60話 近づく二人
こんにちは、浜焼き三太郎です。
体育祭編を経て始まった新しい日常。
今回は水族館デートの中でも、比較的静かなお話です。
けれど、派手な出来事がなくても人との距離は少しずつ変わっていくもの。
優斗と過ごす時間の中で、千春もまた少しずつ前へ進んでいます。
そんな二人のやり取りを見守っていただければ幸いです。
それでは本編をお楽しみください。
「なんとなく分かる気がする」
僕も水槽の中の魚を見上げて言った。
「自分の好きなものが言えなかったり、本当の自分を隠したり。
なかなか人って自由には生きられないんだよな」
「うそ? 優斗君は違うでしょ」
「いやいや、そうでもないって」
チッチッチッと顔の前で人差し指を振る。
「僕だって結構セーブしながら生きてるよ……おっと、その顔信じてないな?」
「そ、そういうわけじゃ。ただ驚いたっていうか」
彼女が言葉を選ぶように口をもごつかせる。
「優斗君って学校でもその、純度100%のガチオタクって感じだから……。
あれで全力じゃないんだって」
「そりゃそうでしょ。全力出してたら今頃校内、“はし恋”一色になってたし」
「……」
「ちょ、サラッと引くのやめてよ」
見ると千春の口元がわずかに引きつっていた。
「でもそれは前までの話」
「?」
不思議そうな表情の千春と目が合う。
「今の僕には千春がいてくれるし、思いっきり100%オタクで話せるからさ。
そういう意味では、かなり自由に生きられているのかも」
少し照れながらそう言う。
「だから僕は、千春が自由に生きられる手助けがしたい。
居場所になれたらなって思っているよ」
薄暗い照明が並んだ僕たちを照らしていた。
「それが今できる、せめてもの恩返しだから」
「……」
「な、なんてね~。と、とりあえず次のコーナー行ってみようよ!」
言い切った途端、恥ずかしさが一気に押し寄せてきた。
千春が黙ってしまったせいで余計にだ。
この場所が暗くて良かった。
今の表情も顔色も、絶対に彼女には見せられないから。
気まずさに耐えきれず目を逸らし、ぽりぽりと首筋を掻く。
千春
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