第13話
富嶽学園、入学式当日。
今日から俺の新しい生活が始まる。
住み慣れたボロ家を後にし、俺は必要最低限の荷物をまとめたリュックを背負って、富嶽学園の正門前に立っていた。
「……デカいな」
そこには巨大な学園都市が広がっている。
校舎はまるで、大企業が所有するビルのような外観。それがいくつも立ち並ぶ。校舎だけでなく、生徒や学園関係者が格安で食材や生活必需品を購入できるスーパーマーケットなども複数整備されているようだ。
【生徒手帳、もしくは当学園の関係者証をかざしてください】
正門に設置された最新のセキュリティゲート。事前に送付されてきた生徒手帳を機械にかざすと、何故かゲートが開かず赤く光った。
俺の元に警備員が近づいてくる。
「おはようございます。これ、なんですかね?」
「セキュリティゲートが未申請の武器を検出した。少し荷物を見せて」
「はい」
思い当たることがあった俺は、素直にリュックを開ける。
「これは……。おい、もしかして最近SNSで話題のアレか?」
「えぇ。アレです」
専用の袋に入れたクナイ。俺がこれでキマイラを倒した件がSNSなどでバズり、D級ダンジョンでクナイを入手しようとする攻略者が大量発生していた。
「ここはダンジョン攻略者という超人を育成する機関だから、登録済みなら武器の持ち込みも可能だ。しかし君は新入生だよな。どこでそれを手に入れたんだ」
「はい。俺は特別指定でポーターやってたので、この武器は登録済みです」
「なに? そうなのか……。でもシステムが未登録として反応している。あ、もしかして君、追加で推薦枠をもらった子だったりする?」
「はい。風魔 蓮と言います」
「そうか。君のことは聞いてる。止めちゃって悪かったね」
「いえ、大丈夫です」
武器の持ち込み、持ち出しなどもこうやって管理されてるってことが知れたのは良かった。情報は忍びの武器のひとつだからな。
そんなことを思いつつ、俺はゲートを通って学園の敷地に入った。
俺の配属は特進Sクラス。
学園の地図はもう頭に入れていた。
迷うことなく、真っすぐ自分の教室に向かう。
教室の扉を開けると、そこには既に10人ほどの生徒が集まっていた。
気になったのは教室の隅。
そこには昨夜の尾行者さんが座っていた。
短髪に、ゆったりとした学園指定のブレザー。少し猫背気味に座っているその姿は、どこからどう見ても線の細い少年に見える。
だが俺の目は騙せない。
(微弱に放たれる忍び特有の気、体格、視線の癖……。間違いないな)
彼女は俺と目が合った瞬間、あからさまに肩をビクつかせた。しかしすぐに視線を窓の外へ向け、平静を装っている。
へぇ。男装してるんだ。
もしかして俺にバレないって思ってる?
それはそれで面白い。
幸運なことに、俺の席は彼女の隣だった。
「──っ!?」
俺が椅子に手をかけると、尾行者さんは驚いた表情を見せた。
「驚かせた? ごめんな。俺の席ここみたいなんだ」
「あ、あぁ。そうっすか」
作られた中性的な男性寄りの声。
昨夜の可愛らしい悲鳴とは大違いだ。
「俺は風魔 蓮。よろしく」
「……沙霧、奏多っす」
「沙霧君ね。さっそくだけど連絡先交換しない?」
「なな、なんでっすか?」
「えっ。ダメ? 特進Sクラスは生徒の人数が少ないみたいだし、みんなと仲良くしておきたいなって」
本来の俺は女の子に自ら連絡先を聞きに行くことが出来るような性格ではない。しかしこの尾行者さんは男装している。だから行ける。仲良くなって、どこの流派の忍びなのか聞いてみたい。
「今日は、スマホ忘れてきたっす。だからまた今度」
「おけ。りょーかい!」
ほっとした様子を見せる奏多。
「ところで沙霧君はこの辺に住んでるの?」
「いや。ここからは遠い所っす」
「そっか。やっぱり俺の見間違いか。実は昨日さ、沙霧君に似た人を見かけて」
「え、えっ!?」
明らかに動揺してる。
ちょっと面白い。
俺を隠れて尾行してて、そのまま話そうともせず逃げちゃったんだから、少しくらいはこーゆーことしてもいいよね?
それから少しすると、ひとりの女性が教室に入ってきた。
「11名、全員いるな。私はこの特進Sクラス担任の不知火だ」
教室内が一瞬で静まり返る。
不知火先生が鋭い眼光で教室内を見渡した。
「各々の自己紹介なども含め、最初の授業は地下演習場で行う。荷物をまとめ、5分以内に移動を開始するように」
それだけ言って教室を出ていってしまった。
必要なことだけ伝えて有無を言わせない感じ、もしかしたら不知火先生も忍びだったりするんじゃないかな。




