第9話 「な、なんだって〜!」って反応してあげればよかった③
「レベリング?」
「あぁ。生産職は生産で経験値が入るんだが、戦闘によるレベル上げと比べるとかなり効率が落ちてしまうんだよ。だから、こうやって探索者にレベリングをお願いしているんだ」
「へー」
確かに、見習い鍛冶師や見習い防具職人で武器や防具を作ると経験値が入るらしく、レベルアップしたことはあるが、どちらもまだランクⅠだ。
生産で入る経験値は戦闘に比べて入る経験値がかなり低いのだろう。
折を見て見習い鍛冶師のレベリングをしようと思っていたが、そのタイミングもなかったし。
しかし、一緒に潜るなら京子と朱莉にも相談しないといけないな。
多分大丈夫だと思うが、もしかしたらダメというかもしれない。
俺が思いもよらない理由があるかもしれないからな。
中村さんはあがり症だから、新人の田中くんと仲良くなるまでは一緒に仕事できなかった。
筋肉ムッキムキでめちゃくちゃ強そうに見えるのに、意外とメンタル脆かったんだよな。
怖い人が来るようになってからはたまに休むようになったし。
……あれ? 俺が入社した直後に中村さんが休みがちだったのって俺の顔を恐れてたからなんじゃ?
考えても悲しくなるだけなので、考えないようにしよう。
「Dランクダンジョンに挑戦しているならすでに五人パーティを組んでいるだろうから、僕が入るために一人抜けてもらうことになると思う。そうすればDランクダンジョンには潜れなくて、Eランクダンジョンでのレベル上げになると思うけど、なんとかお願いできないかな? あ、ずっとというわけじゃない。一ヶ月だけでいいんだ。お願いできないだろうか? 当然、その探索で得たドロップアイテムや報酬は君たちパーティに返却する」
俺が考えているのを見て、雅は説得の言葉を色々と並べてくる。
しまった。
くだらないことを考えているうちに雅にいらない気遣いをさせてしまったようだ。
「パーティメンバーに確認してからじゃないと返事はできかねるけど、多分大丈夫だと思うぞ?」
「本当かい!」
「あぁ。俺たちのパーティは三人しかいないから、パーティメンバを外す必要もないし。雅の防御力次第だけど、Dランクダンジョンでレベリングしてもいい」
「……三人?」
雅の表情が一瞬で険しくなる。
俺は何か地雷を踏んでしまったんだろうか?
「三人でDランクダンジョンに潜るのは危険だよ? Eランクまではソロでもなんとかなるって人もいるけど、Dランクをソロで潜れるのなんて一握りの天才だけだ。Dランクダンジョンに進出する前にパーティメンバーを増やすことをお勧めするよ」
「あぁ。俺たちはちょっと特殊でな。Dランクダンジョンのクリアくらいなら問題なくできるんだ」
「特殊? どういう意味だい?」
「うーん。そうだな。雅は信頼できそうだし、自分のことなら言っても大丈夫か」
俺は自分がユニーク称号を持っていること。
セカンドジョブがあり、二人分のジョブを持っていることを話した。
ついでに、称号で得た忍者というジョブについており、レベルがなかなか上がらないので、今のEランクでは不足なんじゃないかと思っているとも話す。
「なるほどね。確かに、ユニーク称号保持者はセカンドジョブがあって二人分の仕事ができるから、パーティメンバーはフルメンバーじゃなくても大丈夫ってことか。それにその忍者というジョブ。聞いたことのないジョブだけど、称号によって手に入れたジョブなら相当強いはずだ。Dランクダンジョンなら平気ということも十分考えられる」
「だろ?」
「でも、僕としてはちゃんとフルメンバーで探索することを勧めるよ。パーティメンバーがいれば対処できることは多いからね」
そう言って、雅は自分の右足を俺に見せてくる。
引き締まった美しい足だ。
いや、違うか。
俺は視線を雅の顔の方に戻す。
雅は悲しそうな顔で自分の右足を見ている。
「僕は高校の頃、盗賊系のジョブでソロでダンジョンに潜ってたんだ。実家が古くからダンジョンと関わりのある家だったこともあって、順調にレベリングにも成功していた。当時は神童なんて呼ばれていてね。Dランクダンジョンまではソロで行けていたんだ」
「へー。すごいな」
どうやら、雅は最初から生産職ってわけではなく、昔は普通に探索者をしていたそうだ。
しかも、ソロでDランクダンジョンに潜るなんて相当な手だれなんじゃないだろうか?
「でもね、ある日、一つのトラップにかかってしまったんだ」
「トラップ?」
「あぁ。そのトラップは矢が飛んでくるという簡単なトラップだった。だが、そのトラップはどうしてか僕の索敵にも引っ掛からなかった。おそらく、特異事例と呼ばれるものだったんだろう。ダンジョンは工業製品じゃないからね。たまに魔素の溜まり具合によってDランクダンジョンでもCランクダンジョン級のモンスターや罠が生まれたりするんだ」
「へー。そうなのか」
それは知らなかった。
俺たちも気をつけないと。
「そして、その罠によって放たれた矢は呪いがかかっていて、そのせいで僕の右足は動かなくなってしまったんだよ」
そう言って、雅は自分の右足をゆっくりと撫でた。




