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15 出会い



 同じクラスのエン様に挨拶をしてから、自分の席に着いた。そんな私を取り囲むクラスメイトは4人。ゲームでは取り巻きとなっていたが、1週目では仲の良いクラスメイトとして過ごした4人だ。

 ゲームでは影の立ち絵でしかなかった4人にも、もちろん姿かたちはある。


「今日もお美しいミデン様、絵になるようなお2人が並ぶと、今日一日がとても良い日になりますわ。」

 最初に声をかけてきたのは、桃色の髪と瞳を持つエアンヌ。ピンクブロンドの髪などは、小説などで見かけるヒロインの特徴だが、彼女は悪役令嬢の取り巻きだ。可愛らしい顔をしているので、彼女がヒロインでもいいと思うのだが、少しばかり気が強いためか悪役令嬢の取り巻きをしている。


 ちなみに、ヒロインの髪色は赤だ。


「エアンヌ様のおっしゃる通りですわね。できることなら、席替えをしていただきお2人の席が隣同士になれば・・・などと夢見てしまうのです。」

 にこにこと笑みを絶やさない青髪のセリア。その表情が崩れることはほとんどなく、兄並みに表情が読めないと秘かに思っている。

 それにしても、朝からよいしょがひどい。ちょっとエン様に挨拶をしただけでこの言われようなのだ。隣の席などご遠慮願う。


「でも、ミデン様とお話しできなくなってしまうのは嫌ですね。だって、ペンプトン様とミデン様の会話をお邪魔することはできませんし。」

「隣の席になったとしても、ずっと隣の人と話す人なんていないでしょう?もしエン様が隣になったとしても、遠巻きになんてしないでね。寂しいから。」

 私の言葉で嬉しそうにしながらも、また不安そうに「でも」と言い始めたのは、メルパーラ。オレンジの髪という明るい髪色なのだが、性格は反対で何でもマイナスに考えてしまうネガティブな性格だ。


「ミデン様が望むのならば、私達はいつだってミデン様のそばにいます。」

 最後に白い髪のアイモア。おとなしい性格であまり積極に話すほうではないが、別に暗い性格ではない。


 ゲーム開始から1週間。攻略対象者たちとクラスや学年が違うヒロインは、この一週間で兄以外の出会いのイベントを終えるのだが、ここで一つ問題が起きた。


 それは、デュオがいないこと。デュオは目を覚まさず、今も意識不明のままだ。流石にここまで来れば、デュオをゲームに参加させるのは不可能なことに思われて、私の中でデュオの名前は消される。


 それで、なぜデュオがいないと問題なのかという話だが、それは出会いのイベントの一人目がデュオだからだ。

 流れは、ヒロインであるトゥリアは入学初日にハンカチを拾って、そのハンカチの所有者を探すことにした。何人かに話を聞こうとするのだが、なかなか気後れして話しかけられないトゥリアは、何かを探している様子の人を探すことにした。


 そこで、不自然に辺りを見回すデュオと出会う。


「あの、すみません。このハンカチってあなたのですか?」

「ハンカチ?いや、違うが。」

「あ、そうですか。すみません・・・何か探している様子だったので、その、これを探しているのかと思って。」

「あー・・・そのハンカチ、見せてみろよ。」

「え、はい?」

「刺繍がしてあるな・・・あぁ、これはあいつのだ。」

「誰のものかわかったんですか!すごい!あの、どなたなのか教えていただいてもいいですか?」

「別にいいけど・・・うーん、ちょっとここで待ってくれるか?」

「はい、わかりました?」

 もしかして、その人を連れてきてくれるのかな?

 そう思ったが、戻ってきた彼は一人だった。


「待たせたな。」

「いえ。」

「ハンカチの持ち主を呼び出したから、図書室に渡しに行ってもらっていいか?わけあって、俺はついてはいけないから、悪いな。」

「そんなことは!わざわざありがとうございました。えーと・・・私はトゥリア・F・エナトンです。」

「・・・デュオ・F・ペンプトンだ。お前も光魔法の使い手か。」

「はい!・・・ん?ペンプトンって・・・え。」

 ペンプトンはこの王国の名前だ。その名前を名乗るということは相手は王族!?


