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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第3章 君と夏

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70話 周りからの見え方

人との距離感は、案外自分では分からないもの。


当たり前だと思っていた関係も、誰かの目には少し違って見えることがある。


そんなある日の放課後。


優斗は何気ない一言に、思いもよらない形で向き合うことになる。


今回は少しだけ、周囲から見た二人のお話です。


「小鳥遊君、ちょっといいかな?」


声を掛けられ、そちらへ視線を向ける。


そこに立っていたのは、ショートカットの女子生徒だった。見覚えはあるが、名前までは分からない。


「ん? いいけど、どうかした?」


「えっとね、ここの問題が分かんなくて。よかったら教えてもらえないかなって」


そう言いながら、彼女は教科書の一箇所を指差した。


「ちょっと見せてもらってもいい?」


「うん、ぜひぜひ」


教科書へ目を落とす。


どうやら数学の問題らしい。


内容を確認して、どこか見覚えがあると思った。


前に千春から教えてもらった範囲だ。


《これなら僕でも解けそうだな》


「ここの問題は、まずXで微分して、そのあとにYが──」


「ふんふん」


説明を続けていると、不意に甘い香りが鼻先をくすぐった。


シャンプーとも柔軟剤ともつかない、柔らかな香り。


何気なく視線を上げる。


すると、その子の顔が思った以上に近くまで寄ってきていた。


──ゴトッ。


その瞬間、近くで何かを落とした音が響いた。


反射的にそちらを見る。


すると、なぜか千春と目が合った。


どうやら手にしていた教科書を落としてしまったらしい。


彼女はぽかんとした様子で、その場に立ち尽くしていた。


「千春さん、平気?」


クラスメイトの一人が慌てて声を掛ける。


すると千春は、はっと我に返ったように瞬きをして。


「い、いえ。大丈夫です。お気になさらないでください」


すぐにいつもの微笑みを浮かべた。


相変わらずの聖女フェイスである。


「……」


ただ。


気のせいだろうか。


その目が妙にこちらを見ている気がする。


しかも、どこか笑っていないような。


いつもより少しだけ唇が尖って見えた。


なんとなく背筋が寒くなる。


「小鳥遊君、どうかした?」


「え?」


女子生徒の声で我に返る。


「なんか、ぼんやりしてたみたいだけど」


「そ、そうだったかな?」


誤魔化すように耳の後ろを掻いた。


すると。


「……千春さんに見とれてただけじゃね?」


隣から雅之がぼそりと呟いた。


「……マジかよ。優斗、おめぇも──」


「だっ!? ば、馬鹿違うって!!」


すかさず達哉まで乗っかってくる。


両脇から詰め寄られ、妙にいたたまれない。


特に雅之の言葉は核心を突いていて、うまく言い返せなかった。


結局、にやにやと笑う顔から目を逸らすのが精一杯だ。


一方の達哉は達哉で、対抗心を燃やしているのか目がぎらぎらしている。


なんというか、圧がすごい。


《ただでさえ変な誤解をされそうなのに、本人に聞かれてたらどうするんだよ……》


そんなことを考えていると。


「千春さんっ!? 顔真っ赤だけど平気!?」


「もしかして熱あるんじゃ!?」


「だ、大丈夫ですっ!!」


教室の反対側が少し騒がしくなっていた。


どうやら千春も千春で大変らしい。


《……まあ、あっちはあっちで忙しそうだな》


そう結論付けて、再び目の前の女子生徒へ向き直る。


「ごめん。待たせちゃった」


「……優斗君って、千春さんと付き合ってるの?」


「へっ?」


思わず目を見開く。


彼女は少し照れたように視線を逸らしながら、


「その、なんとなくなんだけど……」


と言葉を続けた。


「千春さん、優斗君といるとき雰囲気違うから。」


彼女は困ったように笑う。


「それに距離もちょっと近いし、もしかして―――みたいな?」


彼女の一言に、僕は返す言葉を失った。


そんな風に見えていたなんて、思ってもいなかったのだから。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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