第23話 ミ、ミヤビが立ったー!①
「クックック。この日をずっと待っていたよ」
「いや、昨日もダンジョンに潜ったじゃないか」
「まあ、そうなんだけどね。気分の問題だよ。気分の!」
「そ、そうか」
翌日、ダンジョンに潜った直後から雅のテンションはかなり高かった。
見習い魔導装備技師のジョブについて初めてのダンジョンになるが、そこまでテンションを上げることだろうか?
「まあ、見ているといいよ。きっとサグルも楽しめる」
「ん? どういう意味だ?」
「いいから進もう」
「あぁ。わかった」
雅はニヤリと笑いながらそんなことを言う。
なんか含みのある感じだな。
何かあるのか?
魔導装備技師はそんなにロマンのあるジョブなのだろうか?
名前からではなんとも判断できない。
「じゃあ、出発するね!」
俺たちは朱莉の先導でダンジョンの探索を始める。
朱莉は手早くトラップを解除し、俺たちを導いてくれる。
ランクがⅩになり、朱莉の能力はかなり上がったように思う。
トラップの解除速度もかなり上がったし、Dランクの戦闘も京子の支援があれば一人でなんとかなるレベルになっている。
俺も、忍者のランクがⅤまで来ており、京子の聖女はランクⅦにまでなっていた。
今までならこれくらいまでくれば次のランクに進んでいたんだが。
「でも、Cランクダンジョンにはいけないんだよな」
「そうだね。Cランクダンジョンに入るのは『覚醒』しないと危険だって話だ」
雅に聞いた話だと、Cランク探索者以上の探索者は上級探索者と呼ばれ、俺たちDランク以下を潜る探索者と明確に区別されているそうだ。
なんでも、『覚醒』する必要があるそうだ。
覚醒へと至れる探索者はほんの一握りで、どうすれば覚醒へと至れるのかは雅も知らなかった。
だが、どうも覚醒へと至るための訓練場所があるらしい。
その場所には旧家や大きい企業の紹介がないといけないそうだ。
雅も前にDランク探索者となった時、実家の方に申請はしてみているそうだが、申請は通らなかった。
今はまだ雅の魔導装備技師が見習いだが、見習いが取れたらまた申請してみるつもりだそうだが、また難しいかもしれないとのことだ。
訓練所には紹介が必要で、雅の本家としても信頼のおける探索者しか送れないみたいだからな。
まあ、歴史ある家っていうのは結構そういうものだよな。
能力より人柄重視というか。
社会人をしていればなんとなくわかるんだが。
能力も人柄も普通な新卒Aと能力は二倍人柄は最悪な新人Bがいたら間違いなく新人Aをとる。
もし十人の企業だったとして、Bの人柄が悪いせいで既存の十人のパフォーマンスが10%でも下がってしまえばBの能力によるプラスなんて軽く吹き飛んでしまうからな。
正直、人柄最悪な社員が入ってきた時は10%どころじゃなくパフォーマンスが下がることもあるし。
しかもそういうやつは引っ掻き回すだけ引っ掻き回してやめていく。
俺の同期にもいたんだよな。
というか、小さい会社だったから、同期は彼と俺の二人だけだった。
院卒の佐藤くん。起業するって言ってたけど、今も元気にやってるんだろうか?
いや、今はそんなことどうでもいいか。
「できれば早くCランクダンジョンに行きたいんだけどな」
雅の足はDランクの解呪ポーションでは解けなかった。
だがら、この呪いを解くためにはCランクで上級の解呪ポーションを探さないといけない。
「まあ、気長にやるさ」
「でも、足が動かないのは不便だろ?」
「クックック……」
「??」
「フハハハハ。ハーッハッハッハ!! 甘い、甘いよ! サグルくん! 僕がいつまでもそんな場所で止まっているわけないじゃないか!」
「え? それってどういう?」
「みんな止まって! モンスターがこっちにきてる!」
その時、朱莉が警戒の声を飛ばす。
俺の索敵にも敵の影が映った。
どうやら、真っ直ぐこっちに向かってきているみたいだ。
……もしかしてあのモンスター、雅の笑い声を聞きつけてこっちに向かってきたんじゃ?
無駄に三段笑いなんてするから。
まあ、俺もいつかやってみたいことではあるけど。
三段笑いって、オタクが死ぬまでにやってみたいことベスト10には入るよな。
比較的やりやすいやつだし。
「ちょ、ちょうどよかった! 僕の新しい力をお披露目したいと思っていたんだ」
「新しい力?」
俺がジト目で雅の方を見ると、雅は少し顔を赤くして誤魔化すようにそう言う。
どうやら、雅もやらかしたとは思っているようだ。
だが、俺は新しい力という方が気になった。
「なんだよ新しい力って」
「話すより見てもらった方が早いだろう。サジタリウス! バトルモード!」
『イエス。マイマスター』
「きゃ!」「まぶし!」「な、なんだ!」
次の瞬間、雅が急に発光し出す。
何が起こるのかと雅に注目していた俺たちはその光をまともに見てしまった。
目を手で覆って何度か瞬きをしていると、光は次第に収まっていく。
若干目の前がチカチカしているし、目を閉じても雅の形の影みたいなの見えるが、戦闘に支障は無いだろう
光が収まった後には、雅が立っていた。
そう、雅が立っていたのだ。
「「「ミ、ミヤビ(さん)が立ったーー!」」」
「お! 三人ともなかなかいい反応だね」
そして、俺たち三人の絶叫がダンジョン内をこだました。