「た、大変失礼いたしました!その、ペンプトン様!」

「いや・・・その、ペンプトンは2人いるから、デュオでいい。それに、国の名前に様を付けるのも違和感があって言いづらいだろ?」

「はい!実は少しいいにくかったです。デュオ様はお優しいですね、ありがとうございます。では、私はハンカチを返してくるので、失礼します。」

「あぁ。」


 これが、デュオとの出会いイベント。そう、デュオがいなければハンカチの持ち主・・・つまりエン様にたどりつけないのだ。

 別に、乙女ゲームではないのだから、トゥリアが攻略対象者たちと出会っても出会わなくてもどうでもいいのだが、あまりにもゲームから逸脱すると知識が役に立たなくなるだろう。どうしたものか。


 そんなことを考えていると、エン様が私の聞きなれた声の人と話をしているのに気づいた。兄だと思って視線を向ければ、教室の外で2人が話をしているのが見える。

 私に気づいた兄はこちらに笑いかけた後、エン様と別れてこちらに手招きしてきた。


「呼ばれているようなので、少し席を外します。」

「まぁ、あれはエクス様!いってらっしゃいませ、ミデン様。」

 4人に笑顔で見送られて、私は教室の外へと出た。廊下は静かで、どこかへと向かうエン様の足音が響いている。


「お兄様、何かあったのですか?」

「エン様なら、落とし物を取りに行かれた。ミデン、一つ聞きたいのだけど、エン様には毎年刺繍したハンカチを贈っていたよね?」

「はい。先生が婚約者に刺繍したものを贈ると上達が早くなると言っていましたし、エン様も拒まなかったので・・・それが何か?」

「いや・・・それならいいよ。」

「?」

「・・・エン様のハンカチの刺繍が、ずいぶんと個性的だったものだから。」

「え、そんなことはないはずですが・・・」

 ここでいう個性的は、へたくそという意味ではない。変わっているだ。

 刺繍を始めたころ、1週目と違って上手にできた私は、初心者としておかしいと思って、花のツルを多めにやったり、色遣いを変えたりして、上手であることを隠そうとした。でも、それは最初の数年で今は普通に上手な刺繍を施している。

 毎年1枚はハンカチに刺繍をして贈っているので、持ち歩くハンカチは最新のものか古くても2、3年前のものだろう。その頃には普通の刺繍を施していたので、個性的な刺繍ではないはずだ。


「まぁ、たまたまだろうね。たまたまであって欲しい。」

「それは、私もそう思います。いつまでも小さい頃の刺繍が入ったものを持ち歩かれては、私の刺繍の腕が疑われてしまいますからね。」

 婚約者がいる場合、女性が刺繍したハンカチを贈り、男性がそれを持ち歩くのは普通のことだ。なので、もしもそのハンカチの刺繍が個性的なのなら、エン様の婚約者である私の刺繍の腕は個性的な腕前ということになってしまう。


 恥ずかしいのでやめて欲しい、本当に。


 エン様がなぜ昔のハンカチを持っているのかはわからないが、エン様のハンカチが話題に出たということは、エン様が向かった先にはトゥリアがいるのだろう。


 おそらく、何かを探していた兄に、トゥリアが声をかけて・・・といったところだろう。

 デュオの場合は、ゲームではエン様との仲が良くなかったため、テッセラにエン様への呼び出しをお願いしているが、兄や1週目のデュオはエン様との仲が良好なため、自分でエン様を呼びに来たということだ。


 ゲームなら、デュオ、エン様、テッセラ、ミデンと出会いのイベントが続く。今回は兄、エン様で終わるだろう。1週目では、デュオ、エン様で終わっていた。その後に、私がトゥリアに近づいて、テッセラも紹介したのだが、今回その気はない。


 そろそろあのイベントだ。三大イベントの一つ「交友会」が間近に迫っていた。




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