第30話 まずは情報収集から
「あ、サグルさん」
「サグルっち! お疲れ」
「二人ともお疲れ」
俺はダンジョンから脱出して朱莉と京子と合流していた。
いつも一緒にダンジョンに潜っているから、二人がダンジョンから出てきた俺を出迎えてくれるというのはなんとも新鮮だ。
別に寂しいなんて思ってない。
……本当だぞ?
「南さんもありがとうございます」
「いいのいいの。これくらい。雅のためだもん」
南さんは雅の顧客の一人で、雅とは大学の同期らしい。
パーティが高校生二人だと怪しまれるかもしれないので、南さんに三人目のメンバーとして入ってもらった。
それに、今回接触した探索者はどうもこの前俺たちが話をした探索者のパーティだったっぽいので、南さんに入ってもらって助かった。
直接俺たちと話したメンバーはテントの中で休んでいたし、朱莉たちはいつもとメイクや服装を変えて雰囲気が変わっているが、会話をしたらバレていたかもしれない。
「そっちはうまくいった?」
「バッチリです!」
俺はそう言ってカメラを取り出して見せる。
そのカメラには金竜会の顧客リストが映されていた。
今回、南さんたちに顧客のふりをして接触してもらったのはこのリストを手に入れるためだった。
俺が隠密を使えば探索者たちには気づかれずに近づくことはできるだろうが、顧客リストがどこにあるかはわからないからな。
顧客リストがあることは南さんと雅が掲示板経由で確認済みだった。
二人とも掲示板のヘビーユーザーらしい。
特に雅は掲示板では有名人だそうだ。
残念ながら掲示板のURLは教えてもらえなかったので、二人がどんな感じで掲示板を利用しているのかはわからなかったが。
まあ、匿名でやり取りしているはっちゃけた自分を知られるのが嫌だという気持ちはわからなくもない。
俺もSNSの裏垢とか京子や朱莉に知られるのは嫌だし。
元々俺は掲示板とかよくわからないし、情報収集は雅にお任せしよう。
「でも、こんな作戦。うまく行くんでしょうか?」
「まあ、雅がなんとかうまくやってくれるでしょ」
俺たちは、金竜会への反撃のため、いろいろな方法を考えた。
まず初めに考えたのは普通に警察に届け出るということだ。
だが、この場合、金竜会にしらばっくれられるという可能性がある。
証拠の映像はあるが、その映像は金竜会の社章をつけた男たちが雅の工房を荒らす映像だ。
バッヂをつけているだけでは金竜会との関係を証明するには少し不十分だ。
こんなことに使うメンバーなんて、正式な社員じゃなくて、外から雇ってきたごろつきだろうしな。
というか、朱莉の時にお世話になった警察の人に相談はしてみたのだ。
だが、映っているのは元竜也の部下で、指名手配がかかっているチンピラだったらしい。
金竜会にも問い合わせたそうだが、うちとは関係がないと返ってきたそうだ。
社章のバッヂだって、似たようなものを作ることは簡単だし、金竜会に罪をなすりつけるためにやったに違いないと言われればそれ以上追及することはできなかった。
今の状況的に、金竜会が犯人に間違いないと言っても、こちらも証拠がないのだ。
そこで考え出したのが今回の作戦だ。
まず、初めに、金竜会の顧客リストを手に入れる。
そして、その顧客に接触し、雅がその探索者がDランクに上がるまでDランクの武器を作ることを交換条件として金竜会がボス部屋前を占拠しているダンジョンを探してもらう。
そして、見つけたダンジョンを俺が攻略してしまうという作戦だ。
隠密を使えばボス部屋前を張っている探索者たちに気づかれずにボス部屋まで行けることは今回確認できた。
雅の顧客が一気に増えてしまうことになるが、Dランクに上がるまでと制限をつけることで、作業量的にも不可能ではない。
途中で相手にやってることがバレるかもしれないが、俺たちも雅も作戦中はホテルを転々とする予定なので、当分金竜会に見つかることはないだろう。
それに、向こうがしらばっくれてくるんだから、こっちだって知らぬ存ぜぬで通してやればいいのだ。
証拠だって残ってないんだから。
向こうがやってることはかなり黒寄りのグレーだ。
妨害されたからといってあまり表立って動くこともできないはずだ。
動いたとしても、会社を挙げてという大掛かりなことにはならないだろう。
どこの会社もCランクダンジョン以上に潜れる上級冒険者は数が少なく、両手で数えられる程度しかいない。
この程度では動かないだろうとのことだ。
上級冒険者が動かなければ俺たちで十分対処できる。
俺や京子のジョブは相当強力だし、雅の魔導装備技師もかなりの強ジョブだ。
Cランクに届いていない探索者では相手にならない。
最悪、上級冒険者が動けば雅の実家の方に匿ってもらうつもりでいる。
俺や京子や朱莉も生産職メインにする必要があるそうだが、まあ、それも面白いんじゃないかと思っている。
俺、ゲームでは生産職メインで活動してる方が多かったし。
それに、何かしないと雅が暴発しそうだった。
相当キレていたから直接乗り込むと言い出さなかっただけよしとしよう。
「じゃあ、このリストの人たちは私たちが探しておくから、サグルさんはとりあえず、今のダンジョンを攻略してもらっていい?」
「いいのか? とりあえず、仲間を先に探した方がいいと思うんだが」
「大丈夫大丈夫。どの辺のダンジョンに潜っているかわかれば私たち三人だけでも探索者を探すのは簡単だから」
顧客リストには探索者の名前のほかに接触したダンジョンの場所、探索者の強さなんかも書かれていた。
しかも、そのパーティがどの程度の強さで、Eランクの何階層を潜っていそうかも記載されている。
流石大きい企業と言うべきか、顧客管理がしっかりしている。
探索者は予想よりも多く、全員探すのは大変そうだが、ここまでの情報があればこの顧客リストに書かれている探索者を探すことは不可能ではないだろう。
この探索者のダンジョン武器という収入源を潰すことも目的の一つだから、取りこぼしはなくしたいし。
協力してくれることになった探索者が別の被害者の捜索にも加わってくれるだろうしな。
「じゃあ、とりあえず攻略してくるよ。そっちはよろしく」
「了解」
俺たちはそれぞれに動き出した。




