうして攻略者の配信に出没しては、有益な情報を確保していく。


 彼女に目を付けられるというのは、その活躍を日本と言う国家が期待しているといわれるようなもの。ダンジョン攻略者にとって大変名誉なことであった。


「レン、思ったより大事(おおごと)になってる」


「いいじゃん。盛り上がってるってことだろ?」


 蓮をバズらせてやると意気込んでダンジョンに来た颯だが、配信する側になるのは初めてである。ちなみに先日、蓮や北条(ほうじょう) (すい)たちとB級ダンジョンを踏破した時は、ダンジョン攻略者育成の一環と言うことで配信の義務が免除されていた。


「とりあえず行こーぜ」 


「お、おう」


 蓮と颯が夜間のダンジョン攻略を開始した。




 およそ10分後──


「せいっっ!!」


 颯が大剣を高速で振り下ろし、グレイウルフという狼型のモンスターを真っ二つにしていた。


「いいね。モンスターに急接近する時の《《縮地》》が完璧に近い形になってきた」


「あざーす」


 身の丈ほどある大剣を軽々と振り回し、A級ダンジョンの敵を屠っていく颯にコメント欄は騒然となっている。


〈コイツ、一般人のはずでは?〉

〈縮地ってあれだろ、忍者の技〉

〈身体を沈み込ませながらの急加速〉

〈これ受ける側からしたら怖いだろ〉

〈一瞬で接近してくるんだもんな〉

〈なんでそれ口頭で聞いただけで使える?〉

〈忘れてたけど、新宿だからA級だよな〉

〈A級のモンスターを大剣で両断?〉

〈全然一般人じゃねーだろ!!〉

〈一般人を逸脱しとるww〉

〈逸般人だ、逸般人!!〉


「逸般人って……」


 チラッとコメント欄を見た颯は、コメント欄での言われように苦笑した。このことを蓮に伝えようとした時、遠くに控えていた一体のグレイウルフが逃げようとするのが見えた。


「あ、レン。群れのボスが逃げるぞ」


「了解。俺がやる。さっき教わった感じで──」


 レンがクナイを右手に持った。

 地面に手を軽く付き、加速体勢に入る。



「真・無影一閃」



 蓮がダンジョンの地面を蹴った。彼は一切の衝撃を発生させずに急加速が可能だが、この時はわざと大きく地面を陥没させている。


 次の瞬間、レンの姿がかき消えた。


 あまりの初速にドローンの高性能カメラですら捉えきれず、ブレた黒い残像として映し出されたのだ。


 逃走するグレイウルフのボスは野生の勘で、背後に迫る死神の気配を感じ取っていた。四肢をバネのように使い、風を切り裂いて疾走する。その速度は並の攻略者では到底追いつけない領域だ。


 しかし蓮は並みの攻略者ではない。


 影すら置き去りにするような速度で、グレイウルフのボスを追い詰める。


 ボスを追い越しざま。すれ違いの刹那、逆手に持ったクナイが暗闇の中で鋭い閃光を描いた。


 レンはそのまま数メートル先まで駆け抜け、これまたわざと派手に土煙を上げて急停止した。クナイを構え残心を示し、ゆっくりと立ち上がる。


 己が切り刻まれていることに気づかず、数歩ほど走り続けたグレイウルフのボスだったが、やがてその巨体がグラリと傾いた。遅れて全身に斬り跡が現れ、パシュッという乾いた音を立てて鮮血が噴き出した。そしてすぐ光となって消えていく。


 それは配信画面で見れば、あまりに完璧な一閃。


〈か、かっけぇぇぇぇぇえええ!!〉

〈SUGEEEEEEEE!!!〉

〈やばぁぁぁあ!〉

〈速すぎて見えんかった〉

〈でも前とは全然違うな!〉

〈踏み込みの一歩目すっご〉

〈ズドンって感じのスタートだった〉

〈んで加速してから全く見えんの〉

〈無影一閃って言ってたよな〉

〈マジで影が追い付かんレベルだった〉

〈倒した後も凄かったな!〉

〈残心っての? 所作が美しい〉

〈うん。それを撮るドローンの動きも完璧〉

〈あの画角ヤバいよな。ゾクゾクしたもん〉

〈少しして敵が倒れるとかアニメかよ〉

〈あれ今年のETGP(討伐技術大賞)に選ばれるぞ〉


 技術としては無音で、衝撃波すら出さずに敵を倒すことの方が何倍も困難である。


 しかし蓮が颯から教わった通りに動いた結果、漆黒のキマイラという危険度S級のモンスターを倒した時以上にコメント欄は盛り上がっていた。

 

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