第22話 京平の計画は狂い始める
「まずい。これはまずいぞ」
大沼京平は金竜会のメンバーとして東京周辺の関東支部を任されていた。
最近出世して、この辺りのエリアマネージャーになったのだ。
そして、京平が東京に赴任してまず最初にやったことは生産職の探索者の確保だった。
生産職の探索者はDランクダンジョンに潜るために必要不可欠だ。
だが、そこまで儲からないので、数がたくさんはいない。
そこを押さえれば、東京周辺のエリアを簡単に支配できると思ったのだ。
金竜会は七曜会の中では力が弱い方で、基盤とする土地も持っていない。
最近大きめの半グレ組織が潰れて低ランクの支配が緩い関東は狙い目だと思ったのだ。
まず、低ランクを牛耳ってしまえば、そこから次第に上のランクに触手を伸ばしていけばいい。
低ランクの探索者はいずれ成長して高ランクの探索者になっていく。
だから、五年十年かけていけば良い感じに関東一帯が支配できる計画だった。
その頃には京平も四十代になっている。
関東地区の統括か、もしかしたら金竜会の役員になれているかもしれない。
年功序列の色濃く残る金竜会ではどんなに優秀でも若すぎればポストは用意されないからな。
かといって、生まれがいいわけではない京平は役員の椅子を取るためにこうやって若いうちから長期計画を立てて動く必要がある。
そのために、上級探索者でありながら京平はダンジョンにあまり潜らない管理職の道を選んだのだから。
京平の呪術師というジョブがCランクダンジョンではあまり役に立たず、こういった管理向きだったというのもあるが。
「くそ。ここまではうまくいってたのに!」
京平の計画は大当たりした。
生産職は収入が不安定なため、大企業である金竜会が声をかければ二つ返事で参加してくれた。
そして、最近関東の金竜会非所属の生産職がミヤビ一人を残す段階となったので、計画を第二段階、第三段階に進めていた。
第二段階では、将来有望そうな探索者を金竜会へと入れてボス部屋前で見張りを行なわせた。
低ランクダンジョンでの一番の儲けはダンジョンボスを倒すことだ。
だから、ダンジョンボスを攻略されないように金竜会のメンバーでブロックし、金竜会のメンバーで攻略するようにすれば、いずれ低ランク探索者は困り出す。
困った探索者の中から有望そうでこっちの命令を聞きそうなやつだけを金竜会のメンバーにしていけば、金竜会の勢力は増していく。
厄介そうなやつはFランク以下に閉じ込めておけばいい。
そうすればいずれいなくなるはずだ。
ボス部屋前を見張っている理由は、ダンジョンを長時間保持するためとか言っておけばいいだろう。
ボス部屋を守る探索者も、ランクアップ現象を使えば赤字にはならない予定だった。
そして、第三段階で、困り出したFランク探索者、Eランク探索者にDランクの武器を売ることにした。
高ランクの武器を使えば、モンスターを簡単に倒せるようになり、収入が一気に上がる。
武器は大量に抱え込んだせいで暇している生産職に作らせる予定だった。
だが、これにも罠がある。
高ランクの武器を利用すると、ステータスが歪になってしまい、武器のランクを下げるとスキルが上手く発動できなくなってしまうのだ。
そのため、最初はサービス価格で売って、次第に値段を釣り上げていく予定だ。
「でも、生産職を全員確保できないんじゃ意味がない!」
武器は低ランク探索者によく売れるようになってきたが、はっきり言って、生産職も低ランク探索者も大量に雇い入れたので、まだまだ赤字だ。
生産職に払う賃金や、原料となるドロップアイテムの買取なども考えると、相場の十倍である一本五十万くらいで売れないと利益が出ない。
生産職の探索者の仕事が思いのほか少なかったし、ランクアップ現象直後はDランクのダンジョンとはいえ、報酬は最低限になってしまう。
一番儲けの大きくなるDランクダンジョンへのランクアップ現象はなかなか引き当てられないし。
だが、低ランク探索者への武器売却が軌道に乗れば十分回収できるはずだった。
しかし、一人でも生産職が関東に残っていれば話は変わってくる。
こちらが相場の十倍で売っているものをその生産職が相場の五倍で売れば客は間違いなくそちらに流れる。
それに、生産職と探索者の個人的な繋がりを創らないようにするためと武器の回転率を上げるために武器のメンテナンスは行わない方針だが、はっきり言ってメンテナンスも行ったほうが安上がりに済む。
値段の差はさらに開いてしまうだろう。
それに、あのミヤビという探索者とは京平が東京のエリアマネージャーになる前、大阪で上級探索者をしていたころにも因縁があった。
向こうは気づいていないようだが。
ミヤビがパーティを組んで、Cランクに行くようになれば、京平のしたことに気づいてしまう可能性がある。
「……今のうちになんとかするしかない」
ミヤビは強がってDランクに潜っていると言っていたが、生産職をパーティに入れてDランクダンジョンなんかに潜れるはずがない。
生産職をパーティに入れるということは、おそらく、パーティメンバーはまだFランクパーティだろう。
それくらいの探索者なら、その探索者がEランクに上がる頃にミヤビも黒鍛冶師になり、一緒にEランク、Dランクと上がっていけるはずだ。
だから、今ならどうとでもできるはずだ。
ちょうど、最近そういう方面に明るい探索者を大量に雇い入れたところだしな。
京平はある探索者に連絡をする。
「おい。お前ら。ちょっと襲撃してほしいところがある。 え? 何言ってるんだよ! 今まで散々やってきたことだろ! 俺たちの後ろ盾が無くなってもいいのか? よし。場所は……」
京平はミヤビの工房の場所を彼らに伝えた。




