エピローグ
「立花さん見てよ。縄跳びできないでしょって挑発したらできるとか言い出して、やり始めたらやっぱりできなくてさ。やりすぎてへばってんの」
なんとなく歩いていたいつもの道端で、里桜は如月透に偶然会った。
今日になる前、里桜は一度おじいの神社に行った。
あの神社にはクウコやレノ、ルーファスという妖怪がいるから。
本当はまだ見えるんではないかと少しの希望を胸に抱きながら行ったのだ。
でも皆の姿はなかった。ただ単に自分が『見えない』だけで、声すらも聞こえなかった。あの大きなクウコの声さえ。
祐介に、皆はまだここにいるのかと聞いたら、皆は里桜の周りにいると言った。その時、心が刻み込まれるような痛みを感じた。
自分の事を見ている皆の事を、自分は姿さえ見れない。それが酷く、心苦しかった。
だから里桜はその一度しか行かなかったのだ。どうせ行っても見えることができなければ喋ることなんてできない。
皆のことを見えない自分がいれば、皆も、傷ついてしまうんではないかと思ったから。
祐介と向き合って話をしていた里桜は、自分の後ろ髪が揺れたような気がした。
風も通っていないのにどうしてだろうと思い、考え、ふとずっと前の記憶が蘇った。
若葉と森の中に入り、井戸の所であった出来事の事を。
前触れもなくいきなり風が吹いた井戸の近く。その原因はルカだった。ネコミミを追い払っていておきた風だったのだ。
その時は見えていなかった。
だから、風だけを感じて。
ーー今もそうだとしたら。
里桜は考えついた。これはルーファスか、クウコの仕業だろうと。レノは絶対にこういうことはしないから。どちらかの二人が近くで風がおきるような事をしているのだと。
そこでまた、ズキっとしたものを感じたのだ。
……祐介の話によると、ルカとレオはどこかへ行ったらしい。
如月は下を見ながら、少し笑んでいる。天邪鬼がうるせぇとか何とか言っているのだろう。
里桜はやっと意識を現実へと戻す。
「赤鬼必死すぎなんだよ」
ーーその姿は私には見えない。
「立花さん? どうしたの?」
里桜は首を横に振り、「何でもないよ」と笑みを浮かべた。
(立花さん……?)
誰にでも分かるような嘘の笑み。意外にも鋭い如月がこの違和感を逃すはずがない。
ーー四月になり、リオは中学二年生となる。
満開の桜を見上げ、リオはずっと昔の出来事のような事を思い出す。
妖怪が見えるようになってしまったのは九月。見えなくなってしまったのは三月中旬。約七ヶ月間、ルカたちと一緒にいたのだ。
妖怪は怖いものだと思っていたけど、そうではないものだと知った。もちろん、とても怖い妖怪はいる。
とてもあっけなかった。
皆と一緒にいた時期は。
(ーー楽しい思い出をありがとう)
リオはお礼を言った。
今は姿形見えず喋られなくとも、君たちとの出会いは無駄なんかじゃない。
そう、思いたいのだろう。
ー終ー.
これまでの登場人物
立花里桜
姫咲若葉
碓氷斗真
如月透
【兎】妖怪: ルカ
【兎】妖怪: レオ
【猫】妖怪: ネコ《ミミ》くん
【虎】妖怪: ルーファス
【虎】妖怪: レノ
【鬼】妖怪: 天邪鬼
【狐】妖怪: クウコ
【狐】妖怪: ギン
【狐】妖怪: コン
【狼】妖怪: シキ
【蛇】妖怪: ミカゲ
妖怪: サトリ
妖怪: キクリ
祐介(おじい)




