第21話 セールスはお断り!③
「しかし、そんな大きな企業から声がかかるなんて、やっぱり雅はすごい生産職なんだな」
「うーん。そういうわけでもないんだよね」
金竜会は関東周辺を牛耳りたいらしく、関東一帯の生産職を全員勧誘しているそうだ。
雅の知り合いの生産職は全員すでに金竜会の所属になってしまっているらしい。
結構条件もいいらしく、今までのつながりも切る必要がないとのことで、生産職の探索者からは結構好評だった。
ただ、最近かなりキツいノルマが課せられるようになってきたり、金竜会と関係の悪い探索者との繋がりを切るように迫ってきたりとかなり横暴になってきている。
だが、一度契約を交わしてしまうと簡単に契約を切ることができないそうで、結構困っている生産職探索者はいるらしい。
雅は、探索者としてもやっていきたいと思っており、ずっと勧誘を断っていた。
そんな雅のところにもあの男は毎週のようにやってきて勧誘していっているそうだ。
「まあ、これでもうくることはないだろう。Dランクの探索者パーティを雇うのはかなり大変だからね」
「そうなのか?」
「あぁ。探索者は縛られるのが嫌いな人が多いからね。基本的に、ワンランク上の探索者パーティの報酬を出すのが相場だ。Dランクの僕たちを雇おうと思うとCランクパーティの報酬。年俸一億とか出さないといけない」
「「「一億!」」」
「四人組パーティだと四億か。流石に四億も準備できていないだろう」
「「「四億!」」」
「驚くほどの額でもないだろ? 僕たちはDランクの上位パーティになるはずだから、年間一億くらいなら稼げそうだし」
年俸一億と言われて俺たち三人は本気で驚いた。
年俸一億といえば、海外に行くような超一流のスポーツ選手並みの稼ぎだ。
だが、よく考えてみると、そこまで驚くほどの額でもないように思える。
雅と一緒にダンジョンに潜った昨日は一日で五十万をちょっと超えたくらい稼げてしまった。
五十万×三百六十五日で一億八千万以上になるのだ。
まあ、平日はたいして探索もしないし、休日だって今日みたいにしっかり潜らない日もあるから実際に一億を超えることはないと思うが。
「でも、そんなに報酬を出して大丈夫なのか? 企業側は赤字になるんじゃないか?」
「Dランクパーティも一年も潜り続けていれば途中でCランクダンジョンに潜れるようになったりするからね。Cランクダンジョンに潜れるようになれば稼ぎは一億を超えてくるから問題ないみたいだよ?」
確かに、ランクアップすれば稼ぎは増えて年俸より利益の方が大きくなる。
基本的に、ダンジョンに潜り続けていればどんどん強くなっていくので、年俸より稼ぎの方が大きくなるそうだ。
「でも、報酬とか誤魔化すやつが出てきそうだけどな。お金の振込先は会社の口座に設定しておけば誤魔化せないだろうけど、ドロップアイテムとかは抱えておけるだろ?」
報酬の振込先は自由に設定できるので、設定を会社の口座にしておけばダンジョンで得られた報酬が自動的に会社の口座に振り込まれ、中抜きしたりすることはできない。
だが、ドロップアイテムは各自のアプリに入れられる。
売却してしまえばそれは口座のほうに振り込まれてしまうが、売るまでは各自のアプリの中に保管できてしまうのだ。
アプリの中にしまっておけば嵩張らないし、ずっとしまっておいて、会社を辞めた後に売り払えば一財産築けるはずだ。
Eランク以上はドロップアイテムの売却益の方が大きいそうだし、会社側がかなり損することになるんじゃないだろうか?
それに、契約だけ結んでおいて一度もダンジョンに潜らなければ探索者側は丸儲けだ。
最近話題になってる働かないおじさんとかと一緒だな。
給料だけもらっておいて仕事はしないというやつ。
探索者ってなんかアウトローな人が多そうだし、そんなことをする探索者もいそうだ。
いくら潜っても自分の儲けに直結しないならなおのことだ。
いや、ダンジョン探索自体が面白いから、なんだかんだ言ってダンジョンには潜るか?
「企業には契約術師や呪術師みたいな探索者もいるからね。そういうヤンチャはできないように契約を結ばされるんだ」
「へー」
契約術師や呪術師は社員が契約を破ると罰を与えたりできるらしい。
そんなわけで、一度契約を交わしてしまうとルールを破ることはできなくなってしまうし、簡単にやめることができなくなってしまうそうだ。
「まあ、僕たちには関係のないことだよ。それに、僕は探索者が出てくる前からある旧家である大槌家の出身だからね。そう簡単に企業に雇われるわけにもいかない」
「そういえば、雅さんって大槌っていう名字でしたね。珍しい名字だと思っていたんですが、やっぱり歴史のある家だったんですね」
京子の言うように、大槌っていう名字は俺も珍しいなと思っていた。
どうやら、かなり歴史のある家みたいだ。
「あぁ。本家は東京都に離島を持っているほどの大きい家らしい。とは言っても、僕の家は末端で、ギリギリ大槌の名字を名乗ることが許されるレベルらしいけどね。本家にも行ったことがないし」
「へー。色々あるんだな」
「そんなことより! 明日はどこでダンジョンに潜る?」
雅に取っては旧家や企業よりも、明日のダンジョンの方が興味があるみたいだ。
まあ、自分にはあんまり関係のないことだからな。
俺も、企業の話より明日のダンジョンのことの方が気になるし。
「そうだな……」
俺たちは明日の話し合いをして、その日は解散した。




