第16話 サジタリウス! 起動!③
「さて、どうするか」
「うーん。どうしよっか?」
「どうしましょうか」
「これは困ったね」
俺たちは一階層と二階層を繋ぐ階段のところまで来て頭を悩ませていた。
そう、階段なのである。
エレベーターなんて近代的なものはダンジョンの中にはない。
つまり、車椅子の雅が降りるのはかなり難しいということだ。
手すりがあればなんとか降りられるそうだが、ここの階段は手すりもついていない。
壁だって結構ツルツル滑るので、かなり危険だ。
今までどうしていたのか聞いてみると、今までは別にレベリングのためであってダンジョン踏破のためにダンジョンに潜っていたわけじゃないので、Eランクダンジョンの一階層で狩りを続けていたらしい。
だが、今日はダンジョンの踏破を目指すつもりだ。
階段を降りて下の階層に進んでいく必要がある。
「そういえば、その車椅子。武器ってことはダンジョンGo!にしまうことができるのか?」
「ん? あぁ。問題なくしまえるよ。ほら」
雅は立ち上がり、車椅子をダンジョンGo!にしまう。
あれだけ大きいものが消えてしまうのはなんとも不思議だ。
「じゃあ、雅の本体は俺がおんぶして運ぶよ」
「「「えぇ!」」」
俺は雅に背を向けて座る。
すると、三人から驚きの声が上がった。
いや、そんなに驚くようなことか?
「雅を運ぶなら俺が一番適任だろ。朱莉はトラップを探してもらわないといけないし、京子はそこまでフィジカルが高くない」
「確かにそうだけど」
「……」
「??」
階段にはモンスターが現れない。
だが、安全かというとそうとも言い切れない。
Dランクダンジョンからは階段にトラップがある場合があるからだ。
朱莉にはトラップを探して解除をしてもらわないといけない。
京子では雅を運ぶのはかなり大変だろう。
「……わかった。サグルにお願いするよ」
そう言って、雅は俺におぶさってくる。
「!!」
「? 重かったかい?」
「いや、大丈夫だ。あげるぞ」
「?? あぁ、頼む」
おぶさったことで雅の二つの柔らかいものが俺に押し当てられる。
雅はいつも白衣を着ているし、服装もパンツルックで男っぽいけど、ちゃんと女の子なんだった。
服越しに感じる感触がそれを如実に表している。
それに、雅があまりそういった部分を意識していないせいか、完全に体重を預けてきてるし。
「「……」」
「はっ!」
朱莉と京子が俺のことを冷たい目で見てくる。
二人とも、こうなることが予測できていたなら止めてほしかった。
いや、なんか含むところがあるなとは思ったけど。
俺は嫌な汗が止められなかった。
「ふむ。思ったより安定しているんだね。誰かにおんぶされるというのも結構いいね。またしてもらおうかな」
(勘弁してください)
俺は次はお姫様抱っこで運ぼうと心に決めて無心で階段を降りた。
しかし、二階層以降もおんぶで下ろすことになってしまった。
なんでだ?
***
――――――――――
無念の大醜犬(D)を倒しました。
経験値を獲得しました。
無念のダンジョン(D)が攻略されました。
報酬:78690円獲得しました。
――――――――――
「いやはや。話には聞いていたが、一日でDランクダンジョンが攻略できてしまうとは」
ダンジョンを攻略すると雅は遠い目でそんなことを呟く。
「信じてなかったのか?」
「信じてはいたさ。だが、信じていたのと実際体験するのは違うだろ?」
「なんとなく言いたいことはわかります。私も初めてサグルさんと一緒に潜った時はかなり驚きましたから」
「私ははじめっからサグルっちのパーティだったからわかんないや」
俺としては普通のことなんだが、どうやら、そうでもないらしい。
『十全十美』の称号でマップが最初から全部開示されていることについてもかなり驚かれたし。
まさか、十個のダンジョンを連続踏破するなんていう簡単な方法でマップが見られるようになるとは思わなかったそうだ。
Fランクダンジョンは攻略競争になっているから、十個連続で攻略するのは難しいが、Dランク探索者がEランクダンジョンを十個脱出せずに攻略することならそこまで難しいことじゃない。
もしかしたら、企業型の探索者組織なら知っているのかもしれないが、少なくとも、雅は知らなかったそうだ。
「でも、やっぱり武器は重要だな」
「そうですね。かなり楽でした」
今日は雅に作ってもらった武器で探索をした。
戦闘時間は元々長くなかったので、探索にかかった時間はそこまで変わっていない。
いや、前回五十五時間くらいだったのが五十時間になったから、かなり短縮できているか?
まあ、そんなことよりもいちいち武器を途中で作ったりせずに済むのは本当に助かる。
わざわざジョブを変えて武器を作るのはかなり手間だったからな。
「さて。今日はこれで探索終了でいいかな?」
「もう一つ潜る時間はないだろ。今日は十分稼げたし」
今日は土曜日だ。
午前中から潜り始めたとはいえ、外は昼を過ぎている。
ここからもう一つ潜ると、ダンジョンを攻略した頃には十時くらいになる。
俺と京子は一緒に暮らしているし、朱莉は今美香さんが入院中で一人暮らしだから、門限をうるさく言う人はいない。
雅も大学入学のため上京してきたそうで一人暮らしらしく、遅くなっても大丈夫だそうだ。
だが、夜遅くならないに越したことはないだろう。
別にお金に困っているわけでもないんだし。
「じゃあ、脱出しようか」
「そうだな」
俺たちはダンジョンを脱出し、帰路についた。




