第29話 凋落の始まり②
「……別に大丈夫だよ。あ。Dランクのドロップアイテムがあれば少し高めに買い取れるけど、どうする?」
「え? 本当ですか! じゃあ、お願いしてもいいですか?」
三人組の女性探索者はそう言ってドロップアイテムをいくつか取り出す。
やっぱりDランクレベルの探索者だったみたいだ。
ということは彼女たちはカモじゃなくてお客さんということになるな。
Dランクの優秀そうな探索者はスカウトするように言われているのだ。
ドロップアイテムも結構な量になる。
査定してみると、武器の値段とドロップアイテムの買取額で相殺してしまった。
この量をEランクの武器で倒したということは相当な実力だな。
「じゃあ、名前とできれば身分証も見せてもらっていいかな?」
「え? どうしてですか?」
「うちも会社だからね。誰に何をどれだけ売ったかちゃんと帳簿をつけないと上から怒られるんだよ」
「なるほど!」
それは嘘だ。
初回は割安で販売しているので、二回目以降がわかるように名簿を作っているのだ。
まあ、Dランクダンジョンに潜るパーティは相当稼げるから二回目以降の値段でも特に文句も言わず買っていってくれるんだが。
Dランクの武器でDランクダンジョンに潜ってドロップアイテムを手に入れて売りに来てくれるので、こっちの持ち出す額の方が多いというのもあるかもしれない。
(南志保さんに、矢内京子さんに有村朱莉さんか。リストには載ってないな)
一人は大学生で二人は高校生みたいだ。
しかも、K大生とS女子の生徒ってことは頭も相当いいらしい。
三人から学生証を受け取って顧客リストと照合してみるが、リスト内に名前はない。
パーティメンバーと一緒にダブルチェックをしたから、間違いはないだろう。
「じゃあ、この中から選んでほしい」
「「「はい!」」」
三人は武器を手に取って振るう。
一人が剣士。一人が盗賊。一人が僧侶かな?
なかなか筋の良さそうな動きをしている。
下手したら三人とも水戸よりもレベルが高そうだ。
これは彼女たちも同僚になりそうだな。
……それにしても、あの二人、どこかで見たことがあるような気がするな。
そう思って矢内さんと有村さんの方を見ていると、二人は南さんの後ろに隠れるように移動してしまった。
おっと、おっさんが女子高生に不躾な視線を送ったら悪いな。
水戸は会釈をして視線を外す。
「これにします」
「私はこれで」
「私はこれを」
「お買い上げありがとうございました」
「では、私たちはこれで」
三人は武器を買い取るとさっさとダンジョンから脱出していった。
「なかなか強そうな三人組だったな」
「三人でDランクダンジョンに挑んでるんだ。相当強いだろう」
「そう言われればそうか」
フルパーティが五人のところを三人でダンジョン探索をしているのだ。
相当な実力だと思う。
「おい。ちゃんと名簿はしまっておけよな」
「あれ? ちゃんとしまったはずなんだけどな?」
パーティメンバーに言われて水戸が自分のカバンの方を見ると、カバンの脇に名簿が落ちていた。
ちゃんとしまったつもりだったが、どうやら、うまくしまえていなかったようだ。
水戸は今度こそちゃんと名簿をカバンの中にしまい、パーティメンバーの下へと戻る。
「さて、いい暇つぶしになったな」
「あぁ。そろそろ交代の時間だな。水戸は何するつもりなんだ?」
「ポータブルDVDプレイヤーを持ってきたから、映画でも見ようかと思ってる」
「あー! いいな! それ! 俺にも見せてくれよ」
「男どうしでイヤホンの共有とか嫌だよ」
「そう言わずにさ」
俺たちはその後も、ダンジョン内で時間を過ごした。
***
――――――――――
ダンジョンが攻略されました。
ダンジョンを脱出してください。
一定時間ダンジョンから脱出されなかった場合は強制排出いたします。
残り五分
――――――――――
「は?」
数回の休憩の後、水戸が見張りをしていると、目の前に突然メッセージウィンドウが出現した。
隣を見ると、もう一人の見張り役も驚いた顔をしている。
同じウィンドウが出ているみたいだ。
「おいおい! どういうことだよ!」
「何があった!」
「何かあったらすぐ呼べよ!」
テントの中から残り三人のパーティメンバーも次々出てくる。
「いや、俺たちも何が何やら」
「誰もここを通ってないはずだ」
「何!」
水戸たちはここ数十分見張り役をしているが、探索者は通っていない。
何人か探索者はきたが、全員追い返している。
相方もそう言っているから、多分間違いない。
まさか、二人とも見落としたなんてことはないはずだ。
「くそ。今はいい。とりあえず、テントを片付けるの手伝え!」
「あ、あぁ!」
水戸たちは急いでテントを片付ける。
突入場所は狭い路地だったから、テントを広げたまま脱出すればテントが壊れてしまう。
五分しかないのだ。
とりあえず今は解体だけして、袋にしまったりは脱出した後にする必要があるだろう。
保護期間のうちに人のいないところに行かないと。
水戸たちは急いで脱出の準備をして、なんとか五分以内に無事脱出することができた。
しかし、このダンジョン攻略の失敗は上層部から叱責されることになった。
ほんと災難だ。
だが、これで終わりではなかった。
この日以降、金竜会が確保していたダンジョンが何者かによって攻略されるという事件が続いたのだ。
しかも水戸たちのパーティだけでなく関東圏の全てのパーティがだ。
その上、ダンジョン最奥部にいる時間が短くなったせいか、武器を買いにくる探索者もいなくなった。
「一体何が起きてるんだ?」
「わからん」
水戸たちは今日も強制排出された場所で呆然と立ち尽くしていた。




