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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第3章 君と夏

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57話 トラウマとご褒美

いつもお読みいただきありがとうございます。


長らく続いた体育祭編も、今回でひとまず終了となります。


優斗にとっては過去のトラウマと向き合い、自分自身を少しだけ変えることができた大切な時間でした。そして千春との関係も、以前とは違う形へ少しずつ進み始めています。


一区切りを迎えたその帰り道。 達成感に浸る優斗でしたが、そんな彼を待っていたのは忘れかけていた過去の記憶と、新たな物語の始まりでした。


体育祭編のエピローグ、そして次章へのプロローグとしてお楽しみいただければ幸いです。


「じゃあな、優斗」


「うん。じゃあね、雅之」


プシューッ、と扉が開き始める。


その隙間へ滑り込むように、雅之は電車を降りていった。


電車が再び動き出し、彼の姿が夜の向こうへ消えていく。


「ふぅ……疲れた」


扉脇の仕切りに背中を預け、小さく息を吐く。


今日まで積み重なっていた疲労と、それを上回る達成感が一気に押し寄せてきた。


身体の力が抜けて、足元すら少し頼りなく感じる。


家に帰ったら、そのまま爆睡だな。


そんなことを思いながら、優斗は苦笑した。


「にしても……」


スマホを開く。


真っ先に表示されたのは、今日撮った写真だった。


「我ながら、今日は青春っぽいことしちゃったな」


雅之や来栖さん、そして千春たちと撮ったリレーメンバーの集合写真。


優斗はそれを眺めながら、静かに思い返した。


《中学のトラウマを思い出しそうで、最初は嫌だったんだけどな》


むしろ心配し過ぎて損した気分だ。


まあ、今となってはそれも良い思い出だけど。


自然と視線が写真の中の千春へ向く。


「全部、千春のおかげ……か」


そこに映るのは、眩しいほど飾らない笑顔。


あの笑顔を見ていると自然とそう思えた。


『これからも私が傍に居る』


あの言葉があったから、前を向けた。


トラウマと向き合い、克服するために走れた。


少しでも格好良いところを見せようと、練習だって必死にやり切れた。


そして何より――


《千春の応援がなかったら、あそこまで頑張れなかった》


最後のリレー。


大勢の歓声の中でも、彼女の声だけははっきりと聞こえた。


どれだけ背中を押されたのか、自分でも分からない。


雅之が言っていた。


千春は、僕にとって特別で大切な存在だと。


今回の体育祭を通して、そのことは嫌というほど実感できた。


だけど――


「そんな一言じゃ表せなくなってる気がするな」


写真の中の千春を見るだけで高鳴る鼓動。


彼女のことをもっと知りたいと思う気持ち。


一緒に居たいと願うこの感情。


今の優斗には、それを上手く言葉にできなかった。


《でも昔、同じような気持ちになったことが――》


ふと、そんな考えが脳裏をよぎる。


その瞬間。


忘れたはずの記憶の断片が、不意に意識の底から浮かび上がってきた。


「っ……!」


胸の奥が強く軋む。


同時に、頭を内側から叩き割られるような痛みが走った。


【――君は、友達って感じだから】


ノイズ混じりの少女の声。


まるで耳元で囁かれたかのように鮮明だった。


やめてくれ。


今さら思い出させるな。


それは中学時代の記憶。


二度と思い出したくなくて、ずっと胸の奥に押し込めていた傷。


淡くて。


脆くて。


純粋だった頃の記憶。


「はっ……ふぅ……」


胸を押さえ、深く息を吸う。


何度か呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いて顔を上げた。


すると、周囲の乗客たちの視線が集まっていることに気付く。


心配そうな人もいれば、怪訝そうな表情を浮かべる人もいる。


優斗がわざとらしく大きく息を吐くと、彼らは気まずそうに視線を逸らした。


《完全に不審者扱いだな……》


諦めたように息をつき、気持ちを切り替えるように窓の外へ目を向けた。


帳の下りた夜空。


その下に連なる街灯や住宅の明かり。


電車の速度に合わせて、次々と景色が流れていく。


《もう、あの頃の自分じゃない》


《僕だって変わったんだ》


そう言い聞かせるように、ブレザーのポケットからイヤホンを取り出す。


耳へ押し込むように装着し、スマホの画面へ指を伸ばした。


「再生っと」


音楽を流そうとした、その時だった。


ブブッ、と画面が震える。


「これは……!」


表示されたのは、一件のL〇NE通知。


送り主の名前を見た瞬間、思わず目を見開いた。


千春


『水族館、行きませんか?』

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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