第8話 「な、なんだって〜!」って反応してあげればよかった②
「一人で盛り上がってしまってすまない。まさか、本当にただの親切で声をかけてきただけとは」
「こっちこそ。全然知らなくてごめん」
「いや、いいんだよ。掲示板を見れていないなら仕方ない。掲示板にはリアルで探索者と接触してURLを教えてもらわないと行くことができないからね」
あのあと、雅が復活するまでは結構な時間がかかった。
どうやら、彼女の黒歴史を一つ作り上げてしまったみたいだ。
雅は探索者界隈では結構有名な人らしい。
そのため、友人経由で尋ねてくる人も結構いるのだとか。
だから、俺もその一人だと思ったようだ。
それで趣味も同じだし、あの少し恥ずかしいポーズを決めてしまった。
もし、俺が彼女を尋ねてきたなら「な、なんだって〜!」って返してあげられたのに。
いや、彼女を尋ねてきたんじゃなくても、ちゃんとリアクションを返してあげればよかったよ。
てっきり有名なアニメキャラの名前でも出てくるもんだと思ってたから、全然聞いたことのない名前が出てきて普通に返事をしてしまった。
陽キャだったらきっとこういう時も気の利いた返しができるのだろう。
コミュ障で申し訳ない。
「……」
「……」
今でも雅の顔は若干赤い。
この話題はさっさとかえてしまった方がいいな。
「そ、それより、どうして俺のことが探索者だってわかったんだ?」
「ん? それは簡単だよ。僕と会った時、サグルのスマホはダンジョンGo!のアプリを開いていただろ? それで気づいたんだよ」
俺と初めて会った時、俺は地図アプリの代わりにダンジョンGo!を開いていた。
雅はそれを見ていたらしい。
「なるほど……ん? あれ? パーティメンバー以外からはアプリの画面って見えなくなってるんじゃないのか?」
「あぁ。見えないけど、代わりに見える動画にはパターンがあるし、探索者同士だとなんとなくアプリを開いているとわかるんだよ」
「へー。そうなのか」
確かに、パーティを組んでいない時に京子たちがアプリを開いていて謎の動画が流れていても、アプリを開いている時はなんとなくわかる。
あんな謎の動画を京子たちが見ないだろうと思っているからなのかと思っていたが、探索者だからだったのか。
「物知りだな。さすが生産職先輩」
「ま、まあね。これくらい序の口だよ」
雅の顔が赤くなる。
しまった!
その話題から逸らそうと思っていたのに戻ってきてしまった。
だって、生産職先輩だぞ?
なんかインパクト強くて。
「と、ところで、君たちは生産職を探しているのかい?」
「え? あぁ。さっきの電話の話か?」
「すまないね。盗み聞きするような形になってしまって。てっきり聞かせているものだとばかり思っていたから」
「いや、別にいいよ。そんな大したことは話していないし」
さっきの京子との電話が雅にも聞こえていたのだろう。
部屋の隅に行っていて、声量も抑えていたとはいえ、元々聞こえないつもりで会話していたから内容が聞こえてしまっても仕方ない。
雅は自分に話を振るためのジャブだと思っていたので、バッチリ電話の内容を聞いていたらしい。
俺たちは電話の中で生産職の人を探す件についても話していたからな。
むしろ、そこで生産職を探しているという話題が出たから、自分に会いにきた客だと確信したようだ。
本当に申し訳ないことをした。
「サグルは信用できそうだし、条件次第ではサグルたちの武器は僕が作ってもいいよ?」
「え? あぁ! そうか、生産職先輩だから、雅は生産職なのか!」
いや、色々あって忘れていたが、雅は生産職先輩と呼ばれているらしい。
そのあだ名で生産職以外ってことはないだろう。
「そうだよ。鍛冶師も防具職人も錬金術師も一次職まで上げてるから、君たちの武器は僕一人でも作ることができる」
「錬金術師?」
「あぁ。アクセサリやポーションなんかを作るジョブだよ。鍛冶師か防具職人を一次職に上げると出てくるんだ。僕は両親が生産職でね。錬金術師が一番仕事が来るからあげておいた方がいいと言われて、レベルをカンストさせたんだ」
「へー。そうなのか」
アクセサリを作るジョブもありそうだとは思っていたが、錬金術師か。
確かに、なんか色々と作れそうなジョブではあるな。
錬金術師系のゲームでアクセサリとかを作ってるゲームはあったし。
まあ、あのゲームではアクセサリどころか家まで錬金術で作ってたけど。
探索者の錬金術師も例に漏れず色々なものが作れるジョブだそうだ。
錬金術師は発生条件が大変な分、強力なジョブで、その分レベリングもしにくく、一般職にまであげ、さらにカンストさせている人は少ないそうだ。
錬金術師をカンストさせてるだけで生産職として食いっぱぐれることはないというくらい稼ぎやすいのだとか。
そういうわけで、雅は少し回り道にはなるが、鍛冶師や防具職人より先に錬金術師のジョブをカンストさせたそうだ。
(しかし、雅が生産職ってことはまさに渡りに船だな)
思わぬところで生産職を見つけるという目的を達成してしまった。
全部一人にお願いできるのであればその方がいいだろう。
俺はコミュ障だから色んな人と会話するの慣れてないし。
「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「まあ待ってくれ。条件次第でと言っただろ?」
「あぁ。そうだったな。いくらくらい必要なんだ?」
「値段もそうだが、お金以外の条件があるんだ」
てっきり値段的なことだと思ったが、この感じではそういうわけではないようだ。
雅が言いにくそうにしているということは結構な無理難題なのかもしれない。
結構言いたいことを言ってくる感じの雅が言いにくそうにしているなんて、いったいどんな無理難題が出てくるんだ?
「僕のDランクダンジョン探索に付き合ってほしいんだ」
雅は少し不安そうな上目遣いでそんなことを言ってきた。
僕っ子の上目遣いはかなり驚異的だった。
俺じゃなきゃ二つ返事でOKしてたね。




