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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第2章 君と駆ける

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53話 特別じゃないから

体育祭も無事に終わり、打ち上げの時間。


そんな中、ある男子生徒が勇気を振り絞ろうとしていました。


相手はもちろん、みんなの憧れの聖女様。


だけど本当に大切なのは、憧れることではなくて――?


今回は少しだけ、男子同士の作戦会議回です。


第二章完結まで残り3話


「ちょっと待って!」


僕は両手を突き出した。


「別に僕だって、そんなに上手く話せるわけじゃないよ?」


「いやいや、そんなことないっス!」


五十嵐君が両手をぶんぶん振りながら目を輝かせる。


「それに、あの人があんなに心を許して話してるところ、見たことないんで。」


「そうかなぁ? 見間違いじゃない?」


だって学校じゃ、僕に対しても基本は聖女モードだぞ?


「あと俺ら男子は、話しかけようとしただけで固まっちまうんで。それ以前の問題なんすけど。」


「なにそのメデューサみたいな設定。」


「まじめな話っス!」


「お、おう。」


あまりの剣幕に思わずたじろぐ。


確かに千春は超が付くほどの美少女だ。


だけど、それはさすがに言い過ぎじゃないだろうか。


「っ!!」


ぐりん、と五十嵐君の顔が勢いよくこちらへ向いた。


血走った目を見た瞬間、出かけた言葉を飲み込む。


「そ、そうなる理由って?」


「ズバリ顔! あと溢れ出る聖女様オーラがめっちゃ神々しい!!」


そう言うと五十嵐君は神に祈るように両手を組んだ。


どうやら彼らの中で千春は、もはや崇拝の対象らしい。


陰でこんなふうに拝まれているとは、さすが聖女様である。


《なんて言ったもんかな》


五十嵐君は悪いやつではないと思う。


ただ、このまま千春と話をさせたら、彼女にとって迷惑でしかないだろう。


最悪、傷つけてしまうかもしれない。


とにかく改善すべきことが一つあった。


「あのね、五十嵐君。」


「達哉でいいっス。」


「じゃあ達哉。まずは同級生なんだし、敬語は無しでいこうか。」


そう前置きしてから、


「話を聞いてて、思ったことがある。」


僕は口を開いた。


「なんだ!? 何なりと教えてくれ!」


同時に彼の指が僕の両肩へ食い込む。


少し落ち着けと宥めてから、僕は息を整えた。


***


「ごめん、結構待たせた!」


席へ戻ると、机の上にはすでにいくつか料理が並んでいた。


そのまま手にしていたグラスを雅之の前へ置く。


「サンキューな。にしても結構時間掛かったな~。」


「その、知り合いと会ったというか……。」


そう言いながら半歩横へずれる。


すると入れ替わるように、強張った表情の五十嵐君が姿を現した。


「あれ? たっちゃん、なんでここに?」


来栖さんに声を掛けられた五十嵐君は、気まずそうに口元をもごもごさせる。


「……その。俺らも打ち上げしてたっていうか。」


「え~、気付かなかった。ちなみにどこで?」


「……すぐそこ。」


彼の指差した先へ目を向ける。


すると、こちらを窺っていた穂乃花さんと目が合った。


もっとも、次の瞬間には慌てて隠れてしまったけど。


「あれ? 穂乃花もいるじゃん。なんの集まり?」


「……体育祭実行委員。」


「あ、そういうこと。」


雅之が納得したように手を叩く。


「それで……わざわざこっちまで来てどしたん?」


「っ! そ、そうだった。」


五十嵐君は誤魔化すように咳払いをした。


「あの、聖女――じゃなくて、千春さん。」


「……は、はい?」


二人の間にぎこちない空気が流れる。


五十嵐君は何度も口を開きかけては閉じた。


そして意を決したように顔を上げる。


「り、リレー……めっちゃカッコ良かったっス!」


ぴたりと場が静まった。


僕と五十嵐君以外、全員が固まっている。


「……あ、ありがとう?」


予想していなかったのだろう。


千春は珍しく敬語ではなく、素の口調で答えていた。


それを聞いた瞬間、


「っ!!」


五十嵐君が弾かれたように顔を上げる。


「そ、それだけっス!!」


そう言い残すと、


「ちょっと~! ウチにはないわけ~?」


来栖さんの抗議も聞かず、


「そ、それじゃあ失礼します!!」


勢いよく踵を返した。


「無視すんなし~~~!!」


背後から来栖さんの嘆きが飛ぶ。


振り向く寸前、五十嵐君と目が合った。


その瞬間、さっきの会話が脳裏をよぎる。


『千春さんを、一人の女の子としてちゃんと見るんだ。』


どうやら、それは守れているみたいだな。


「……?」


不思議そうにこちらを見る千春。


どうなることかと思ったけど、案外平気そうで安心した。


「いや、なんでもない。」


そう答えながら、僕はコーラを一口啜った。

「特別じゃないから」を読んでいただき、ありがとうございました!


今回は五十嵐君にスポットを当てたお話でした。


千春は周囲から聖女様のように見られていますが、本人はただの一人の女の子です。


だからこそ、「特別視しないこと」が距離を縮める一歩になるのかもしれません。


勇気を出して声を掛けた五十嵐君と、思わず素で返してしまった千春。


そんな小さな変化を書いてみました。


少しでも楽しんでいただけましたら、評価やブックマーク、いいねなどで応援していただけると励みになります!


それでは、次回もよろしくお願いいたします!


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