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孤独な姫君たちの蜜の駆け引き  作者: 和泉葉也
第三章 婚約レースの開幕

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待ち受ける夜の訪れ(4)

「……んっ、も、もう、妖精の女王は、終わりに…! だから、ぁっ…! も、もう、離して…。離してよ、叔父上……」

「ーーー妖精女王でなくなったら、ただの花嫁でしかないな。咥え込んだまま果てるのを、ただ待ち続けるとしよう」


 繋がったまま腕を掴まれ、逃げ出そうにも身動き一つ取れない。まだほんの先端を当てがっただけのオーカスは涼しい顔で姪を見つめ、荒い息を漏らし続けるのはエリヴァルだけだった。


「うっ、ぁ、んっ…! こ…、こんな、格好にしなくても、キスは、このままキスは、だ、ダメだったら…」

「……花飾りの花嫁になるには、まだ早かったようだな」


 横から唇を吸われ、少しづつ奥へと入ってきた。クチュクチュと卑猥な音と花々が揺れ動く音がして、自分が淫らな花嫁になっていくのを感じた。


「……んっ、ぁ、はぁ…。き、キスは、舌が触れると、身体が突かれて、あぁぁっ! んんっ、ダメだったら……。そんなに、……したら、ボクは、耐えられなくてーーー」


 何度目かの精を送り込まれ、身体が撥ねて心地よい感触に身悶えした。

 蜜色の髪が漆黒の髪と絡み合い、大きく汗の滴を流しながら互いの呼吸を感じ取っていく。


「……も、もう。これ以上されたら、されたら……。だ、ダメだって、ダメ。って、止めてって、言ったのに、いっ、…んっーー! あうっ、んっ……! い、イヤ、やだ……っ!」

「……っ、そっちの方が、こちらを離さなくなってきたが…」

「だ、だって。止まらなく、なってきちゃったから、……叔父上。何だか、怖く、なってきて、身体が震えて、熱くなって…」


 婚礼の香水に酔わされ、倒錯状態になったエリヴァルは、肩を震わせて快楽を抑えた。

 優しく抱いて溢れ出た涙を拭うと、オーカスはテーブルの瓶を開けて果実酒をゆっくりと飲ませていく。



「ーーー落ち着いたか?」

「う、うん。もう、平気、だと思う」

 何度か果実酒を飲み直し、砂糖菓子を口にすると身体の震えはようやく治った。

 秘芯の奥にはまだ違和感が残っていて、指先で触れると痙攣しているかのようだった。


「でも、意外だった…。叔父上が、ボクの事が本当に好きだとは思ってなかったから、こんなに愛されるとも…」

「好きでも無かったら、レースのような茶番に参加するものか。炊事場や兵舎の間では、予想の賭け事がまだ行われているのだぞ…。よりにもよって、私が本命らしいし」

「知ってる…。最新情報では、ニオブも対抗候補者に上がっているらしいよ。王室の人数が減って、話題に飢えているから、噂話が流れるのは速いね」


 映し絵を刷ったものまで、城下では売られているらしく、情報を規制しようにも広がっていくばかりだった。


「叔父上は、母上の…。陛下の影を追っているのではと、少し思ってたんだ。昔は好きだった時期も有ったって、聞いているし」

「ーー姉上を慕っていた時も、確かにあった。だが、あの方はいつも遠い先を見据えているようなお方だ。不出来な女王と揶揄される事もあるが、誰よりも国と統治を優先される。

 それに、お前はランベル殿下に似ているから、姉上の面影は僅かでしかない。怒った時はそっくりだがな…。純朴なお前を好かなかったら、戦になど手を出さなかった」


 いくつもの傷を重ねた叔父の身体を撫で、一番大きく痕が残る脇腹を舌でなぞった。

 カスティア王女に囚われていた時、武勲を上げて救ってくれたのが叔父上。身体を張って守ってくれたのは、姉上。

 それから、助けられた後の心を支えてくれたのがリリスティンだった。


「……ごめん。嫌な事を思い出させた。ちょっと、心配になっただけなんだ。無理をさせて、こんな同居話に巻き込んだんじゃないか。本当は、叔父上のお仕事を優先して貰うべきだと、不安になってしまったんだ」

 答えの代わりに砂糖菓子を入れられ、戯れのように互いの口の中で溶かしていく。

 乾いた喉に甘みが広がり、発熱した頭が冴えてきた。


「そうして花の中に埋もれていると、蜜色の髪が映えるな…」

「叔父上は、花の蜜を吸う黒い蝶々みたいだね」


 再び花の中で談笑と口づけを繰り返していくと、安堵の眠気が襲ってきた。

 オーカスの温かな肌と、花々の香りに包まれるように瞳が閉じられ。花飾りのベッドは箱舟の様に遠のいでいく。


 やがて、目を開いた際には花びらは残さず消えていき、いつもの夜着と普段通りの寝台。

 魔法でもかかったかのように残り香まで無くなり、窓からは暖かい日差しが差し込んでいた。

 残るのは、秘芯の圧迫感と昨晩の痕跡。腕や身体も綺麗に洗われていて、もう湯に浸かる必要も無かった。


 まどろみの中大きく伸びをしてから起き出し、三回目のベルを小さく鳴らしてモーニングティーを受け取る。

 テーブルに置かれたチョコレート色の焼き菓子は切り揃えられ、一人分だけ先に食べ終えられていた。そっと手を伸ばし、朝のドレスの支度に追われる衣装係に詫びながら口に運ぶと、消えていったはずの花の香りと鮮やかな蜜の甘さが口一杯に広がった。


 蠱惑的な味わいに秘芯の奥が揺れ、頭に昨晩の出来事が去来する。

 少し濃めのルージュとパウダーを指定し、何だか大人になったような気分のエリヴァルは、衣装係に礼をして午前の公務に向かった。

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