61話 優しくて、素敵な人
こんばんは、浜焼き三太郎です。
今回はクラゲコーナー回。
見た目だけでは分からないことって、人にも生き物にも意外と多いものです。
優斗と千春も、そんな話をしながら少しずつ距離を縮めていきます。
ゆったりした水族館デートを楽しみながら読んでいただければ幸いです。
それでは本編をどうぞ。
浜焼き三太郎
前回までのあらすじ。
大水槽コーナーを抜け、その先の暗い通路を進む僕たち。
やがて、点々とした光が視界に浮かび上がってきて―――
***
「ここがクラゲコーナーか。圧巻だ~!!」
「ねっ! 一匹一匹が星みたいに光ってて、すっごく幻想的~!!」
目の前に広がる光景に、僕たち二人は思わず感嘆の声を上げた。
青に赤、オレンジに金色。
色とりどりのクラゲたちが、まるでドレスでもまとっているかのようにひらひらと漂っている。
「クラゲってだけで、こんなに種類がいるんだな」
ぷかぷかと浮かぶ彼らの触手や模様、形の違いをじっくり観察していく。
「ねぇ、一つ聞いてもいいかな?」
「なんでもどうぞ」
得意げな笑みを浮かべた千春が振り返った。
「クラゲって全部毒あるんだよね?」
「あの綺麗なやつも?」
そう言って、赤い傘を持つクラゲを指差す。
「あれは確か“アカクラゲ”かな? 刺されるとかなり痛いみたい」
「え~、見た目に反して怖いな」
「うん。だから海とかで見つけても触っちゃダメだよ?」
「……そうします」
僕はぶるっと体を震わせ、そっと水槽から距離を取った。
「ってことは、見た目が派手なほど毒性が強いの?」
「う~ん、そういうわけじゃないみたい」
そう言ってスマホを取り出した千春は、何かを調べ始めた。
しばらくして画面を僕に向ける。
「これとかいい例」
そこに表示されていたのは、青とオレンジの鮮やかな色をしたクラゲだった。
なんというか―――
「ホ〇ミス〇イム?」
「だよねっ。私も最初そう思った」
二人して思わず口元を押さえる。
「これはね、“ビゼンクラゲ”。
毒性はあんまりなくて、食用にも使われるんだって」
「へぇ~。じゃあ毒性持ってるのはバ〇ルス〇イムってこと?」
「ぷふっ、ド〇クエに引っ張られ過ぎっ」
千春が吹き出した。
ツボに入ったのか肩を震わせていて、腹筋が崩壊しないか少し心配になる。
「まぁ、要するに―――」
目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら千春が言う。
「見た目だけじゃ判断できないってこと」
「なるほど。綺麗な花には毒がある理論は通用しない、と」
「そゆこと」
ふ~んと、僕たちは揃って頷いた。
「なんか、人でも同じことが言える気がする」
「それは言えてるかも……」
「でしょー」
それから数歩進み、別の水槽へ目を向ける。
「千春だったり、雅之だったり。あと来栖さんもそう」
金色に輝くクラゲの傘がゆっくりと脈打った。
「実際に接してみるまで分からない。僕の周りはそんな人ばっかりだよ」
「それは優斗君も……だけどね」
「そうかな? 僕は見たまんまじゃない?」
分かってないなと言わんばかりに、千春は小さく首を横に振った。
「少なくとも私は知らなかったよ?」
そう言って、僕の隣で同じようにクラゲを見上げる。
「……優斗君がこんなに優しくて、素敵な人だってこと」
そっと距離が縮まる。
わざとなのか、それとも無意識なのか。
あと少しで肩が触れそうなところまで近づいていた。
「……お、大げさだって」
穏やかに微笑む千春から思わず目を逸らす。
その反応がおかしかったのか、彼女の笑みはさらに深まった。
《今度はこっちのペースが乱されてる気がする……》
妙な落ち着かなさを覚えながら、僕はただクラゲを見つめることしかできなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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